シフト(2) 世界はクリアを待っている

シフト 2―世界はクリアを待っている (2) (電撃文庫 う 1-21)
シフト 2―世界はクリアを待っている (2) (電撃文庫 う 1-21)うえお 久光

アスキー・メディアワークス 2008-07-10
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おすすめ平均 star
star単行本から文庫へ・・・そして次は遂に完全新作!
star夢の中と現実とのつながりが面白く書いてある。

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眠る事で異世界にシフトする少年少女たち。そしてリアルワールドにまで及びつつある「シフト」した先の世界。
えーと、全体的に暗澹たる話になりつつあると言うか・・・。

今回は全体的に異世界での話は、異世界独特の状況が生み出したちょっとした話をつなげて、異世界での比較的身近な話題をテーマに人々と世界の繋がり、シフトした世界の特殊性を書き込んでいきます。そして、ラケル、セラ、ミュージィらの旅立ちが描かれます。この辺りまでは1巻の延長線上の様な話なので、比較的すんなり入れるのではないでしょうか。
そして2巻で大きなウエイトを占めていると考えられるのが、現実世界での戦いです。
赤松祐樹と日野鷹生の戦い
日野鷹生と高嶋空の葛藤
高嶋空と宮沢沙緒の対立
宮沢沙緒と赤松祐樹の断絶
そして「シフト」の存在を知りつつ赤松祐樹に協力する謎の大人・間藤杏里。
色々なそれぞれの思惑を胸の内に秘めつつ、現実世界と異世界での対立は激化していきます。正直、一体なにを持ってしてこの話が終わるのか、いよいよ分からなくなってきました。「世界はクリアを待っている」ですが、この「シフト」という本の終わりは何が満たされたときやってくるのでしょうか? この辺りちょっとメタ的ですが、物語の推移を見守る事にします。
しかし2巻になってさらに語られるようになった「勇者」「魔王」そして「姫」。一体だれがそれぞれの立場になっていくのでしょうか。いまのままだとラケルが魔王になるように読み手に思わせているように思いますが、まだまだその辺り余談を許さないなんて思っています。勇者に必要な資質とは一体なんでしょうか。私は「ラケル」こそが勇者なのではないか、などと思っていますが。ちょっとね、日野君には全く感情移入出来ないのですね。個人的に説得する力の無い綺麗事が嫌いというのもありますけど。
本の帯には以下のようにありますが、実際は誰が誰なんでしょう?

魔王と姫と勇者——。互いの運命を知らぬまま、《こちらの世界》で出会った三人の少年少女。
これは、倒される運命にある魔王の物語。

ところでこの本、なんというかファンファジックな爽快感とかそういったものが完全に消滅しつつあります。ちょっと鬱屈した展開なので、3巻ではもうちょっと爽快感を出して欲しいなあなんで思ったり。2巻はちょっと物語的に迷走気味のような気がします。前巻で取りあえずの目的らしきものは出てきましたが、それに向かって一直線という訳ではありませんし。
また、相変わらず上手いと思う所はありますが、テーマや葛藤に関する書き込みに文字数を割いてしまって、うえお久光作品の持つ爽快感というか能天気感というか、そういったものが全体の重苦しさに押し潰され気味とでもいいましょうか。ハードカバーの本にした事で大人向けを意識した事が関係しているのかも知れません。

あと、赤松祐樹ですが、もうちょっと落ち着いた所を見せて欲しい気もします。今のままだとちょっと読んでいて息苦しい感じが個人的にしますので・・・。
うーん全体で星3つでしょうか。あんまり物語が動かなかったなあ・・・という感じです。
まあ、次も買ってみますけど、高いからな・・・ちょっとこのままだと脱落しそうな気分ですね。もうちょっと頑張って欲しい。