アリソン(2) 真昼の夜の夢

アリソン〈2〉真昼の夜の夢 (電撃文庫)
アリソン〈2〉真昼の夜の夢 (電撃文庫)時雨沢 恵一

メディアワークス 2003-03
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また画像がねえよ! ラノベをなめんなー? まあ仕方が無い・・・ぐぅぅ。
本編が「手紙」のやり取りで始まるのが新鮮な「アリソン」2巻の感想を。
最近はメールでのやり取りが普通で、手紙を書く人というのは殆どいなくなったんではないかと思いますが(少なくともラノベの読者層では)、たまに手紙を書いたりすると、やり取りが普通の会話やメールではあり得ない言葉使いだったりして結構悪くないです。同じ様な事が「アリソン」でも言えます。しかもアリソンは手紙をきっちり、丁寧に書く事を自分に課しているので、普通の場面ではあり得ない丁寧な言葉使いのアリソンを見る事が出来ます。「本当に人がやっていそうな」習慣というか、癖のようなものをさり気なく入れてくる事でキャラクタの人間像に厚みを出しているんでしょうね、きっと。こういうやり方上手だと思います。
2巻は1巻の話が終わった後、どのように世界が動いて行ったかがこのアリソンヴィルの手紙を通じて語られます。その後、ヴィルがアリソンの”半ば命令”で学校主催の「研修旅行」に参加する事になり、「イクス王国」に行く事になるのですが、やっぱりアリソンがそこに顔を出してきて・・・といった感じ。今回はなぜかイクス王国にてトラブルに巻き込まれる事になるんですが・・・。アリソンの登場は実に無茶苦茶ですし、アリソンのヴィルにぞっこんっぷりが露骨で素敵です。ちょっとアリソンの可愛い所を引用してみます。

「上級学校出たら、私と一緒に首都に部屋に、一緒に住まない?」

なんか無茶苦茶な言葉ではありますが、どちらかと言えばラノベ界では地味な台詞まわしでしょうか(内容は過激ですが)。しかし、他の行動やら発言が直接的でハッキリしていて無駄が無いように描かれているアリソンだからこそ、こういういまやラノベ的に地味とも言える台詞が光ります。この辺の対比を利用した表現も好きですね。

アリソンだけでなくヴィルについてもですが、のっけから根性が太すぎです。鋭いのか鈍いのか・・・まあ、アリソンと一緒にいる内に鍛えられて、「アリソン用フィルター」みたいなものが既にあって、アリソンの事では滅多な事で驚いたりしないようになっているのかも知れませんが、彼も可愛いですね。
それと、2巻は前回微妙なポジションで登場したベネディクト少佐がのっけから登場します。物語序盤のベネディクト少佐のあえての”教科書から抜き出した様な微妙な”ロクシェ語による物悲しい独り言が笑いと言うか、切なさを醸し出すような所とか、かなり好きですね。そうかい、ベネディクト、そうかい・・・まあ仕方がねえわな・・・ま、飲もうや、そんな感じでしょうか? しかしこの辺り、後々の伏線として機能しているので侮れません! やるな!
ところで、時雨沢恵一質実剛健な文体は、アリソンみたいな軍隊が出てくる様な話に向いているのではないでしょうか。あまり露骨な言い回しはないのですが、微妙なニュアンスを含んだ台詞とか、非常に遠回りなようで直接的な表現とか、言葉以外の普段の行動で情景を描写するそのスタイルは非常に評価しています。
今回もあっちに行き、こっちに行き、あっちで襲われ、そっちで戦闘機に乗り、と大忙しの「アリソン」2巻ですが、やっぱりおすすめです。読んだ事が無いのであればぜひどうぞ。私の場合話自体は1巻より2巻の方が僅かに好きですかね。
難しい所が無くて、すんなりと読めてしまう作品ですが内容が薄いなんて事はありません。ただし、SFとかの濃くて精密な描写を好む人に取っては物足りなさがあるでしょうけど、そればっかりは仕方が無いですね。でもどうでしょう、あっさり風味ですけどダシがちゃんと出ていて美味しいのが時雨沢恵一の持ち味。もし食わず嫌いしているようなら一度食べてみるのもありではないでしょうか? 私がその口でしたので。
それから今回も黒星紅白のイラストはいい味を出しています。特に口絵のカラーイラストの子供アリソンとヴィルのイラストは、現在の彼らを予見する様な感じが可愛らしくてお気に入りです。