BLACK BLOOD BROTHERS(7)

BLACK BLOOD BROTHERS 7 (7) (富士見ファンタジア文庫 96-11)
BLACK BLOOD BROTHERS 7 (7) (富士見ファンタジア文庫 96-11)あざの 耕平

富士見書房 2007-04
売り上げランキング : 46978

おすすめ平均 star
starBBBの真骨頂
star傷つき、倒れ、そして行き着く先は・・・・
star第二部のクライマックス!!

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ストーリー

「覚悟を」

龍王・セイの問いかけに答えた賢者イヴの血統・コタロウは、端的に彼らにこう答えた。それが彼ら、特区に生きる者達の行く末を暗示していた。「九龍の血統」の侵攻によって特区に吹き荒れる大破壊。特区に存在していた秩序が全て崩れさるなか、圧倒的に足りない戦力の中、苦闘を強いられる特区側。
ジロー、コタロウ、ミミコ、ケイン、セイ、ゼルマン、陣内——それぞれの思惑を胸に秘めながら戦いに走る彼ら。しかしザザの奸計は蛇のように彼らの行動に絡み付き、あらゆる面で上を行かれてしまう。
怒濤の攻勢を見せる「九龍の血族」の前になす術も無い彼らの行く末とは? 第二部の完結となる7巻。
生き残るのは、誰か。

九龍の血族は

まさに計画通りといった感じでしょうか。
一方的な蹂躙に近い攻撃を繰り出してきます。ケインですら太刀打ちできない程の力を有する古血(オールドブラッド)の戦士ダールや、暗殺技能を持った橙蜂、そして黒蛇カーサ、そこにザザの知略が加わって、堕ちるはずのない、堕ちてはいけない者達が次々と堕ちていきます。
そして九龍王の復活、さらにコタロウすら「九龍の血統」の手に。まさに局地的にみれば「九龍の血統」の完全勝利と言えるでしょうか。
・・・しかし、もし本当に彼らが吸血鬼とも人間とも相容れない存在であるならば、ここが彼らの頂点かも知れません。
滅ぼさず/滅びず/放置されるという選択肢だけは、彼らの未来にありえないからです。本当に人間と他の血統の吸血鬼相手に、捕食者と被食者の関係しか選べないのだとしたら——彼らは滅ぼざるを得ないでしょう。

特区側は

正直ズタボロです。
あらゆる点において後手後手にまわり、戦力を有しながらもそれを有効活用できない状況が続き、ついには決して滅びないと思われた重要人物達が命を落とします。未来に向かっての種を蒔きながら。
とても悲しいとしか言いようの無い出来事ですが、しかしこれは避けて通れない出来事だったでしょう。散っていく者達の散り際は悲劇的だからこそ、誰を取ってみても見事の一言です。

  • 未来に種を蒔いたもの
  • 未来に血を繋げたもの
  • 未来に希望を見いだしたもの

破壊の嵐の吹き荒れる中、彼らの消え行くさまを静かに受け入れるしかありません。

ジローですが

コタロウの危機に賢者イヴの血が暴れだします。vs ゼルマン戦再びといったその異常な能力を爆発させる事になりますが、それでもまだ足りません。それどころか、彼はある瞬間、コタロウ以外のものを選択してしまいます。これはジローの未来にどのような影を投げかけるのか、まださっぱり分かりませんが。

生き残った者達

葛城ミミコはやはり唯一の希望といった感じでしょうか。あらゆるものを受け入れつつ戦う彼女の姿は、まさしくイヴの血統の言葉にある「母なる海」に一番近い存在と言えるでしょう。
彼女に関わらず特区で生きてきた者達は特区を離れ、戦いの準備を始める事となるのですが、彼女の戦いは今後どうなっていくのでしょうか。
もちろん彼女だけではありません。力を付けるために禁忌に触れようとするもの、協力を仰ごうとするもの、導かれて去っていく者、色々です。この戦いはもう終わってしまいました。
全ては「次へ」。失ったものを胸に抱きながら、全てを未来へと。

さて

とりあえずこの話で第二部が終了する訳ですが、ここで一つの言葉を引っ張ってきます。ちょっと長い引用ですが・・・。

兄の話によると、自分は特別な存在らしい。
何しろ、太陽の下でも平気だし、十字架も怖くないし、ニンニクもへっちゃらな上、お風呂が大好きなのだ。兄とは何もかも正反対だった。
兄弟なのになんで、と尋ねると。
兄弟だからですよ、と兄は答えた。
兄弟だからこそ互いの欠点を庇い合えるように、互いに助け合って生きていけるように、二人の闇の母が知恵を絞ってくれたのだ、と。
頼りにしてますよ——
兄はそう言って彼の頭を撫でた。
そのときの兄の言葉を、コタロウはずっと忘れなかった。
人の生ではあり得ない、長い長い間ずっと。
片時も忘れなかった。




あの、うそつきめ。

さて、この言葉からすると、コタロウはちゃんと吸血鬼になる(成長が止まる?)みたいですが、それはともかくとしてこの言葉の中に含まれる、兄につかれた「うそ」とは一体何でしょうか? 何が、一体、どういう風に「うそ」になってしまうのでしょうか。
色々な推測が成り立ちそうですが、興味は尽きません。せめて、ジローのついた「うそ」が幸せな「うそ」でありますように。
・・・しかし、今になってこの言葉がボディブローみたいに効いてくるなんて、なんという話を作ってくれるんでしょうか。

総合

星5つです。
この話に星5つを付けないとしたら、一体どの話に5つ星を付ければ良いのか分からないくらいの出来です。
私は間違っても自分が物書きであるという認識がありませんが、それでもこれだけの作品を作り出してしまったあざの耕平の才能に対して嫉妬の念がわき上がる程ですね。素晴らしいの一言。
もし、この後出版される続編が駄作になったとしても、この7巻の放った輝きは消える事はないでしょう。こんな言い方は極端かも知れませんが、「ライトノベル」と言われる文芸作品の一つの頂点を極めたと言っても過言では無いと思います
・・・この作品を読了後、ちょっとした放心状態に陥り、他の本に手をつける気になれませんでした。沢山積まれてるし、読みたくて買った本ばかりなのですが、読了後の余韻に浸っていたかったために他の作品に手を付けなかった・・・と言えば良いでしょうか。

感想リンク

booklines.net  ライトノベル名言図書館  ウパ日記   ラノベ365日
ウパさんもBBBの泥沼に突入した模様です・・・。凄い魔力ですな・・・。