“文学少女”シリーズ2 “文学少女”と飢え渇く幽霊

”文学少女”と飢え渇く幽霊 (ファミ通文庫)

”文学少女”と飢え渇く幽霊 (ファミ通文庫)

”文学少女”シリーズの感想を書くのは実は猛烈に疲れます・・・。
2巻も当然のように主役は”文学少女”こと天野遠子、そして元作家の心葉。相変わらずの展開なのですが、いやあ、えぐい。

正直

この2巻は「流石にちょっとダメだな。後味の悪さと文学性の高さが正比例するとか作者は思ってないないか?」とか思ってしまいました。あまりに残酷で、あまりに悲劇的で、あまりに救いが無い。作品の中で誰が何と言おうと、これだけは間違いない。

文学少女”遠子先輩はこの話において探偵役として機能しているのですが、彼女は一体なんのために謎を暴くのでしょうか。何のために人の秘められた心を暴くのでしょうか。まるで推理で犯人を追いつめて自殺させてしまう探偵のように、遠子先輩は今回探偵としてやってはいけないことをやってしまった。それがこの2巻です。なぜなら、最後の最後で間接的にせよ、一人の人間を終わらせてしまうのですから。
正直言葉を連ねることで「報い」だとか、「因果応報」だとか、「幸せだったに違いない」だとか、「本望だろう」とか言うことは出来ます。しかしそれは当事者達の決意において行われるべきでした。こんなに深い愛と憎しみの話であるなら、最後の一撃は当事者達が誰にも誘導されること無く自らの意思でもって放つべきでした。ただの分かった様な気になっている”文学少女”が口を出して力添えをしてはいけないことだった。真実かも知れないけれどもそれを傍観者が弄んではいけなかった。そう思います。
そうした意味では、この2巻、私の中にある探偵役として”文学少女”がやったことは完全に失敗でした。何のための真実なのか? 誰のための真実なのか? ”文学少女”はその真実を何のために暴くのか? 今回のこれは古傷の切開手術に他ならず、しかも麻酔すらありません。そして本人達がその手術を望んでいたのかすらも、本当の所分かりません。
一体誰の望んだ結末だったのでしょう。”文学少女”遠子先輩は常に「読者」ですから、それでも良かったかもしれません。しかし、当事者達にとって真実は本当に必要だったのでしょうか。誰が最後に心から笑うことが出来たというのでしょう?
断言します、誰も笑うことは出来ませんでした。そしてこれからもずっと笑うことはできないのでしょう。

また、1巻においては希望がありましたが、この2巻において、当事者達には一片の希望すらなく、人々は頭を垂れて「嵐」が通り過ぎるのを待つしかありません。読者においても同じです。「これは悪い例です」という役には立つかもしれませんが・・・。
救いは一体どこに? 謎を解いて得られたものと、失ったものを量りにかければ、おそらく失ったものの方に傾くでしょう。

上に書いた通り、正直どうしようもなく読了感は悪いです。どんな理由をつけてもです。ですので星は5から1引いて4つにします。しかし本としての出来は非常に良いと言えますので元の出来は5つですね。楽しいといえば楽しいですけど・・・。うーんって所でしょうか。

おまけ:この本を読んでの教訓

「良かれと思って〜する」はもの凄く大きな失敗の前触れ。人生で大切なのはコミュニケーション! 大事な人には報告・連絡・相談を欠かさずに!

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