ドンこい!

ドンこい! (ジグザグノベルズ)

ドンこい! (ジグザグノベルズ)

ストーリー

話はまあ異世界召還物(そんな分野があるのかどうかは知らないけど)なんだけど。
主人公の純友純(すみともじゅん)はとにかくドンくさい性格をしていて「純」ならぬ「鈍」として「ドンくん」と呼ばれていたりする。無駄に丁寧で本当にドンくさい奴なのだが、ある日突然落とし穴に落ちるようにして異世界に召還されてしまう。そこにはエリザベルと名乗る羽の生えた美少女がいて、彼の事をアストラル(個人専用の守護精霊みたいなものだろうか?)として戦わせるために呼び出したと言うのだが・・・というドタバタ異世界ファンタジー
純は正しく普通未満の高校生(顔はそれ程悪くは無いらしい)ので、戦闘能力など皆無なのですが、なぜか他のアストラルの攻撃を一切受け付けないという特殊能力があるようです。ただしアストラル以外からの攻撃(つまり人間)は普通に受けてしまうのだけど・・・という設定。
彼は自分を呼び出した少女と命を共有する関係で、しかも離れたりしてもまずいらしい。で、やっぱり男扱いされていないので、一緒の部屋やらベッドやらで寝る事になってドキドキウハウハといった感じの話なのですが・・・。

どーもイマイチ

ここまで読むと、身近なところでは某使い魔(他にも色々思いつきそうですけど)みたいだなあという感じですが、えーちょっと設定に関して言えば「アストラル」は某使い魔の「ガンダールヴ」っぽいですし、ヒロインが所属するのが「アポカリプス学院」という学校なので世界観も最近の有名ファンタジーステレオタイプな感じでしょうか。ハリポタとか。
まあ、色々と既存のものを組み合わせてはいるようですが、設定全体で見渡した時に目新しい感じがしないのはちょっと頂けないですね。既存のネタでも上手く料理してあれば楽しめますので、「既存ネタを使っている」=「劣化コピー」とまでは言わないんですけど、正直料理下手です。生みの苦しみにのたくった挙句の果てに出来た物語って感じがしません。なので劣化コピーですね。粗悪品。
「ぷいぷい!」での新木陣の台詞とほぼ同じ突っ込みをするキャラクターとか出てくるし。

「わざと言っているのでなければ、希有な才能だな」

この間引用した台詞とほぼ同じだぞー。

キャラも似てる

それからヒロインですけど、「ぷいぷい!」の座堂シエラとあまり変わり映えがしません。ツンデレ高飛車系で身分が高く、ちょっと弱弱しいところもあったりする感じがまさしく同じです。
(ゼロのルイズ+座堂シエラ)/2=エリザベルって感じです。なんか安直。この作者は同じようなキャラしかヒロインにしないんかい!とか微妙に読みながら突っ込んでしまいました。自分の作品の劣化コピー作ってどうするんだと。ちょっと安直過ぎやしませんかと。これ結構致命的。読む作品を一つに絞ればこうは思わない可能性もありますが・・・。
ただの偶然かもしれませんが、この作者、女性キャラクターに「ツンデレ」とか「お嬢様」とかの記号的なもの以上の深みを持たせることができないんじゃあないのか?とかも思ったりしました。キャラにどうも奥行きが無いんです。そういう意味では座堂シエラだってそうなんですけど、まあこの作者の本を初めて読んだのが「ぷいぷい!」でしたので、そういった事を感じなかっただけかも知れませんね。

ただし、主人公の純はなかなか変な性格で「ぷいぷい!」の新木陣と同じように結構特殊で見所は無いわけでもないです。ただ設定された性格に一貫性が無いような気もしまして、「このキャラってここでこういう行動取るかなあ?」と首をひねってしまったりもしました。まああまりにも都合の良い展開が続くのはコメディなので良しとしましょう。

おすすめしません!

  • 典型的ファンタジー物(コメディ)が読みたい
  • 「ぷいぷい!」を読んでいない
  • 「お嬢様」属性、「ツンデレ」属性、などに目がない

という人以外は避けて通るのが良いでしょう。作品全体に緊張感が無いし。値段も文庫より高いし。値段の分期待しただけに失望もおっきいですよ。ハズレのギャルゲーを買ったような気持ちでしょうか。
よって久しぶりの星2つ。意味不明で読むのが辛いとまでは言わないので星1つにはしませんでしたが、次があってもよっぽど読むものが無い限り買いませんね。この作者の本はとりあえず「ぷいぷい!」シリーズだけで十分という気持ちになりました。作者買い、失敗。
作者には正直もうちょっと新しいヒロイン像を生み出す努力をして欲しいし、読者を新しい世界観とかひねった発想で楽しませようとかしてほしいとか思った。ちょっと出直してこい。あとがきを見ると色々考えているらしいけど、作品に反映されてなければ意味ないし。

イラストは・・・イラストも半端だねえ。ないほうがいいんじゃない?