煌夜祭

煌夜祭 (C・NOVELSファンタジア)
煌夜祭 (C・NOVELSファンタジア)多崎 礼

中央公論新社 2006-07
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こんなニューな感じの作品に適用するに適したカテゴリなんて無いんですけどね。
いやー上手い。上手いと言うか、無駄が無いのかな。こら皆さんが評価するのがよくわかるわ。
構成の妙といえばこれは最近のラノベで頂点に君臨する作品かも知れませんね。語り部の語る形式で送られる短編が、最後の最後で一つに収斂して行く流れはもう見事としか。しかも限られた分量でそれぞれのキャラクターに味付けをきっちりと行いつつ、読者に大きな流れを見失わせずに話を作り上げたそのテクニックはもうこれは両手を上げて認めてやるしか無いって出来ですね。

独特な世界観

これももちろんですが、一つ一つの短編も見事でサービス精神にあふれた作りで・・・一粒で何度も美味しい作品ではないでしょうか。しかし、この人これがデビュー作って、ホント? なんで今まで落選してたの? 正直それが一番疑問。
ひょっとしたら今までの投稿作品は、構成に凝りすぎて複雑さが増し過ぎて読みにくくなっていたとかで落選とか、そういう感じでしょうかね。凝りすぎた結果誰も付いて来れない作品になっていたと言うか。
長谷敏司とかも難解な作品を作る傾向がありますが、長谷敏司の場合ミクロレベルで凝るタイプのようなので、細かいうんちくを読み飛ばしても(あるいは正確に理解しなくても)話の大筋を読み違えるってことは無いですが、この作家は一冊の大きな流れで見た場合の構成に凝るタイプなのかも知れません。この場合上手くやらないと読者を置き去りにして「あれ、誰だっけコレ」という事になってしまうと言う・・・。この話が成功したのは短編の組み合わせて作ったせいかも知れませんね。一つ一つをパズルの様に組み合わせれば誰でもその構成が分かるという。

今後は

十分な文字数と巻数をあげれば、かなり魅力的な作品が書ける人では無いでしょうか? すごーく真面目に作品に取り組んでいるって感じがひしひしとして、その点についてはとっても評価出来るような気もします。やっつけ仕事の匂いが全くしない感じが、読者として嬉しい。「こういうキャラ」と「こういうネタ」で行けば、まあそこそこ売れるよね〜、みたいな感じがしないって事です。
ま、推測に憶測を重ねた私の意見なんかはどうでもいいですが、とにかくこの本が非常に高いレベルで纏まっている話だと言う事は確かだと思います。時々ちょっと「島」周りのネタで「なんじゃったかのう、この島は」とかいう時がありましたけど。まあそれは私の知能のせいだと思うので。違う? うーん、どうすかね。

結論

星4つかな〜。評価している割にはなんで星5つじゃないねん!というのはもう単純に好みの問題です。ちょっと萌えるところとか欲しいんですけど、まあ「それやったらアカンがな」って本なので、もうそればっかりはどうしようもないです。でも、一読の価値ありでしょうね。萌えたい私でも十分に楽しめる作りの本という事は、ラノベに特に萌えを求めない人には「辛抱たまらん〜(*゚∀゚)=3 ムッハー!!」って本でしょう。次出たらその本も買うね。間違いないね。

あと、山本ヤマトの絵師としての実力はやはり確かですね。いわゆる萌えキャラの女の子とかを書いているわけでもないのに、口絵の一枚イラストの色使いやらムードやらの表現は見事。