疾走する思春期のパラベラム(2)灰色領域の少女
疾走する思春期のパラベラム 灰色領域の少女 (ファミ通文庫)
- 作者: 深見真,うなじ
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2007/02/28
- メディア: 文庫
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ストーリー
主人公の佐々木一兎(ささきいっと)が<パラベラム>と呼ばれる「精神力を銃器の形に物質化して戦う事のできる特殊能力」を持つに至ってしばらくの時間が過ぎた。城戸高校の映画部としてその姿をカモフラージュしている佐々木一兎とその仲間達ですが、今回はトラブルの種が向こうからやってきます。
早朝の部室に下着姿の幼女が倒れていた。彼女は自分の名前は愚か、なにもかもを忘れていて・・・というところから始まるヘンにコメディ、変にシリアスな学園異能ファンタジー作品。今回は映画部の合宿編です。
キャラクター描写がいいなあ。
主人公の一兎の程よい主人公感。なにしろ得意なのがタップダンス。それに結局のところ彼一人ではなにも出来ないのだけど、不思議と人をつなげる力を持っていると周りの人間は評している。
「なんていうかさ……一兎君が入ってきてから、ウチの部に変な活気が出てきたような気がする」
「変な活気、か。言いたい事は判る」
同じ事は、薄々尾褄も感じていた。
佐々木一兎――。
特に取り柄もなく、性格も暗め。いてもいなくてもいい男に見えるのに、映画部にいるとなぜか潤滑油の役割を果たす。志甫なんてすっかりなついてしまった。そういう意味では不思議な存在だった。
作中の二階堂勇樹と工藤尾褄の会話シーンですが「いてもいなくてもいい男(ひでえっちゃあ、ひでえ)」と思われながらも「潤滑油」とも表現されます。その源泉がなんなのかまではまだ判りませんが、一兎の持つ一番強い力が「環を完成させる」力なのでしょう。「チュードの儀式」。
ところで、尾褄は一兎を評するのにこんな表現をしたりしていますが、交渉で必要なら土下座だってだってできる少年でもあります。たらしというか・・・。実は彼は彼なりの「誠実」についての「マイルール」を持っているような感じがしますね。
勇樹は・・・他の女性キャラに足りない(何たる事!)、「護り」「癒し」「献身」・・・ま、女性に対しての発想としては古いけど、そういう所をもったキャラです。女装も似合うし・・・。
それからやっぱりヒロインの長谷川志甫のアホで可愛いところとか、見所満載です。厨っぽい所や、時折見せる自然な少女らしさ、奥深さ、天然性がまたいいです。正直、引用元に事欠きません。
「……なにやってんだ?」
「『シホはふしぎなおどりをおどった』」
「はあ」
「一兎、マジックポイントが下がって判断力が落ちたりしない?」
「……しない」
こんな女の子が身近にいたら、俺の青春時代も楽しかっただろうに・・・。あと口絵カラーに志甫のサービスカットがありますよ!いいなあ。
そして伊集院睦美の姐さんっぽいところとかも魅力的です。基本はバカな感じですけど実は非常に無駄に優秀な所とか。タフで行動力を持ち、天衣無縫かと思えば一兎などに対して時折教師のようにも、優しい姉のようにも振る舞ったりする奥の深い感じがいいですね。そして心に傷をもつ過去があると・・・。
今回新キャラの少女・シューリンも素敵キャラです。一兎と志甫を「パパとママ」と言ったりとか、スクール水着シーンが出てきたりとか・・・睦美とシューリンの同時の見せ場を引用しましょう。
「クダモノが二つ」
「この無礼者は誰だ! ぶん殴っていいか!」
睦美は意外と自分の巨乳を気にしているらしい。突然怒り出した。
シューリンについてはもうちょっと引用。
「……あんぱん……神」
「えーと……今度はもうちょっといいもの食おう」
シューリンを探すと、彼女は窓際にいた。カーテンの隙間から狭い庭を眺めて「スズメかわいや、かわいやスズメ……」と、ぶつぶつつぶやいている。今日もシューリンは全開で電波受信中だった。
イラスト含め、ロリーな人には*1たまらないキャラではないでしょうか?
ところで
主人公の一兎の名前の元ネタは「IT」だと思う。「IT」は確かドイツ語で「ES」。心理学用語で「無意識」「自我」といった使われ方をしたはず。この辺、「悪魔のミカタ」の「IT」もそこから来てますね。・・・もっとも「悪魔のミカタ」の方は、スティーブン・キングの小説の「IT」からかも知れませんが。
やっぱりですね
キャラクターの魅力が大きい。書ききれなかったけど他のキャラクターの描写も秀逸。星4つですかね。個人的にはプッシュしちゃおうかな。
シリアスとコメディの間を行ったり来たりする感じが実に青春っぽくていい。でもちょっと興味があるのは、リアルタイム中高生とかがこの本を読んだらどういう風に思うのかな〜って事ですかね。
1巻で出てきた<センパイ><乾燥者>そして<シンクロニシティ>などの登場シーンも多く、色々な秘密が明かされる話でもあります。
相変わらず作品としっかりとリンクした感じのある、うなじ氏のイラストはいいしです。壁紙とかどっかにないかな・・・。
感想リンク
*1:誰とは言いませんよ私は(笑)・・・何を今更?え?