風の聖痕

また新シリーズに手を出しちゃったよ・・・。

ストーリー

<炎術師>一族・神凪。日本の影を支えてきた一族の術師が、何者かによって惨殺される事件が起こっていた。神凪の一族は<炎の精霊の>加護を受けて、妖物/魔物を猟る最強の一族。殺された炎術師達の殺害方法は風術によるものと見られ、彼らはその意地と威信に賭けて犯人探しを行い始めた。
ちょうど時を同じくして、数年前本家の嫡子として生まれながら<無能力者>として追放された一人の若者・八神和麻が<風術師>としての力を身につけて日本に現れたという知らせが届いた。炎術師達は和麻が復讐に現れたに違いないとして、和麻を捕らえようとするが、真実はより醜い過去を背負って彼らに近づいていた。
魔物・化物・人間達が入り乱れて織りなす、血みどろの戦いを描いたファンタジー作品。

キャラクターですが

八神和麻

時々人非人ですが、彼ら<術師>達の常識から考えればそれ程無茶苦茶な性格ではないという事が分かります。読み始めこそ自分を無能力者として捨てた家に対するいわゆる反発心から力を付けて帰ってきた若者(最近だと「影≒光」の主人公の星之宮光輝とかそうですかね)かと思っていたんですが、そんな脆さを持たない若者――つまり十分に大人となっていました。
どうやら読み進めて行くと、数年のうちに彼を変えてしまうだけの出来事が海外で起こったようで、そのために彼は家とは全く異なる理由で力を身につけた模様です。
敵に回れば女子供だろうと容赦なく殺したりしますが、それが時々いっそ清々しい感じすら受けます。中心がブレず、揺るがない感じとでも言いましょうか。何となくですけどその固さは、魔術師オーフェンオーフェンに通ずる所があります。タフですね。

「俺はもう神凪の人間じゃないんだ。用があるなら出向いて来い。そう伝えろ」

過去と完全に決別した強さがある感じですね。もう一つ。

「だから、ちょっと本気出しちゃおう」

飄々としながらも戦いの本質――「固い意思と力を持つものがいつだって強い」を忘れない、油断しない人間ですね。

神凪綾乃

スーパー女子高生で、血気盛んで猪突猛進、神凪家の正統な後継者だけが持つ炎雷覇(えんらいは)という剣を持つ優秀な炎術師です。和麻のはとこに当たるようですが、身近な人間に被害者が出てしまった事もあり、和麻を狙ったりしますが、それほど悪意がある訳ではなく、周りが見えていないだけでしょうか。まあそこが可愛いです。色々と発展途上ですね。

「逃げる気!?」

何となく策士相手にしたら途中で憤死しそうな位真っすぐ自分の力を信じているタイプですが・・・心がまだまだって感じでしょうかね。これからです。

神凪鰊(れん)

和麻の歳の離れた弟で、兄と違い炎術の才能にしっかりと恵まれていますが・・・ブラコンで外見も可愛いです。えー、上で引き合いに出したオーフェンの登場人物である「マジク」のショタ的魅力や可愛い弟パワーを最大限に発揮したタイプとでも言いましょうか・・・。神凪家において唯一といって良い和麻の味方で、無条件に和麻に懐く12歳の美少年ですね。

「……うっ……うぇっ……ひっ……ひん……」

・・・正直、このキャラが妹ではなく弟というのが惜しいですが、この際、弟でもイイかな〜?と思えてしまうくらいのあくどい可愛さが最大の武器かもしれません。・・・恐ろしい子っ!!

他の神凪一族と、その眷属

正直に言って、現当主や和麻の父を除いて、自らの実力と築いてきた地位に奢り高ぶった醜い連中ですかね。一枚岩ではないのですが、そこがまた色々悲劇的ではあります。身から出た錆とでもいいましょうか。内部の多くの人間が腐敗しきっている辺りが特に救われない。
そういう意味では綾乃や鰊は非常に貴重な汚れていないキャラですね。

正直

読み始めこそ「どうだかな〜」と思っていましたが、序盤過ぎた辺りから物語にグイグイ引き込まれてしまいました。主人公である和麻はラノベの主人公としては容赦がかなりないタイプですが、それはシリアスな現実を知っているからという事が明らかになるにつれて、そして反発心で生きている訳ではなくて別の信念を持って行動しているという事が明らかになるにつれて魅力を増して行きます。
ただ、人死にが容赦なく出る話ですので、そういう話が苦手という人は読むのを薦めません。

全体では

もうちょっとで星4つにするかなって感じの3つ。
序盤、和麻の性格を描写するための事件とかはもうちょっと別の話にしても良かったかなとか思わないでもないですが、それでも面白かった・・・ですが個人的に納都花丸氏のイラストがキライかな。動きが無い訳でもないんだけど・・・色使いとかかな? なんか古さを感じちゃったなあ。