僕僕先生

僕僕先生

僕僕先生

あらすじという程でもないあらすじ

場所は中国、唐の時代(遣唐使とかの唐ね)に王弁(おうべん)という若者がいた。かれは父親のすねをかじって働きもせず日々酒を飲んだり、季節を楽しんだりしていたが、それを見かねた父、王滔にいろいろ詰め寄られるのだが、のらりくらりとかわしてはやっぱり何もせずに暮らしていた。彼の父親は結構な役職の役人で、父の財産は彼が100年生きたとしても食いつぶせるような金額では無いという事を知っていたのだった。
ある日、王弁は父に使いを頼まれる。山の上に住むという仙人に貢ぎ物を持っていってもらいたいという依頼だ。養ってもらっている関係上、無下に断る訳にもいかず、彼は山の上に住むという仙人を訪ねるのだが、訪ねた先にいたのは可愛らしい少女の姿をした仙人だった。彼女は自分のことを「僕僕」と名乗る。僕僕先生と王弁の奇想天外な旅が、始まる。

ラノベというにはちょっと難しい?

何しろ古代中国が舞台だし、地名やら、当時の政治家の役職名やら、あるいは個人名やらが、ロシア文学とは別の方向で覚えにくい。・・・のだけど、ストーリーは十分にラノベの範疇に収まる感じなのでちょっとつっかかりながらも読めるといった所か。三国志とかを含めた中国史が好きな人は比較的容易に読み進められると思う。大学受験で世界史選択とかをしていた人にも幾つかなじみの単語なんかが出てきたりするので、まあ受験生は唐の時代の時代背景を学習するために読んでもそんなに損はしないかも知れない・・・ま、普通に勉強してから知識を補強するって意味でですけど。

僕僕先生・・・かわいいかも

うーん、「狼と香辛料」のホロをもっと余裕がある感じにしたと言えば何となく雰囲気が伝わるだろうか? もちろん「ホロ語」は喋ったりしないし、賢狼ホロよりさらにある意味超絶的な力を振るう事が出来るので、ホロのような微妙な脆さといった所はないのだけれど、十分に大人な女性で、王弁は簡単に手玉に取られてしまう。僕僕先生は仙人で、王弁の考えている事がどうやら手に取るように分かるらしいので、フシダラな事を考えている場合とか、完全にばれてしまう訳です。それでも僕僕先生は王弁の前で奔放に振る舞ったりして、王弁はムラムラするやら、イライラするやら・・・といった感じですね。しかもなんか許してくれそうな母性的な雰囲気も持っていたりするので・・・これがまた。

王弁も頑張ります

最初こそもうなんか色々と「面倒くさー」といった感じですが、僕僕先生と一緒に旅をするうちに王弁も少しづつ変わって行きます。積極的に行動するようになったり、優しくなったりと。「僕僕先生」は先生に導かれて王弁が自分のやりたいと感じる事を見つけ出していく物語と言えるでしょう。彼は先生に「仙人にはなれないよ」と言われてしまっているのですが、それでも人として頑張っていくようになります。

評価は難しい

ラノベとしては」評価星3つ。
どう考えても中高生向けに書かれた文章とは思えないですし。減点は読みにくさによるものです。あと、ラノベとしては物語全体に起伏があまり無いので「こら読んでてドキドキするわい!」みたいなものが無いっていう事もあります。
昔「後宮小説」という本がありましたが、あれを少し難しくした描写でしょうか。全体的に中国系の読みなれない漢字連発ですし、ある程度古代中国に馴染みが無いと結構読了が辛いかも知れません。私は大学受験時に世界史選択でしたのでまあまあイメージが湧いた部分があったので助かりました。普通の小説としては星4つ付けちゃうかな。
ラノベというカテゴリに収めるにはちょっと無理があるかも知れませんが、ストーリーは十分にラノベ的なので、ラノベ中毒者は読んでみる価値はありそうです。新しい発見とかあるかも。