刀語 第ニ話 斬刀・鈍 

刀語  第二話  斬刀・鈍 (講談社BOX)

刀語 第二話 斬刀・鈍 (講談社BOX)

刀の2本目:因幡の国へ

斬刀・鈍(なまくら)を求めて旅する二人。まあ旅姿でもうかなりのお馬鹿感が滲み出ている奇策師・とがめ鑢七花(やすりしちか)の二人だったが、目的に向かって確実に進んではいた。伝説の刀鍛冶四季崎記紀の刀の2本目を求めて因幡鳥取?)にやって来たのだったが・・・。斬れぬものは無いという斬刀・鈍を持つのは宇練銀閣。居合いの達人だという。

あーこういう本だよね

いや、最初の最初に七花の「キャラが弱い」という所から物語が語られるとは夢にも思ってなかったですね。なんだこの本、という唖然とする感じを見事に計算されて作者にされてしまっているなあ・・・という。1巻ではまだまだこの本の方向性っていうのがどうなるかはっきりと分からなかった所があるけど、この2巻で大体見切ったという事で良いかも知れない。
しかも、この物語の時代、この物語の場所においてはそう言った言葉は無いのだと「本の中でも言及されている」が、とがめはいわゆるツ○デ○(いや別に伏せ字にする理由はないけど)、かつ天然ボケ、かつ運動音痴のようだ。
七花は上で言及した通り個性が弱いとかとがめに言われる主人公だけど、それが魅力のような気もするし、元々半ば言いがかりのような感じだし、結局どうやらとがめと同じ位の馬鹿でかつ良く切れる「刀」だという感じ。キャラが薄いのがその個性のようなものなので、今後もきっとこうなんだろうなという感じでしょうか。
多分主人公・鑢七花の雰囲気は「化物語」の「阿良々木暦」に段々近づいて行くんじゃないかな〜という気がする。つまりツッコミ属性の人間になるんじゃないかという事ですが。

とがめ可愛いよとがめ

そういう辺り見事なキャラ小説ですね。化物語でもそうでしたが、彼女のキャラ立ちは見事なものです。今後この勢いで萌えポイントを増やして行かれたら一体どうすれば良いんだという感じになりかねませんね。イラストのイメージも可愛くて悪くないし、変な発言も良いし・・・。

「そう不機嫌そうな顔をすんなよ、とがめ」
「不機嫌そうな顔などしておらんもん!」
「もん?」

とっても可愛いのですが同時に、こうした「時代物という体裁をそれなりに作りつつも敢えて自覚的にそのハードルを時々飛び越えて『可笑しみ』を作り出しているこの作風」になじめるかどうかがこの本を楽しめるポイントになりそうですね。
ところでとがめですが、どこら辺が「奇策師」なんでしょうか・・・?

でもやっぱり高いよ・・・

値段の話ですけど。せめて1000円未満に押さえてほしい。
毎月出るのは嬉しいけどこれはちょっとあくどさを感じてしまうなあ。「化物語」の上下巻はまあ全く問題なかったけどねえ・・・行間も広くて読みやすいけど、この値段を読者に強要し続けるのはいかがなものか。月間○○を乱発するディアゴスティーニ商法みたいだ(しかし向こうの方が一冊辺りの価格は安いぞ)。
・・・まあ1巻がはけた量で2巻を印刷する量が大体推測出来るだろうから、コスト的に無駄が発生しないので出版社は美味しいんだろうけど、こんな事を他の会社までやりだしたら嫌だなあ。ちくしょう、ラノベオタの足下を見やがって!
これで後々上下2冊位の文庫になって出版されたりした日には、うん、講談社に殴り込みをかけたい気分だな(絶対にやりそうだ・・・)。

総合

星4つかな。リズミカルな西尾の文章は読んでいて楽しい。軽妙と表現するのが一番良いと思う。しかし一歩間違うと3つに落ちそうな所。今回は最終的な決着部分でひねりが足りなかったような気がするしね。
それでも楽しいのだけど、やっぱり高い・・・。