アンダカの怪造学(4)笛吹き男の夢見る世界

アンダカの怪造学〈4〉笛吹き男の夢見る世界 (角川スニーカー文庫)
アンダカの怪造学〈4〉笛吹き男の夢見る世界 (角川スニーカー文庫)日日日

角川書店 2006-09-30
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ストーリー

前巻の事件で物理的に校舎がすっ飛んだ古頃怪造高等学校の生徒たちは、一時的にとはいえ、疎開のように他の学校に間借りをする事になってしまった。その名も「殻蛇怪造高等学校」。どうやら話に聞く所によると実技を重んじ、裕福な家庭を持った子供たちが入学する傾向のある学校らしいが・・・。
前巻の中心人物仇祭遊も今回行動を共にしているのだけど、殻蛇に移動するバスにあいのりする彼は、移動中に何か異常な気配を感じるのですが。到着した先は、噂以上の奇怪な学校。
何か重大な違和感を感じつつもその正体が掴めない古頃生徒たち。そして「怪造が誰一人できなくなる」という異常事態も発生。不安に駆られるみんなを安心させるために動き出す空井伊依(すかいいいより)ですが、真実は想像以上にとんでもない所にあったという。その他色々な陰謀渦巻く第4巻。

色々張ってきた伏線が

幾つか消化されつつありますね。
戦橋舞弓のアレとか、仇祭遊のアレとか、魅神香美の変な行動とか、怪造学会で蠢く色々な思惑とか、例の《肉体道楽(ヴェクサシオン)》の奇怪な行動やら、闇宮姉弟の過去とか、どうやら色々なものがアンダカと「アンダカ内の勢力争い」と「人間と怪造生物の違い」収束していく気配がありますね。

新キャラまたしてもてんこもり

なのですが、際立って目立つのが何人かいますね。
そのうちまとめエントリでもつくっていかないとわけ分からんという事になりかねない位の勢いで新キャラが出てきますが、それらがまたキワモノぞろいですね。

戯小路アルテ

ピックアップ究極変態。

「そう! 弱い生き物に存在価値はない! そして、わたくしは強い生き物! だから世界に存在する価値がある! 意義がある! 資格がある! 価値がない意義がない資格がない弱い生き物は、強者が生きるのに迷惑だから残らず滅べばいいのですわ!」
戯小路アルテの、それは空井伊依の思考を真っ向から斬り捨てる思想。
「そうして選民された世界に、最後に立っているのがわたくしだけでも、わたくしは、誰もいなくなった地球の真ん中で高笑いしてみせますわ!」

これはタダ者ではない。
で、ちょっと傷ついた伊依は舞弓に相談しちゃったりするんですが・・・この時の舞弓の切り返しが実に良いですね。「強さ」を「お金」に置き換えた例え話をしてくれるのですが、強者である舞弓であるからこそ至る思想でしょうか。

「私はその戯小路とやらを知らぬが、そういう思考をもった輩は危うい。お金が欲しくて堪らない人間は、あらゆるものを売り払い、また他人の財産を盗み、あるいは無計画に借金し、そのくせ、いくらお金を手にいれても満足できず——周囲と、己に、破滅を呼ぶ」

舞弓はアルテを「目的を見失った愚か者」と斬り捨てますが、あながち間違った思考ではないですね。今回は伊依とアルテの対決というイメージがありますが、その他の色々な対立が描かれます。

鬱宮嘘

怪造学教授の一人で、ラビュリントスと呼ばれる怪造学界の裏研究の頂点に君臨する存在ですが、人間ですらありません。それはともかくその言動がかなりアブナい。

「やだっ! やだっ! やだ——っ! 外は怖いのぉぉぉ! 他人になんか会いたくない! 誰かと喋るのも嫌! 嫌! 嫌! 嫌!」

どうやって教授の地位を手に入れたのかその過程に非常に興味が湧かなくもないですが、とにかく彼ら彼女らを初め、怪造学の世界は伏魔殿状態です。

所で

今回の騒ぎの最中、教師たちはどこにいたんだい!?

総合

星4つ。面白いですよ?
しかしですね・・・うんうん、この作品に感じていた違和感が正体がなんとなく分かりました。
この作品に出てくるキャラクターは主人公を始め「欠落が大きすぎる」んですね。
上記で取り上げた二人を例にとればそのままわかりますが、かなりおかしい、相当おかしい。欠落し過ぎのため人間の渋みといったものを感じない。「記号」っぽさが強いのですね。悪く言えば「一カ所を濃くするために他が薄い」。変な話ですが、欠落の多さ故、男女人獣問わずそこそこ萌えられます
・・・流石に巻数を重ねて主役級キャラクターたちに厚みが増してきつつあるので良さが増してきていますが、それでもまだまだ足りないですね。
エナミカツミ氏のイラストはもう特に文句無し。このままでゴー。

感想リンク

booklines.net  ラノベ365日