声で魅せてよベイビー

声で魅せてよベイビー (ファミ通文庫)

声で魅せてよベイビー (ファミ通文庫)

実にストレートな恋愛ものでしたね。

ストーリー

声優志望のヒロインと、ハッカーの主人公が、ある理由を元に「仮免」的につきあいだして、そして「免許取得」と至る訳ですが、その後お互いの本気やら夢やらが色々飛び出して来て、大人達の微妙な思惑なんかもあったりしてストレートには進まない訳です。つまり、「恋も夢も」って奴ですね。特に難しい前置きなんて必要ない本ですかね。

恋愛だけどサイバーパンクっぽいね

何しろ主人公がハッカーだ。恋愛のたとえ話で「回転運動の軸」を出してくる輩だ(個人的に悪くない例えだと思う)。表現がコンピュータ系の方面に偏ってしまった感じが作品全体からするし、付いて行けない人も山の様に出てしまいそう。
しかし私もまがりなりにも同じ畑の人間であったため、素直にその辺はすらっと行けてしまった。この辺りは作者が単純に理系か文系かの違いだ、表現の違いだというだけだと思う(ちなみに私は文系)。
恋愛と、人の距離を説明するのに

  • ハリネズミのジレンマを例に出して男女の仲を説明する奴
  • ニ連星の回転運動を例に出して男女の仲を説明する奴

その違いだけだと思う。本質は何も違わない。

時々描写が濃いよ・・・

ITネットワークに侵入したりする辺りの描写が微妙に現代的な真に迫っていて濃い。というか恋愛ものと考えるには無駄に濃い。個人的には好きだけど多分結構な量の読者を置き去りにする感じはある。これは、どうかな・・・受け入れられるのかな?
ツールの名前とかが出てこないだけでハッキングするなら私も同じような事をしそうだ。ま、もちろん準備も何も無いような状態で普通はこんな事しないだろうし、簡単に出来るようなものでもない(そうでもない場合も多々あるけど・・・)。こんなリスクも普通は負わない。というかこんな面倒な事しない。でもそれがいいんだ。ラノベだから。
まあ私の場合声優ネタとかコミケネタとか腐女子ネタは逆に全く知らないので、その辺はおあいこだって感じですかね。

シリアスな恋愛を書いているじゃないか

恋愛関係(引っ張り合う地球と月のような関係)にいるはずなのに、自分の星の自転運動しか続けられずに(あるいは引き合っているのに気がつかずに)、じれてもう片方の星がぶち切れてどっか飛んで行ってしまったり(つまり別れたり)、あるいは片一方の星の重力が強すぎてもう一方の星が振り回されたり(時には悪くない気分ですが)。
・・・まあ結局二人にとってそれが一番心地よければそれで良いんですけど、恋愛はその「引っ張り合う力の強さと距離感」を探るための「お互い手を延ばす努力」と言えるでしょうね。力学的に言えば、ですけど。
主人公はある時その引力に気がつきます。自分が、孤高のはずの独りぼっちの星のはずの自分が、一人の女の子の引力に引っ張られてぐらぐらと運動を始めた事に。

まあ私の恋愛解釈なぞどうでも良いですが

楽しめてしまいました。星4つあげます。ただし続編とか書いたら怒りますけどね。奇麗に終わっているからですが。
それとハッカー腐女子の恋愛の割には意外にオタクっぽさが無いですね。作者の描写が弱いというよりは、恋愛の前でオタも非オタも無いって事かも知れません。ああ、人の「恋する遺伝子の呪い」とでもいいましょうかね?
イラストは「とらドラ!」のヤス氏ですか、まあ、最高とは言いませんが無駄のないイラストかも知れませんね。

感想リンク

booklines.net  ウパ日記  ライトノベル名言図書館  まいじゃー推進委員会!  ラノベ365日  今日もだらだら、読書日記。  Alles ist im Wandel
腐女子(って言ってしまっていいのか!?)の熱い語りが読みたい方は、「今日もだらだら、読書日記」さんへどーぞ。良いですよ、濃くて。