神様のおきにいり

神様のおきにいり (MF文庫J)

神様のおきにいり (MF文庫J)

主人公である稲村智宏には秘密があった。それは家に「珠枝」という家神が住んでいるためだ。この珠枝は外見は恐らく幼稚園児くらいの少女の姿をしているけれどもれっきとした神様であり、それなりの力も持っている。その土地ではかなりの神様なのだが、智宏は家神の存在を他人に知られないように注意しながら、暮らしていた。そこへある日、「国土交通省 特定土地監視員 楠木兼康」となのる男が「家神の力を貸して欲しい」といって訪れる所から話がスタートするのですが・・・。

いわゆる土着の神様や妖怪変化の類いを話のテーマに据えたタイプのラノベです。主人公の智宏は家神を大切にしている(あるいは可愛がっている)事を除けばごく普通の少年ですが、ある事をきっかけに普通の世界と重なるようにして存在する妖怪や神様の世界に片足を突っ込む事になります。しかし、血なまぐさい戦いに駆り出されるというような事はなく、また邪悪な陰謀を抱え持った敵が出てくる訳でもありません。どちらかと言うと珠枝の力を借りつつ、人と妖怪達の仲を取り持つ様な場所に立って動く事になります。幼なじみの有坂瑞穂や、妖怪嫌いの祈祷師・楠木真希。真希のお供でお目付役のコヒロ、桜の精の好香などなどかなりどうでもいいような妖怪から、ちょっと強力な変化の類いまで色々と出てきてにぎやかです。
この話、時にコミカル人間と妖怪達の繋がりを書きながら、時にシリアスに人と物の怪の違いを見せつけたりします。しかし、物事の裏と表のようにそれらは繋がっていて、二つで一つのような連帯感があるというか、共存する事の楽しさというか、まあ、全体的にそういった微妙に優しい話を展開して行きます。

もの凄くドラマチックな展開が待っているという訳ではありませんが、意外に構成もしっかりしていて楽しませてくれます。キャラクターについてはもっと書き込みがあれば良いとは思いますが、十分楽しめる出来です。星3つでしょうか。
気楽な気分で読ませてくれる本ですが、その代わり全体的に緊張感みたいなものは少ないので、アクション! バイオレンス! エロス! とかが好きな人には物足りないと思いますが、取りあえず癒されたいなんて人にはおすすめ出来る本じゃないでしょうか。