アリソン
アリソン (電撃文庫) | |
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時雨沢恵一の
有名な作品である「キノの旅」は実は全然楽しめなかった口なのですが、「アリソン」は実に楽しめました。
「アリソン」の世界を知るには、中央に「中央山脈」「ルトニ河」という大陸を分断する山脈と大河を挟んで対立する「ロクシェ」と「スー・ベー・イル」という二つの国家と、その歴史を抑えなくてはなりません。この二つの国家は断続的に戦争を繰り返して来た長い歴史を持っています。
物語は
「ロクシェ」での学校風景から始まります。
その授業風景で「ロクシェ」の子供達が「スー・ベー・イル」を「悪の帝国」と笑って表現するシーンが出てきます。この二つの国家はお互いが自分たちの国家こそ「ヒトの先祖」と信じ、相手国家を蔑んでいるという状況がありました。そんな状況を抱えながら、「アリソン」の物語はスタートします。
アリソン・ウィッツティングトンとヴィルヘルム・シュルツがこの話の主役になる訳ですが、アリソンは口より先に手、頭より先に体を使う行動派(ただし金髪の美少女)。ヴィルヘルム(ヴィル)はどちらかと言えば冷静で思慮深いタイプです(射撃がとても得意)。
アリソンは
性格そのまま行動的な空軍の優秀なパイロット。ヴィルは上級学校(多分今でいう高校)に通う学生。
ある日、学校に通うヴィルの元にアリソンが飛行機に乗って颯爽と現れます。アリソンはいつもヴィルを引きずり回しているのですが、今回もヴィルを連れ出す事になります。ふとしたきっかけである老人から「戦争を終わらせる事の出来る宝のありかを知っている」という話を聞かされる事になるのですが・・・という話です。
適度な
アクション、適度な悲しさ、適度な憎悪、適度な危機、適度な謎、適度な陰謀・・・などなどなどなど・・・がうまい具合に散りばめられていて、読者を飽きさせません。
「キノの旅」はダメだった私ですが、「アリソン」での時雨沢恵一の描写の優れたバランス感覚に裏付けされた語り口にはすっかり引き込まれてしまいました。そしてしっかりと宝の謎をといて物語は終わります。
主役の
アリソンとヴィルの何とも言えない微妙な関係もそうですが、彼らの生き生きとした無鉄砲さが素晴らしいです。間違いなくおすすめ出来る作品だと思うのですが、どうでしょう?
「アリソン」は全4巻(3話目だけ上下巻)ですが、1巻はこれ一冊でちゃんと話がまとまりますので、取りあえず1巻だけ購入するのはどうでしょうか。「黒星紅白」の書くイラストの出来も個人的には大好きです。
見事な出来映えのエンタメ作品だと思っている作品「アリソン」。星5つです。