モノケロスの魔杖は穿つ(2)

モノケロスの魔杖は穿つ〈2〉 (MF文庫J)

モノケロスの魔杖は穿つ〈2〉 (MF文庫J)

いやあ、段々面白くなって来たなあ・・・。

ストーリー

たった4人だけの魔術的な「王国」を作ってしまった「冠(ケテル)」の相を持つ立木ヒロの王国作り第二弾・・・と言いたい所ですが、そんな和やかなムードには全くなりません。魔術的な意味では「日本国」という存在が既に失われている状態が続いている現状で、関東に存在する小国・无耶志国(ムサシノクニ)は、この新たに生まれてしまった「王国」の存在と、立木ヒロの持つ力を持つ強力な神器カドゥケウス(伝令使の杖)に大きな危惧を抱いていた。
それこそ立木ヒロを「暗殺」してしまう事で王国そのものを無くす事は簡単なのだったが、その結果巻き起こる「問題」。神器カドゥケウスが失われてしまう事で大きな魔術的な空隙が生まれ、そこに大量の「魔」が引き寄せられてしまうからだ・・・彼らは、どうにかして立木ヒロの「王国」の持つ影響力を小さくしたいのだが、なかなかそう簡単にはいかない状況となっていた。

なんかいよいよすげえ

展開の予想が全くつかない事もそうなら、一体だれがヒロインなのかすらもはっきりしない所もスゴいし、今回「神器カドゥケウス」を使いながら全開戦闘を繰り広げる事になる立木ヒロもとんでもなければ、暗躍しまくる元・鏡の国のセシリアと魔術師の真名辺麻奈(まなべあさな)、相変わらず超人訓練を続けていて、今回のエピソードの主役とも言える長川律(ながわりつ)の全開出力戦闘もとんでもない。
他に出てくるキャラクターもなんかもう・・・なんと言って良いやら・・・すげえなこれ、という感じ。しかし実は読んでいて思ったのは「この作者にもっとページあげて、本が厚くなる事も了承してやって、やれる所までやらしてやれば?」って事でした。作者の脳内では完全に「この作品の魔法世界」が出来上がっている感じがあるので、せっかくなので第2の「終わりのクロニクル」みたいな一大年代記を作ってもらいたいなあ・・・って気分になりました。

上でも書きましたが

今回の主役は長川律と書きましたが、彼女ももうなんですかコレ、「一人で一個師団」とかになってしまいます。それでも「全体で見るとまだまだ小さい」と言う感じの話ですねえ。2巻にして既に「真日本怪獣 vs 海底原始獣 東海の大決戦! 〜食らえ必殺の本州パンチ〜」というサブタイトルの特撮映画状態です。いやあ、真面目にやっている所がまたたまらん。
これは面白くなってきやがった!
まあ怪獣大決戦みたいな事は書いていますが、このシリーズの面白い所はその設定のせいで「単純なパワーゲーム」に陥っていかない所でしょうか。全然違うと言えば違うのですが、何となくジョジョ的バトルというか、相性がモノをいう世界というか、心の固さ(信念の強さ)で優位性が変わるというか・・・。うーん上手く説明出来ないな・・・。

まあちょっと

ラヴが足りないね、ラヴが。そこら辺を今後(少しだけで十分ですが)補充してくれると良いんですが・・・今回はちょっとだけそんな匂い(フラグが立つ気配?)がしましたので、まあ次に期待かな〜。

でも気に入ったね

星4つにしてしまおう。
なんか濃い設定も楽しいと言えば楽しいけど、それ以上にキャラクターの個性が1巻に比べて良く書かれて来ていて、

  • 立木ヒロ(自分の事をあまり考えてないが頭は比較的切れるみたい。見ているこっちがポジティブシンキングになってしまう程の超マイペース。ある意味何でも屋。)
  • 真名辺麻奈(自分の損得しか考えてない。といいつつも結局ヒロを助けているので本音は一体どの辺りにあるのか? 結構野心家だけどその分気弱で失敗とかが嫌いっぽい。ちなみに寝る時は全裸。)
  • セシリア(どうもヒロの事しか考えてない。まあ1巻の流れからすればそんな感じか。ある意味思い込み型の危険人物でヒロの懐刀?)
  • 長川律(どうも隠された真実の事しか考えてない。というか人格的には一番普通かも知れない所がスゴい。王国内での戦闘能力ではブッちぎりのトップへと今後ひた走りそう。)

と、色々問題行動山積みキャラ達なんですが、それでも面白い。
今回から登場したキャラクターもなかなか良いし、ここは一つですね作者に・・・焦らずに・・・腰を据えて・・・じっくりと・・・この作品に取り組んでもらいたいなあ・・・と思いましたね。

強いて言えば

もっとゆっくりした展開にしても良いんじゃないかな。
無理に作品全体に勢いというかドライブ感(?)を出すより、説明を増やして、キャラの行動の動機をじっくりと説明して、重厚な話作りを心がけた方が良いような(向いている様な)気がするね。本の厚さが2倍にになってもいいから。・・・ただ、マニアックになりすぎると読者が付いてこなくなるのかなあ。それは心配だけどね。