アンダカの怪造学(1) ネームレス・フェニックス
アンダカの怪造学(1) ネームレス・フェニックス (角川スニーカー文庫) | |
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これ、本当に10代の人が書いたの? というのが最初の感想ですかね。内容はともかく、文章や構成に浮ついた所が無いのでそれが一番ビックリです。
ストーリー
怪造学と呼ばれる学問がある。
「アンダカ(虚界)」と呼ばれる異界から人間とは異なる怪造生物(モンスター)達を呼び寄せ(怪造)して、研究したり、使役したりする分野の学問。それを専門に学習する高校に一人の入学希望者がいた。空井伊依(すかいいいより)という名前の少女は、怪造生物たちと人間が一緒に暮らせる世界を作るのが夢だという。
怪造学者(モンティスト)たちは怪造生物たちを「実験材料」のように扱うのが普通だったが、その発想とは真逆の「怪造生物たちは友達だ」という信念に動かされる空井伊依は、なんとか学校に入学する事に成功するのでしたが、それは波乱に満ちた学校生活の幕開けだった・・・。
アンダカは
有名なマイクル・ムアコックの「紅衣の公子コルム」とかに出てくる「リンボ界(地獄の奥底とか忘却界とか言われます)」に近い印象を受けました。この世界とは全く違い、奇怪な怪造生物たちがあちこちにおり、全く違う生態系が存在しているというイメージでしょうか。
この辺りの描写、特に難しい言葉を使っている訳ではないんですけど、説明の仕方に成功しているって感じですかね。危険の匂いや、荒廃、奇妙、奇怪——という「アンダカというもの」を読者に上手く伝えていると思います。
見た事無いから分かんないけど
怪造生物と人間のやり取りってあたりはけっこうポケモンっぽいんですかね? いやなんかそんなイメージをもったんですけど、その辺りどうなんでしょう。どうせ世代的にポケモンなんて見た事が全くないんで正直どうでもいいといえば良いんですけど。
空井伊依と怪造生物の桃子の関係はポケモンのサトシ(だっけ?)とピカチュウの関係に近いのかな〜なんて思ったりしたんで。いや、桃子、可愛いですよ?
「桃子ちゃん……」
「くるさだんちゅら」
「出来ると思うけど、大変だなあ……」(hobo_kingによる勝手な和訳)
「桃子ちゃん……、頑張れる?」
「くるさだんちゅらッ!」
「うん、桃子は頑張る!」(hobo_kingによる勝手な和訳)
これ(「くるさだんちゅら」)しかしゃべれません。・・・しかしそこがいいんだなあ・・・。変な生物っぽいものに弱い私としては、こういうキャラを出されてしまうと実に弱いのです。だから実はピカチュウとかが好きだという事はちょっと秘密です。ちょっとピカチュウは媚び過ぎだと思うけどね。
・・・脱線した。
まあとにかくこんな謎生物を異世界から召喚して扱うのが怪造学なんですね。
ネーミングセンス?
しかしなんだろうねこの名前の変な事。
主人公の空井伊依に始まって、その父の空井滅作(すかいいめっさく)、入学する学校が古頃(こころ)怪造高等学校、校長は宇宙木氷蜜(うつきひみつ)、同級生の親友に魅神香美(みかみかみ)・・・などなどなど。
やっぱりあれかなあ? 西尾維新辺りの影響なのかなあ? ・・・まあその辺の関係は良く分からないけど、こんな名前を登場人物に付けておきながら、作品世界と登場人物の名前に「浮いちゃってる」ような違和感が無いのが面白いですね。それだけ奇怪な物語って事かもしれませんけど。
ストーリー展開自体は
実は至極真っ当でオーソドックスな展開を見せてくれます。
怪造学に燃える少女と、それを導こうとする教師たち(一部例外を除く)、そして怪造生物たちとのふれあいと、危険な怪造生物との望まない戦い——そしてそこそこご都合主義、なんて感じでしょうかね。ラストの展開はちょっとどうかなあ?と思わなくもなかったですが「だって人間だもの」って感じが大きくてそれほど不快ではありませんでしたね。
こう、読み終わって考えてみると本当に突飛な展開は無いんですよね。でも読める、そして楽しい。色々小ネタを仕込みつつ、するすると読ませてしまいます。変なモノに対する笑いや、おかしさ、理解出来ないモノへの恐怖、失ってしまう悲しみ・・・当たり前の要素と言えば要素なんですけど、その辺りの散りばめ方が上手ですね。