9S

9S(ナインエス) (電撃文庫)
9S(ナインエス) (電撃文庫)山本 ヤマト

アスキー・メディアワークス 2003-09
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えっと

大好きなシリーズです。今回は記念すべきその一冊目を紹介したいと思います。
「9S」は戦いに身を投じる少年少女達の物語です。
「9S」の世界は、現代社会にあってはいけない程の異様なオーバーテクノロジーが「峰島勇次郎」という一人の天才によって作り出されてしまい、その結果として世界の軍事バランスすら崩れかけてしまっている世界です。
峰島勇次郎の作り出したオーバーテクノロジーは「遺産」と呼ばれ、その価値の高さから非常に厳重な管理を受けています。そのための組織「ADEM」と呼ばれる戦力をもった管理組織も存在します。

この話の

主人公は二人で、一人は峰島由宇
峰島勇次郎の実子で、驚異的な頭脳と観察力を誇る天才です。その並外れた頭脳によってあらゆる情報を自在に操り、その観察力や洞察力によって弾丸の弾道すら予測して回避する事を可能にしている脅威の少女です。また峰島勇次郎の「最も重要な遺産」とされる峰島由宇は、厳重にADEMに監禁されている身でもあります。状況としては地下の特殊牢獄に収監された挙げ句、レクター博士みたいに拘束着付けさせられる程厳重です。
もう一人は坂上闘真。世界を情報を握る事によって背後から支配する「真目家」の関係者で、「鳴神流」という特殊な戦闘技術を身につけてはいるものの、普段はその力を発揮する事のない少年です。彼自身が大きな謎をもった存在なのですが、その辺の解明は本編に譲ります。

一巻は、

峰島勇次郎の開発した特殊素材によって建造可能となった、閉鎖環境実験施設/バイオスフィアである海上・海中建造物「スフィアラボ」にテロリストがある目的を持って侵入する事から事件が始まります。
その「スフィアラボ」に坂上闘真はバイトとして入り込んでおり、テロ事件に巻き込まれる事になります。映画の「ダイ・ハード」みたいな導入ですね。もちろん闘真はハゲたおっさん刑事じゃありませんけども。
「スフィアラボ」はただのバイオスフィアではなく、「LAFI*1」というやはり峰島製のスーバーコンピュータをもってして運用されており、この「LAFI」の存在と、「スフィアラボ」を実現可能にした峰島製の特殊素材が、スフィアラボを難攻不落の要塞としてしまいます。この状況を打破するために峰島由宇が呼び出される事となり、結果として坂上闘真と出会い、物語は動き始めます。

また同時に

一巻は物理的、精神的に二重、三重の枷がはめられた状況の中で、由宇と闘真の苦闘を描く物語で、その閉塞感が物語に適度な緊張感を与えており、心地よいです。かれらがこの困難な状況にどのように立ち向かって行くのかが見所です。
個人的に非常におすすめシリーズですが、ある種のタイプの人にはおすすめ出来ません。
この話はよくも悪くも大量の人死にが出ましてそれを不快に感じるタイプの人です。自分がそうだと思う場合は読まない方が良いと思います。しかしそれを圧しても読むだけのイマジネーションがこの作品にはあると思いますし、登場人物もみな人間性がしっかり書き込まれ、魅力的です。

実はここの所

新刊の発売が止まっているのが気になるのですが、読んでいなければぜひ読んでみて下さい。純粋に楽しいです。
またこの一巻は非常に良くまとまっており、この一冊でストーリー的にはちゃんと解決をみます。ですので試しに一巻だけ購入して、よければ続刊の購入を検討するという流れで行けると思います。
全然関係ないですが、現在電撃文庫で「とうま」という読みの主人公が二人いるんですね。一人は「とある魔術の禁書目録」の上条当麻、もう一人がこの坂上闘真ですね。同じ名前でも全く性格の違うキャラクタですが、同時期に発売されているシリーズでこうした事が起こるのは珍しいと思います。しかも両方のシリーズとも電撃文庫ですしね。

*1:一文字ズラすと見た事のある文字列に