制覇するフィロソフィア

制覇するフィロソフィア (スーパーダッシュ文庫)

制覇するフィロソフィア (スーパーダッシュ文庫)

いやあ、なんと馬鹿な作品なんでしょう!
自分の内にある「哲(フィロソフィア)」が敗北すれば、物理的にも敗北する。相手の持つ「哲」が理解出来なければ、相手の物理的な動きも理解する事が出来ずに対応する事が出来ない。実に見事で変な発想です。これは面白い。そうした世界で話が始まるのですが、登場キャラクターも女しか登場しないときています。微妙に百合の匂いがするし・・・ああ、楽しいですね。
帝(すめらみこと)を目指す娘達が集う帝塾。ここは哲を磨き上げ「女の中の女」を生み出すために作られた塾。女である事を貫かせるために人死にすら厭わない、過酷な塾。
ええ、つまりは「男塾」の女性版ですね。まさしく女の中の女たちがひしめいています。主人公は御間城和(みまきやまと)、そしてそれに付き従う水縄皆見(みなわみなみ)。学ランです。全力をもって学ランです。日本刀とかもぶんぶん振り回しますし、広い塾内では内戦まで発生して戦死者まで出たりします。どんな戦国時代だこれ。
ちょっと引用してみます。

「な、なにを考えてやがる。仲間を見捨てるってのか」
「ただでは見捨てん。おれもともに死ぬ」
「そんな簡単に、決めることかよ」
「それが女というものだ」

すげえ台詞だ。全編この調子です。
作品中で「知っているのか雷電!?」と誰も言い出さないのが不思議でした。もちろん男塾にわざと似せている所があるので、パロディのような場面が出てきます。「男塾」を少し読んだ事があればより楽しいかも知れません。

上記にも記した通り、「哲」の戦いが実際の斬り合いと平行して行われます。イデア論やら実用主義無知の知などなど・・・いわゆる哲学で扱われる分野のやり取りが作中のあっちこっちで発生します。古代ギリシャかここはって感じでしょうか。
なんて設定だとか思いますが、これが意外に読ませる読ませる。するすると最後まで読んでしまいます。主人公の和は実にいい女だし、皆見も根性の座ったいい女です。そういう意味では「女塾」という名前をつけても良いくらいですね。変ですが、魅力的なキャラが沢山出てきます。
このぶっちぎれた設定で「円環少女」をちょっと思い出しましたね。その発想の斜め上っぷりという意味でですが。もうこの本は基本設定を思いついた段階で面白い事が決まった本では無いでしょうか。
おすすめ、星4つです。ちょっとした百合っぽさを楽しむ意味でもいいですね。特にその辺りの趣味がない私も楽しめる程度に抑えているので、普通の人も大丈夫じゃないでしょうかね。

感想リンク
まいじゃー推進委員会
積読を重ねる日々
愛があるから辛口批評!