円環少女

- 作者: 長谷敏司,深遊
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2005/08/31
- メディア: 文庫
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前書き
なんか連続でヒロインがロリものばっかりだな・・・。べつにそういう趣味の人って訳ではない(はず)だけど、まあいい。
かなり個人的におすすめのシリーズなのだが、正直全面的におすすめも出来ないという本でもある。とにかく内容が難しい! 全然「ライト」ノベルじゃない! 意外に薄い本なのであっという間に読み終んだろとかたかくくってるとエラい事になる代表格のラノベです。
簡単な世界観の紹介
読みにくいと書きました。しかし!この本の魅力は読みにくさの原因でもあるその独自性にあります。
- 今現在我々の暮らすこの世界こそ「地獄」であり、そこに暮らす人間は「悪魔」である。
- その「地獄」に堕とされて来た他の世界の魔法使いを「刻印魔導師」と呼ぶ。
- 一般的に「刻印魔導師」は通常自分のいた世界においての犯罪者であり、刑罰として「地獄」に堕とされる。
- 「地獄」に棲む「悪魔」の特筆すべき点は、魔法を「五感を用いて観測する事で」消去出来る事である。
- 「地獄」に住み、奇跡である魔法を消去する人間は魔導師達から「悪鬼」と忌み嫌われている。
こんな感じ。
簡単なキャラクターの紹介
ヒロインのメイゼルは魔導師世界から「地獄」に堕とされた魔導師で、主人公の仁を「せんせ」(”せんせい”ではない事に注目。はいここテストに出まーす)と読んで慕うサド(嗜虐的変態)ですが、同時に小学生幼女でもあります。
正直に言ってメイゼルの台詞はいちいちたまらないドキドキ感があります。
「ちょっと泣かせるくらいで勘弁したげる」
「せんせって、かわいい。そんなに、あたしとはなれるの、我慢できないんだ」
「あたし、背の高い男の人がそうやってはいつくばるとこみるの、大スキだわ」
すいませんちょっと私の事を踏んでもらったりしてもいいでしょうか?
とにかく小学生なのにコレなので、色々と前途有望な少女です。
サドの、えー、ある種の変態でもあるメイゼルですが、指でハートマークを作って「これが大スキのサイン」と決めた挙げ句、それを主人公に向かって連発するという一面も持っており、もう色々とたまらないキャラクターです。
それと、主人公の仁は「地獄」に落とされた魔導師である「刻印魔導師」を管理/利用し、犯罪的な魔導師を刈る「鏖殺戦鬼(スローターデーモン)」と呼ばれる人間でもありますが、メイゼルの通う小学校で教鞭を振るう教師(ニセ)でもあるという。若いのに苦労人です。
・・・あーもうめんどくさい。ほんの触りの部分だけでもうこんなに文字数が!
世界観の詳細
ここまで文字数を稼いでおきながら、この「円環少女」の魅力の一つである「魔法」に関する説明がほぼ全く出ていない事にも驚き。
魔法の体系は沢山あって、円環体系、宣名体系、神音体系など、それぞれの「体系」毎に特徴があり、得意分野も異なるというもう偏執狂的な設定の細かさを誇りますという・・・設定マニアのニーズにもばっちり答えます。
こういう世界観を考え出してしまった作者はちょっと脳みそがアレだと思う。いやあ、業が深いなあ。つまりもうとにかく独自性が全開バリバリで他の追随を許さない世界観という訳です。
その魔法設定の上に、人間が「魔法を観測」しただけで勝手に「魔法消去」をしてしまう「悪魔」「悪鬼」であるって設定・・・良く考えつくな。
まあそんな事(魔法消去)やられたら魔導師がむかつくのはよく分かる。ウイザードリィで必殺のティルトウェイトをレジストした挙げ句、わらわらと増えるグレーターデーモンみたいなもんですね。(たとえがマニアック過ぎ?)ああ、あれはムカつくね。ラカニト!ラカニト!死ね!窒息しろ!うわーレジストしたよこいつ、ムカつく! みたいな? まあいいや。
それに
「魔法消去」自体も「悪鬼」が「五感」で「観測」する事で発生する・・・って、ねえ? シュレディンガーの猫の話位でしか最近は「観測」って言葉聞かないよ! うわーSFチック!
それに「悪鬼」の発動させる「魔法消去」が気合いで発動する能力とかじゃないっていうのが個人的にツボですね。「五感で観測する」とだから魔法を「見て」も「聞いて」も消去しちゃう訳です。そらもう生きているだけで自然に。しかも「悪鬼」たる一般の人間達は自分たちが魔導師の魔法を消去した事にすら気がつかないという・・・。
いやー魔導師からしたら「悪鬼」だわ。
「俺の必殺魔法が小娘にチラリと見られただけでっ!?」
「ばかなっ!?」
「おのれ悪鬼どもめ!!」
こんな感じ?
キャラクターの詳細
あと、それ以上に登場人物の個性が非常に良くかけている所も良いです。
敵/味方/その他端役に至るまで、その人となり、背景、行動に至る理念や信念までもがきっちりと書かれており、ヒロインのメイゼルはもちろん、女子高校生のきずな(個人的なストライク)、敵として登場するエレオノール・ナガン(金髪美女)。そして仁。
登場人物のそれぞれが単純な記号的な情報ではなく、人間として書かれているため、それぞれの理念に共感出来、単純に「敵だから感じ悪い」みたいな事が起こりにくいのです。
敵対してる=悪という図式が基本的に成り立たない。味方=善もしかり。エレオノール・ナガンなどは敵だからこそ魅力的に見えます。