くじびき勇者さま(1)誰が小娘よ!?

くじびき勇者さま 誰が小娘よ!? (HJ文庫)

くじびき勇者さま 誰が小娘よ!? (HJ文庫)

表紙を見ると「くじびき勇者様」の文字が大きく、背表紙(でいいんかいな?)を見ると「誰が小娘よ!?」の文字が大きいという一種の錯乱を見せてくれるシリーズですかね。どんな意図があったんだろう・・・。ユーザーフレンドリーを意識した? そうかも知れないけど不思議。

ストーリー

大事な事は「くじびき」で決めるというかなりの謎宗教「ソルティス教」(ただし最大の信者数を持つみたい)を国教にした国「サクラス帝国」に一人の修道女見習いがいた。名前をメイベルという。
彼女は科学や数学、魔法を含めた学術分野に非常に秀でている分、修道女のくせして少しも神さまを信じていないどころか「アホらしい」とまで思っている。
そんなメイベルの所に、遠隔地で「デスペラン(絶望病:ドラゴン病ともいう)」が流行しているという話が入ってくる。調査隊も編制されてメイベルには特に関係がなかったはずなのに、何故か、何故か、何故か雲行きがどんどん怪しくなっていって・・・というコメディベースのファンタジー作品。

ファンタジー方面の

設定の適当さは「ゼロの使い魔」級というと分かりやすいですかね。
展開も同じようなご都合主義に染まった感じがありますが、適当なシリアス加減なので、やはりコメディ作品として読むのが正しいですかね。あまり真面目に考えてもしょうがないというか・・・。
そもそも「くじびき」で重要な決定が決まる宗教って・・・どうやって信者を増やしたのかが最大の謎。初期の布教活動がどんなモノだったのか興味津々です。
その反面、メイベルの話す科学や数学的な話(確率とか)は、結構うんちくっぽい説得力を持つ程度には書き込まれていて、少なくとも全力で文系の私は納得できてしまいました。

メイベルは

主人公としては珍しく「何でも屋」って感じですかね。
料理は超が付く程得意、生活力が高く、技術や数学、魔法に関しての知識と実行力に優れ、また勇敢。まさしく賢者って感じなんですが、あまり自覚のない研究者タイプの人間ですね。そういう人生を送っているので当然「おみくじ」なんて信じていません。

「そんな運命を天に任せた人生なんて願い下げだわ」

・・・彼女は見習い修道女という立場を利用しつつ、適当に礼拝とかを誤摩化しつつ教会の図書館とかを利用しつつ研究者になろうとしているんですね。・・・しかし悲しいかな、ありとあらゆる才能を与えられたと思われる彼女にも「くじ運」だけが無いという不運キャラですね。

ちなみに

まあすったもんだの挙げ句旅に出る事になる彼女ですが、必殺のくじびきソルティス教恐るべしという感じでもう無茶苦茶です。メイベルは「くじびき」に人生を大きく狂わされてしまう訳ですが・・・まあメイベルはメイベルで修道女の立場を利用していた訳ですから、もうなんというか「運が悪かった」としか言えないですねえ・・・。
女性キャラのパセラはなかなか良いですが、男性キャラはナバルクラウという目立ったのが出てきますが、ちょっと描写としては今イチかなあという感じですね。メイベルのキャラが奇麗に立った分、どうもナバル辺りのキャラクターとしての厚みが出なかったかな。特にナバル。こちらについては今後に期待としか言いようがないかも。もう一押しが足りません。

一段落・・・しません

本書は明らかに続きあっての話の構成になっていますので、一冊でそれなりの結果を出すタイプの本を求めている人向けではないですね。

総合

星3つ。
一応次も読んでみようかな?位の気持にはなりましたね。
ただ、これからどれだけこの本なりのオリジナリティーというか、見せ場を作っていけるかがポイントでしょうか。この1巻と同じくらいしか盛り上がらないなら多分3巻位で挫折しそうです。
牛木義隆氏のイラストは、そうですね、動きがあるという意味では結構いいんではないでしょうか? 上手いかどうかとかは分かりませんが、キャラのアップだけみたいなイラストは比較的少ないですね。

感想リンク

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