オイレンシュピーゲル(1)

オイレンシュピーゲル壱 Black&Red&White (1)(角川スニーカー文庫 200-1)
オイレンシュピーゲル壱 Black&Red&White (1)(角川スニーカー文庫 200-1)白亜 右月

角川書店 2007-01
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おすすめ平均 star
star最高!
star命がけの悪ふざけ
star文章が斬新な感じ

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こいつはハードだな!

ストーリー

「機械化児童」
国際都市ミネアポリスにおいて政府の障害認定を受けた子供は児童福祉局=通称<子供工場>で機械化されて、労働児童(ミネアポリスでは11歳から労働可能なように法整備されている)となった少年少女達は才能を認められた場合、特殊転送式強襲機甲義肢——通称<特甲>が与えられ、治安の維持にあたらせた。
また、戦争などで文化の意地が困難な他国の文化を受け継ぐ様な形で「他国文化」の「名前」を付ける事によって保全金、ちなみに日本名を名乗った場合、毎月の保全金+社会保障が支払われるという。
そして「ケルベロス」はそんな機械化児童である三人の少女コードネーム「黒犬(シュヴァルツ)」「赤犬(ロッター)」「白犬(ヴァイス)」で構成されたMPB(ミネアポリス憲兵大隊)の小隊である。
そんな少女三人が治安維持とカウンターテロリズムのために活躍する・・・暗くて、えぐくて、血みどろで、救いが無いような、あるような、そんな物語。

ヘビーだなあ

本編は3話で構成されていて、「ケルベロス」を構成する隊員一人一人を主役とするような形で話が進む。
1話目は、「黒犬(シュヴァルツ)」=「涼月・ディートリッヒ・シュルツ」=<対甲鉄拳の涼月>を主役に。
2話目は、「赤犬(ロッター)」=「陽炎・サビーネ・クルツリンガー」=<魔弾の射手の陽炎>を主役に。
3話目は、「白犬(ヴァイス)」=「夕霧・クニグンデ・モレンツ」=<悪ふざけの夕霧>を主役に。
それぞれの過去と現在が語られて行く。しかし3人が3人とも陰惨で、ろくでもなくて、最低な過去。そしてそれと対比されるかのようにテロリスト達のやはり最悪で、醜い、敗北の過去が語られて行く。
正直もうなんと言って良いか分からないくらい、両者ともにろくでもなくて最低な人生。この話に正義とか善とかは無い。過酷で地べたを這いずるかのような生き方をしている二組の過去の敗北者達がいるだけで、「今は」勝ち残るために前を見ている奴と、「今も」後ろを見てやさぐれているという違いだけだ。しかし、その差が決定的なモノとなって、彼らの戦いの明暗を分けている。

面白いかどうか?

かなり読者を選びそうな作品ですね。
やたらヒロイン3人のために広報部が専用にデザインしたパンツやら色っぽい衣装やら裸体やらが結構しつこく細々と描かれて行くのだけど、それがまた実に退廃的かつ淫靡。その分そこだけ浮き上がる様にエロティックです。
独特な文体による描かれ方も人を選びそうだ。しかもストーリー的にシリアスなだけではなく、えぐいし、はっきりとした救いもない。生きるという過酷な戦いの事実が描かれて行くだけです。読みながら私の頭の中にはなぜか「欲望」という曲のワンフレーズが流れ続けていました。

グッド・ラックよりも
ショット・ガンがほしい
君を撃ちたい

Rescue Me Rescue Me...

・・・私はどっちかと言うとテロリスト寄りの人間なのかも知れませんね。

さて

星は3つにしておきます。個人的には複雑な心境ながらも結構楽しめた(?)。イラストもまあ悪く無いしね。