バレンタイン上等。

バレンタイン上等。 (MF文庫J)
バレンタイン上等。 (MF文庫J)三浦勇雄  屡那

メディアファクトリー 2006-01-25
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またやっちゃったかもしんない・・・。

ストーリー

クリスマスイブの大騒ぎをなんとか乗り切った高校生・五十嵐鉄平は、あのときの少女・古都ゆかりと仲良くなりつつあった・・・しかしある時を境に彼らの間には微妙な空気が流れるようになってしまっていたのだけど、鉄平にはその理由が分からない。
そんな時、また例の押し掛け異世界槍ヶ岳が現れた。今度は《バレンタイン交流企画『あなたのハートをゲットです』》とやらをやるらしく、またしてもなし崩し的に協力させられてしまうのだけど、途中から企画はおかしな方向に。異世界のテロに巻き込まれ、何故か爆弾処理に奔走するハメに!? の第2巻。

ああ、ダメだ

これは自分にあわないと確信しつつある2巻でしたね。
理由は1巻の時にも書いた通りだったりするんですけど、主人公は自主的に行動しているようでそうではなく、完全に操り人形になってしまっている所が実に楽しくない。「自分を操っている存在」について知らないのならそれは仕方のない事だけど、それに気がつきながらも踊らされてしまうのは見ていて不快。
今回は爆弾テロに対処するために爆弾を解体して回る話で、槍ヶ岳に半ば脅されるようにして逃げ道を塞がれてしまっている辺りがもうみっともない。

ちょっと変な所をピックアップ

A:本文から引用

『爆弾をしかけた。なんとかしてみろ』
鉄平はその挑戦に応えなければいけない。
尻尾を巻いて逃げるか、命を懸けてでも爆弾を処理して回るか。
ゆかりはとてつもない緊張感に胸が張り裂けそうになった。
——なんて、重いんだろう。

・・・これをちょっと書き換えてみます。
B:一部改変

『爆弾をしかけた。槍ヶ岳を殺せ
鉄平はその挑戦に応えなければいけない。
尻尾を巻いて逃げるか、命を懸けてでも異世界人の槍ヶ岳を殺すか。
ゆかりはとてつもない緊張感に胸が張り裂けそうになった。
——なんて、重いんだろう。

  • Aの方では天秤はこうなります。
    • 「爆弾が爆発して大勢が死ぬかもしれない」:「自分が死ぬかもしれない」
  • Bの方はこうですね。
    • 「爆弾が爆発して大勢が死ぬかもしれない」:「自分以外の人を殺さねばならない」
上記を踏まえてまず1点目

基本的に同じように命が天秤にかかっているはずなんですが、主人公の鉄平くんはBの場合どうするんでしょうか。槍ヶ岳を殺しますかね? なんか文脈的に殺しそうな感じですね・・・むしろ殺さないと腰抜けっぽいですね? 自分の命か他人の命かって違いだけで、同じ命なんですけどね? まあ、もしそうだった場合は違う話になるんでしょうけど・・・。
改変していないAの場合だったとしても十分に「自分の命を『自分だけのモノ』だと安く見積もる馬鹿な行動」なんですけどね。・・・ただし、それ(命は自分一人のものではない)を知りつつも「他の全てをなげうってでも達成するべき何か(信念とか夢とか欲望)がある場合」ならまだ許容できますけど(「悪魔のミカタ」とかね)。この話の場合、踊らされている指数が高過ぎて、信念もクソもないという感じですね。
コメディになりきっていれば感じない違和感ですねコレ。

上記を踏まえて2点目

そもそも上記のような書き換えを行ったのは主人公のおかれる状況がもの凄く理不尽だってことを強調したかったからです。
無茶苦茶理不尽なんです。どちらも捨てられないものを天秤に乗せた挙げ句、無理矢理選択を迫られるという状況がです。これは明らかにテロなんですからね。
まあテロ対策の基本(テロリストの要求は何も飲まない)はともかく、結局主人公の鉄平くんは片一方を選ぶ訳ですが、選択を迫る、その天秤を持ち込んだのは一体なんでしょうか? 真の敵は間違いなくその天秤の持ち主です。これはもちろん槍ヶ岳異世界人ですね。
主人公である鉄平くんはその、

  • 異世界人の運び込んでくる究極の選択を迫る天秤」=「自分と自分の関係者を無理矢理コントロールしようとするもの」

に対して戦いを挑み、潰さない限り、自分と親しい関係者の隣に「いつ爆発するか分からない爆弾がある事と変わりない」を理解しないという所が非常に馬鹿くさいです。

彼が真に戦わなくてはならない相手は、爆弾ではなく、爆弾を利用して自分たちをコントロールしようとする者たちなのです。
コレが異世界の番組だと言い張るのなら、異世界のテレビ局のプロデューサーとか、テレビ局、あるいは異世界という構造そのものに対して戦いを続けて挑むべきなんですね。爆弾とは戦った。でも自分の身近に爆弾を仕掛けさせる構造そのものは基本的に他の人任せで終わりにしちゃうって・・・それ、おかしくない?

私がこの話に不快感を激しく感じる所は正しくそこで、「主人公がこうした理不尽な選択が起きうる構造を単純に『のど元過ぎれば熱さを忘れる』的に許容してしまう事」なんですね。ニワトリなのかお前らは。1巻がそうでした。この2巻もそうです。

まあ

主人公の鉄平くんは踊らされている事に最後になるまで気がつかないんですが、ラストで気がつくので、そこから戦いはスタートすべきなんですが・・・いっこうに始まりません。おーい、誰かこのバカ何とかしてくれ。

あと

両親の邪魔が入った位で関係が怪しくなり、第三者がテコ入れしなければダメになってしまいそうになる恋愛関係なんてさっさと清算してしまえ、腰抜け共め。
・・・若者の無力さや、しかしそれ故の無鉄砲さや根性やらが試されて、そして美しいのは追い詰められた状況でこそではないですかね? 「イリヤの空、UFOの夏」とかその典型です。

総合

星2つだなあ・・・。
実は3巻までは買ってあるので3巻までは読む事が確定してますが、同じような展開が続くようなら見切りをつけます。

感想リンク

ウパ日記  booklines.net
巡回サイト様を見て回っても、こんなにムカついている人はいない模様。わたしゃ特殊なのかなぁ?
積読を重ねる日々さんからコメントを受けて、知らずにお話ししていました・・・不快感を感じている所が非常に近い模様です。