GOSICKs(2) 夏から遠ざかる列車

GOSICKs(2) —ゴシックエス・夏から遠ざかる列車— (富士見ミステリー文庫)
GOSICKs(2) —ゴシックエス・夏から遠ざかる列車— (富士見ミステリー文庫)桜庭 一樹  武田日向

富士見書房 2006-05-10
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おすすめ平均 star
star短編集は一気に読まない方がいい
star二人だけの夏休み
star見えない傘の下で

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連続でGOSICKシリーズの短編の感想を。
現在短編は2冊出ていますが、こちらの方が好きです。正直大した事件も起こらないし、何もないヴィクトリカと久城一弥の夏休みを(とその他)描いた作品なのですが、良いですね、雰囲気が。

相変わらずイラストがいい

今回は口絵よりも本編内のイラストの方がお気に入りだったりします(正直どちらも好きですけど)。ヴィクトリカがぼーっとしていて、その後ろで一弥が和服姿のままフリル満載の日傘をヴィクトリカに差している姿のイラストや、子犬と、子犬のようなヴィクトリカが顔を鉢合わせにしているイラストはもうとても可愛らしいですね。
短編の1巻から時間が随分経過していて、丁度4巻と5巻の間の出来事を中心に書かれていますので、強くなった二人の繋がりと、その間をゆっくり流れる穏やかな空気をたっぷり楽しむ事が出来ます。

一弥のお姉さん登場

手紙では何度も話に出て来ている一弥のお姉さんですが、今回は短編のうち一編がそのお姉さんを主役にした話になっています。まあ、瑠璃(一弥のお姉さん)は学校で女生徒にとても人気のある娘のようでして(「瑠璃さま」と呼ばれている)、その愛を一身に受けている一弥は「瑠璃さまを寂しがらせたり、悲しませるなんて、許せない」という事で同級生にとてつもない嫉妬心をぶつけられているという事実とかが明らかになります。

「泣いて取りすがる瑠璃さまを足蹴にして、高笑いとともに去ったのよ。男なんて!」
「一弥め」
「一弥め」
「あぁ、憎い」

「少女七竃と七人の可愛そうな大人」とかがどんな想像の果てに生まれたのか、なんとな〜く分かるような分からないような文章ではあります。まあ、・・・どこでも男女問わずアホな人ってアホだなあ、という密やか〜な笑いがこみ上げたりします。まあ一弥は留学先で色々大変な目にあっていますから、彼女らの呪いが地球の反対側まで届いたのかもしれませんが。

寮母さんとセシル先生の色々

セシル先生はいつからああなのか、寮母さんはいつからああなのか、色々と過去の風景を交えつつ語られる短編がやはり一編収録されています。これがまた楽しい。必見です。

グレヴィールの髪型の秘密

まあどうでもいいっちゃいいんですが、あのドリルの謎が解けます。・・・結構良い話でしたよ?

GOSICKファンなら絶対買い

お薦めします。星5つ。
各短編の出来がそれぞれとても良いと思いますし、全体で見た時のバランスも良し。
夏のうだるような暑さと、聖マルグリット学園を包む生徒の帰省した後の静かな空気が、本編中の季節に逆らう様にとても涼やかに書かれています。雰囲気を楽しむだけでも十分楽しいですね。
まあこの短編の直後の時間軸で長編5巻に突入しちゃう訳ですけど・・・。