連射王(上)(下)
- 作者: 川上稔
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2007/01/01
- メディア: 単行本
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正直値段的にも、内容的にも敷居が高いのではないかと思える本、それが「連射王」です。
はっきりいって「終わりのクロニクル」とかのイメージで本書をとるのは間違いです。正直本当に同じ人間が書いた話なのか疑いたくなる程の違いです。中には「アーケードゲーム」が出てきますが、あくまでゲームを中心にして語られる青春物語というべきでしょう。
ストーリーは、何事にも本気になれないと思っている主人公・高村昴(こう)が、連射王というシューティングゲームに出会う事で少しづつ自分を再確認して行く話・・・といっていいでしょうか。
まあ大体今時ゲームを本の主題に選ぶというのもそうですけど、それ以上にシューティングゲームって言うのが凄い。シューティングゲームに対してもの凄くシリアスに向かっている人々がこの「連射王」では語られる訳ですが、今時シューティングゲームって、ねえ? とか正直思いますし、読了後もその気持ちは変わりません。でも敢えてのシューティングゲームなんですね、この本。RPGやらストラテジーやら格闘ゲームやらネトゲではこの緊張感って、出ませんね。
「シューティングゲームの敷居の高さ」については本編でも結構語られる訳ですが、登場人物は実にストイックにゲームに向かいます。まさに人生をそこに見いだしているかのようにシリアスです。ゲームをクリアする寸前で泣きが入る程シリアスです。まさに人生そのものです。こんな風にゲーセンゲームに向かっている人たちがいるのだろうか? という疑問と、少しの羨ましさすら感じる真剣さです。
ゲームで違和感があるなら別に他の何に例えてもいいです。主人公の高村昴は野球少年なのですが、ゲームをそのまま野球に置き換えたら普通にそこらへんにある青春スポーツ小説になりそうな程ストイックな中身です。・・・しかしそこをあえてゲームにする辺りが川上稔たる所以なんでしょうね。
しかも本編で主人公は恐るべき事に「ファーストゲーム・ワンコインクリア」という恐るべき目標を打ち立て、それに邁進する事になります。楽譜を初見でピアノを引くより難易度が遥かに高いです。シューティングゲームをやった事がある人ならその難しさが理解して頂けると思います。正直・・・信じられませんね。以前PC-Engine版(だったかな?)のイメージファイトをクリアした事があるのですが、一体何度コンティニューをした事か・・・。
しかし世の中には、普通の人間からしたら無謀とも言える挑戦に真っ向から向かって行く人たちがどこかにいるでしょう。本気でF1ドライバーになりたくて日々特訓している人間がこの地上にどこかにいるように。正直そういう高みを目指す行為と、「連射王」の中で語られる真摯な姿勢は全く同じものではないでしょうか。読んでいて、悪くないなって思いました。
星は付けません。この本はライトノベルでは無いと個人的に認定しました。お金に余裕があれば、買ってみては? まあ、悪くはないです。
(余談)
この本はシューティングゲームについての教本にもなります。参考程度にですけどね。