青の騎士ベルゼルガ物語

amazonへのリンクも敢えて私の読んだ初版のもので。

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場所はここではないどこか。アストラギウス銀河と呼ばれる宇宙世界。ここはギルガメス星域軍とバララント星域軍が熾烈な戦いを繰り広げる銀河。100年を超した闘いの狭間に生まれた僅かな停戦期間に始まる物語。
序文を引用してみよう。

死神が重苦しい音をたてて行進する。
——アーマード・トルーパー——
大戦後期に現れた”装甲騎兵”
死に損ねた者達に、
命と引き換えで平穏を与える。
硝煙弾雨のなかで育まれた
鋼鉄の悪魔。
人は奴らをこう呼んだ。
BOTOMS——「最低の野郎共」と。

ひょっとしたら

ご存知かも知れませんが、この「青の騎士ベルゼルガ物語」は昔アニメで放送された「装甲騎兵ボトムズ」のオリジナルサイドストーリーとして書かれた作品です。ただしアニメのノベライズ作品ではないため、アニメを見た事が無くても普通に楽しめる作品になっています(事実私がそうです)。

ストーリー

僅かな停戦期間中、食いっぱぐれた兵士達の中の一人、ケイン・マクドガルを主役とした物語。
ケインは、唯一の友人であったシャ・バックを惨殺した”黒き炎(シャドウ・フレア)”と呼ばれるA・T(アーマード・トルーパー)乗りを探してバトリングと呼ばれるA・T同士の賭け試合を戦う歴戦の強者。
バトリングには専任のメカニックや、試合を取り仕切るマッチメイカーと呼ばれる仕切り屋が存在する。言わばA・Tを使った闘技場。ケインは各地を放浪し、バトリングを繰り返しながら”黒き炎”の影を追う——。

ここまで読んで

「あれ?」と思われた方もいるかもしれません。そうです、最近の作品にこれと非常に良く似た設定の作品があるのです。「フルメタル・パニック 燃えるワン・マン・フォース」です。もちろん状況やキャラクターの振る舞いは全く違いますが、基本的な発想は「青の騎士ベルゼルガ物語」に描かれた「バトリング」そのままです。
バトリングで友の敵である”黒き炎”を追い求めるケインとかなめを探す宗介、アーマード・トルーパーとアーム・スレイブ、マッチメイカーの存在。正直、書店で「燃えるワン・マン・フォース」を立ち読みした(買え)時、叫んだものです。
「賀東、貴様、みているなッ!」(本屋で叫ぶな)
賀東招二は恐らく私とそれほど変わらない年の筈なので、彼の青春時代にもこの「青の騎士ベルゼルガ物語」があったはずなのです。あくまで私見ですが、読んでいるでしょう(ちなみにパクリとか全く思いません。どちらかと言えばニヤリとしました。オマージュという奴です)。

もちろん

装甲騎兵ボトムズ」はアニメ作品でしたので、アニメを見たと考える方もいるかもしれませんが、私は間違いなく小説も読んでいると思いました。ある展開が全く同じなのです。
重大なネタバレになるので言及は避けますが、まあそれは本編を読んで確認して頂くとして・・・本編の紹介に戻ります。
この「青の騎士ベルゼルガ物語」は主人公、ケイン・マクドガルの苦闘の物語です。楽な闘いなど一つもありません。
物資に苦しみ、人間の醜さに苦しみ、残酷さに苦しむ。しかし、私は今までのラノベ人生の中でこのケインこそ「最強」のキャラクターの一人と考えています。
ありとあらゆるキャラクターを差し置いて、です。

ケインは

ただの兵士です。優れたA・T乗りではありますが、ただの人間です。それでも最強と言い切りたいと思います。
大切なものを次々と奪われ、自らも多くの血を流しながらも、這いずりひたすら敵を打ち倒すために戦い抜いたその戦士としての魂こそが彼を私の中で「最強」たらしめているのです。
銀河全体を滅ぼしかねない程の巨大な陰謀を前に、殆どの闘う術を奪われ。失ったものの大きさに、闘う目的を奪われ。それでもケインは苦悩の果てに呟きます。以下引用。

「俺が生きている限り、貴様に負けた訳じゃない」

彼は兵士です。「青の騎士」と呼ばれる男にまでなります。最強の兵士と呼ぶものももちろんいました。
しかし完璧な兵士と呼んだものはいません。そういう男です。こうした引き合いの仕方はあまり好きではないのですが、「燃えるワン・マン・フォース」を読んで宗介の生き様に男の熱さを感じた人なら、この物語にはきっとすんなり入って行けるでしょう。

恐らく元々

「青の騎士ベルゼルガ物語」、全2巻で完結する予定だったのではないかと思いますが、その人気から全4巻となったのでは無いかと思っています。
ですので、全4巻として見た場合、幾つかの展開や細かい部分での無理などを見つける事が出来る人はいるかもしれません。そもそもケイン自体が欠点だらけの男でもあります。しかし、そういった欠点を飲み込んででも読むだけの価値が「ケイン・マクドガル」の生き様にはあると思っています。

この物語

「青の騎士ベルゼルガ物語」の初版は1985年です。
1997年に新装版を再リリースしていますが、あえて1985年版を勧めます。確かイラストレーターが「幡池裕行」から別の人に変わった記憶があるためです。これは絶対幡池裕行版が良いと思うので、古本屋巡りなどをして入手する事をお勧めします。一応amazonへのリンクも張ってますが・・・。
この物語は硝煙渦巻く闘いの物語で、人死にが出るのが苦手な人や、残酷描写などが嫌な人には勧められる作品ではないかもしれません。それでも、おすすめです。もしライトノベルが好きであれば、ぜひ一度手に取って読んでみて下さい。
最後に「青の騎士ベルゼルガ物語」から引用を行って、この感想を締めたいと思います。

半年の後、
バララント戦艦の領空侵犯を契機に、
第三次銀河大戦は再開された。
戦火はまたたく間に拡大し、
再び幾千万の命が失せた。
もし、この戦争の後に生き残る者がいるならば……。
ミーマ・センクァター少将は、それ以上考えようとはしなかった。
だが、すべてが崩壊へと向かうなか、
彼は聞いた。
壊滅する都市を包んだ炎の中に立ちつくす、
青いA・Tの姿を見た者がいる……と。