9S(2)

9S〈ナインエス〉II (2) (電撃文庫)
9S〈ナインエス〉II (2) (電撃文庫)山本 ヤマト

アスキー・メディアワークス 2004-01-10
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おすすめ平均 star
star一気に全巻読みました。
starはじめて読んだ9Sの作品。
star恋する少年?

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個人的なお気に入りシリーズです。早く8巻出ないかな・・・。
「9S」1巻の感想はこちら

ストーリー

秘密裏に開発が進められていた軍用歩行戦車「レプトネーター」の実験が絶海の孤島「弧石島」にて行われる事となった。実験について知った峰島由宇、そしてADEMは「レプトネーター」に峰島勇次郎の遺産の匂いを嗅ぎつけた。結果的に彼らは実験に強行参加する事になるのだが、そこでは予想通り、「レプトネーター」の暴走が発生する。実験の枠を超えて、酸鼻極まる破壊を次々と起こす「レプトネーター」。
前作と同じように拘束具付き、毒薬付きで実験に参加した由宇。そして由宇を求めてADEMのサポートを受けながらも弧石島へ向かう坂上闘真。レプトネーターに加えてさらに、何者か分からない裏切り者の存在と、第三勢力の暗躍。由宇と闘真は「レプトネーター」を止めることが出来るのか?そして弧石島を無事に脱出することが出来るのだろうか?・・・というのが今回のメインストーリー。

展開自体は

実にシンプルな構成ですね。単純に言えば山奥にある別荘が嵐に包まれた夜、ターミネーターが襲ってくる。そしてターミネーターに指示を出している犯人も宿泊客の中にいる、といった状況です。まあ「9S」の場合は敵が殺人犯どころじゃない無差別殺戮兵器なので、金田一の孫だと惨殺されて終わってしまいますが、そこは峰島由宇&坂上闘真、どつき漫才らしきものを展開しつつもその知性(由宇)と蛮勇(闘真)の力でレプトネーターと対峙していく事になります。
いや、「9S」は2巻もバトルが実に熱いです。由宇の「運動は頭脳労働」と言い切るその素晴らしい頭脳&身体能力の発揮と、闘真の禍神の血の発現。そしてレプトネーターとの死力を尽くすような戦い。しかも今回も同じように由宇の体内には毒が仕込まれており、やはり制限時間付きの戦いとなります。
とまあこんな感じの展開なのですが、今回はスフィアラボ編よりも由宇と闘真のでこぼこっぷりが多少クローズアップされています。由宇と闘真の再開のシーンなどは・・・ちょっと闘真が馬鹿過ぎてため息が出ますね。そりゃ赤面した由宇に殴られても仕方がありません。

二人の関係ですが

非常に微妙な感じになってきます。普段の闘真は由宇を「か弱い女の子」だから守りたいと考えていますし、由宇は由宇で(のん気過ぎ、しかも馬鹿なので心配だから)闘真を戦いから遠ざけたいと考えているようです。しかし闘真の中の禍神の血は由宇を「殺したい敵」として求めて止まない・・・。
守りたくもあり、殺したくもあり、離れたくもあり、そばにいたくもあり、と色々と無茶苦茶です。少なくとも由宇と闘真にとってお互いが特別な存在になりつつあるのは間違いない状況の様ですが、まだまだ曖昧模糊とした感じ。ここで問題なのがお互いにとってどういった「特別」なのかなのですが・・・。

そうそう

今回はADEM伊達真治が意外に活躍する巻でもあります。
1巻ではただの冷血漢っぽかったですが、なかなかどうして職務に忠実で実直かつそれなりに正義感を持ち合わせた人物と言った側面も描かれます。こういう背景の厚みを感じさせるキャラクター描写が「9S」の魅力でもありますね。例え敵として登場した場合であってもただの人非人ではないという人物像の膨らみがあります。
また、闘真の妹である真目麻耶もちゃんと登場シーンがあります。闘真の事となると我を忘れるブラコンっぷりが可愛いですね。

総合

星5つですね。面白かった。
「9S」の2巻もこの一冊で完結するタイプの作品ですので、1巻を読んで気にいったのなら2巻をまた単独で購入するのも良いでしょう。おすすめです。
あ、それからタイトルの「9S」ですが、本の最初の方に小さくありますが、"The Security System that Seals the Savage Science Smartly by its Supreme Sagacity and Strength."の略です。適当に翻訳すると「その最高の賢さと強さによってすばやく野蛮な科学を封印するセキュリティシステム」だそうです。「最高の賢さ」と「最高の強さ」という意味で由宇&闘真二人の事をさしている様にも思うのですが、実際はどうなんでしょう?それとも峰島由宇の事かしらん。真相はまだ闇の中です。
(追記)そういえば感想で山本ヤマト氏がイラストを手がけた作品が二つ続きましたね。単なる偶然ですが、個人的には山本ヤマトの描くイラストは好きです。雰囲気があって。あまり媚びた感じの絵が少ない事が理由でしょうか。