アンダカの怪造学(5)嘘つき魔女の見つめる未来

アンダカの怪造学〈5〉嘘つき魔女の見つめる未来 (角川スニーカー文庫)
アンダカの怪造学〈5〉嘘つき魔女の見つめる未来 (角川スニーカー文庫)日日日

角川書店 2006-12
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ストーリー

新築された古頃怪造高等学校は、しばらく前の事件で亜玉高等学校の生徒たちも編入したりしての完全なる新生の古頃怪造高等学校としてスタートする事となった。
で、学校内の結束を強めるためかなんだか分からないものの、最初のイベントとして文化祭が開かれる事となったのですが、この文化祭は大きな戦争へと発展していく! 「代理戦争」——アンダカの中で進んでいる”憤怒大公”と”悲哀大公”の二大勢力の行方を決める戦争が、この文化祭を利用して行われる事になったのだった。怪造学会、アンダカの勢力争い、そしてヴェクサシオンの暗躍などの思惑が絡み合い加速していく物語。
「怪造生物は友達」と主張し続けている空井伊依(すかいいいより)はこの自体を収拾できるのか? の第五巻。

伏線の状態が

さらに色々ときな臭くなってきますね。
特に《肉体道楽(ヴェクサシオン)》の誕生に関わる重大な秘密の一端が明かされる事になります。果たしてヴェクサシオンとは一体なんなのか? どうもアンダカの闇は怪造学会の闇に通じるものがありそうですね。さらにそこに深く関わっていると思われる重要な登場人物たちがさらに新登場してきます。

常に変人の新キャラ

うーん、まともなキャラの方が目立ちそうな作品ですね。

無城鬼京(むじろききょう)

女装した天の邪鬼的不良少年。
夢も希望もありそうですが、とにかく自己表現の方向性が捩じれていて、人が右向きゃ俺左、という。しかしいわゆる反体制の存在と言うよりは「物事は壊してかき回した方が面白い」という思想の持ち主のようですね。・・・・中盤では伊依にある大事をやらかして伊依の脳みその血管を一気に100本位ブチ切ってくれますが・・・。

「貧乏暇無し油を搾るは痩せ蛙ゥッ、己の鱗を売ればいいのさ蛇の悪徳高利貸しィッときたもんだ! イエイ! この世で最も偉いのは!? それはこの俺と銭よ! お金様よ! 金の炎に灼かれた浮世を、銭の火花で盛りあげるゥッ——」

発言だけみると単純守銭奴みたいですが、利害関係に関わらず信頼や友情が存在すると考えている伊依の良く口にしている「怪造生物は友達」という事を「奇麗事が嫌い」という方向に斬り捨てるタイプです。

虚島罠奈(こじまわなな)

ザ・鉄仮面伝説。
仮面の下は相当な美少女と言う話ですが、ある時を境に仮面をつけて人前に姿を現すようになります。基本的に人畜無害ではありますが、その笑顔は・・・。という少女ですかね。思想的には伊依に結構近い所に居るようです。

山田魔夜(やまだまや)

保健室の常連。
以前もちょっと顔は出してたと思いますが、本格登場は初めてですかね。広所恐怖症との事で、常に着ぐるみを着ていないと不安で仕方がないという少女。保険室の主であるハッピー・クウネル教諭を時々磷付にしたり、殺害一歩手前まで追い込んだりしているのですが、基本的に善人のようです。着ぐるみですけど。

意外に評価したいのは

今回は怪造生物同士の争いとか、怪造の能力によるパワーゲームに終わらなかった所が良かったですね。まあパワーゲームが嫌いという訳ではありませんが、それが続くと飽きるのも事実でして、そういった展開に陥らなかったのは単純に評価したいです。
力ずくのようですがこれは思想の争いで、一件妥協点や共通点を見いだせないような関係において、それらをどうにかして伊依が見つけ出そうという話ですね。伊依は今回の戦いを通じてまた一つ大きくなったのではないでしょうか。

ちょっと減点なのは

またキャラにそういう裏を付けて「ちょっと正当化/感情移入できちゃう展開」にするのかい?って所。
三文湯煙ミステリーの犯人の告白シーンかよオイ!って事ですかね。その辺りは読んでもらうしか無いんですが・・・。確かに誰にだって今の自分に至るまでの過去があって、秘めた目標やら真実やらがあるのは事実ですけど、毎回同じ様なタイミングで同じ様な見せ方なのでちょっと飽きてきてます。

総合

星4つ。基本的に好きですかね。
まあ無難な出来。色々なきな臭さも巻が進むごとにアップ・・・なんですが、今イチ盛り上がりに欠けるのも事実。
おそらくその理由としては「未消化の伏線は山ほどあって、適度な緊張感はあるものの、基本的に『1冊=1話』という姿勢を貫いているせい」だからでしょうけどね。これはこれで見方を変えれば魅力に他なりませんので、人それぞれといった感じでしょうか。

エナミカツミ氏のイラストは山田魔夜の登場シーンと「時かけ伊依」が特に良かったですかね。

感想リンク

積読を重ねる日々  ラノベ365日  booklines.net
他の感想系のブログを見ますと、かなり読了後の感じ方に開きがあるようですね。私はそれなりに面白がって読んでいますが「積読を重ねる日々」さんは結構バッサリと斬り捨てています。しかしその「バッサリとやっている所」に妙に納得できる所がありますね。