GOSICK(6) 仮面舞踏会の夜

GOSICK〈6〉ゴシック・仮面舞踏会の夜 (富士見ミステリー文庫)
GOSICK〈6〉ゴシック・仮面舞踏会の夜 (富士見ミステリー文庫)桜庭 一樹  武田日向

富士見書房 2006-12
売り上げランキング : 29657

おすすめ平均 star
star列車の中という密室で起こった殺人劇、変装、列車暴走、シリーズそのものの伏線。ミステリーの王道らしいミステリー。それと、エプロンドレス!
star充実した後書きですな。
starついついニコニコしてしまいます

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これが終われば後は短編集を残すのみだ・・・ふうふう。
GOSICK5巻の感想はこちら
前回、「ベルゼブブの頭蓋」を無事脱出できたヴィクトリカ久条の二人ですが、帰りの電車の中でも前回から今回にかけての最重要アイテム「形見箱」を巡って殺人事件が発生してしまいます。そこに巻き込まれたヴィクトリカが知恵を、久条が勇気を発揮して謎と危険に対峙するのですが・・・というお話。
列車の一つのコンパートメントに乗り合わせた人間達は余興に本名を名乗らず、<孤児><木こり><死者><公妃>といった肩書きで自己紹介をします。そしてお互いに相手が何者なのか分からない状態のまま発生する殺人事件、さらには暴走する列車、殺人事件の犯人は誰なのか? 暴走する列車を止めることは出来るのか? この辺りがストーリー的には見所です。今回はミステリとしても結構読めるんじゃないでしょうか? 多分・・・。
前回「ベルゼブブの頭蓋」で、お互いの立ち位置を確認したとも思える二人ですが、6巻はそれの補強のような話が語られていきます。ヴィクトリカが久条をどう思っているか、久条がヴィクトリカをどう思っているか・・・前作もそうですが、彼らの言葉や仕草には直接見せなくとも分かる繋がりがあって、それが美しい話です。彼らはもはや比翼連理と言っても良いと思います。
無事に列車を降りられる所までは5巻のエピローグで語られていますので分かっているわけですが、それでも十分に楽しめますね。ヴィクトリカは可憐だし、久条はなんか格好いい見せ場もあるし。ちょっと引用。

衣擦れの音が続いている。
ぱさり、とドレスが床に落ちる音。
ブーツが床で立てる、乾いた音。
やがて、エップロンだ〜、エップロンだ〜、という、かすかな、鼻歌のような低い音も聞こえてきた。

ヴィクトリカのご機嫌歌、再び。可憐? 可憐に決まってる! ・・・ついでに久条も引用。

「ちょっと待ってね、ヴィクトリカ。お鼻のよこっちょも拭いてあげるから」

そこまでやるか、久条一弥。・・・別に格好いい見せ場の引用じゃないけど、まあいいか、久条だし。


・・・ところで、
5巻からこっち、非常に二人の繋がりが深いことを表す描写が「これでもか!」としっかり書かれるので、逆に私はある不安がじりじりと頭をもたげて来てしまいました。なぜならば、今作で「GOSICK」シリーズを美しくも悲しい「別離の悲劇」を描いた作品にする舞台が完全に整ったように感じてしまったからです。
不吉な予言」のこともありますし、二人が全力で抗っても「ずっと離れ離れになってしまうのではないか」という悲劇的な結末に対する不安です。正直予言がされた時(2巻)は「まあストーリーの展開上そんな事もあるのかな〜」位の思い入れだったのですが、話が進んで、二人の関係を支持するようになればなる程、「不吉な予言」の効果がじわり、じわ〜りと効いてきて「なんか不安だ。不安なのだよ君」となってしまっています。正直私は結構効いてしまっていてそろそろ足に来てます。「少女七竈と七人の可愛そうな大人」や「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)」を書いた桜庭一樹ですからねえ・・・やりかねん! やりかねんよこれは! という訳です。
しかし不安だけど期待もあって、展開が凄く気になる・・・ああ試験結果の発表前、そんな気分でしょうか。
改めて考えてみれば、ヴィクトリカはある意味軟禁されている身で、久条はただの留学生です。二人とも15歳、社会に通用する権力など全く持っていません。久条が誓いを強くすればする程、この現実と理想とのギャップは広がります。そこがやっぱり気になりますね。
しかしまあ、「GOSICK」シリーズはラノベだし、そんな悲しい結末にはしないよね、せんせ? って思うことにします。今後もやっぱり目の話せないシリーズですね。やはり星5つのオススメです。楽しいですよ。
とにかく、やっと「聖マルグリット学園」に帰ることが出来そうなんで、7巻ではもう少し明るいシーンを挟んでくれたりするとより嬉しいですが、メインテーマもある事だし、可能な範囲でお願いできればって感じです。