とらドラ・スピンオフ! 幸福の桜色トルネード

まあ「とらドラ!」の名を冠してはいても所詮はスピンオフ(副産物/派生物)、つまりは外伝という訳だからそのパワーダウンも致し方無かろうて、と思っていたので手を伸ばすのが遅れたこの作品ですが・・・。えーと、うーん、困ったな・・・程よく丸めて言うにはどうしたらいいかな・・・。

よーし、OKOK、分かったよ。
まず落ち着いて第一の問いを発してやろうじゃないか諸君。この俺が代わりにな?
・・・つまり皆の頭にある根源的な問いかけは一つだ。
この本を書いた作者が本当に女性かどうかってことだろ?
あ〜ん?

ありがとうDJマイケル! 言いにくい事をズバリ言ってくれて! ・・・とにかく簡単にいうと竹宮ゆゆこの男性ホルモン焼きがスゴい作品ですね。
雲竜型の土俵入りが必殺技なんではないかという竹宮ゆゆこを舐めていました! すみませんでした!
なんですかこの少年的妄想の爆発力? そりゃ焼き肉くらいはペロリと平らげないととこんな本書けませんって。きっとテカっている(はずの)TゾーンやUゾーンの脂は心の汗。それは青春の証し
・・・でもオデキが出来た場合はもう「にきび」と言えないお年頃です・・・よね?(褒めているんですこれでも)

ストーリー

この作品は、「とらドラ!」本編にも出てくる生徒会の庶務を受け持つ天然不幸体質の少年、富家幸太の幸福と不幸の竜巻現象を綴った物語。つまりそれは、恋。上り詰めたかと思えば真っ逆さまな気分でひっくり返る、それが恋。
そのお相手は狩野さくら。美少女なのに「兄貴」とまで慕われる生徒会長狩野すみれの実の妹である。
不幸体質のおかげであらゆる運を逃しまくっている幸太は、やってきた春を満喫できるのか?というストーリー。

キャラクター達は

とらドラ!」本編に顔をメインで出しているのは北村祐作一人ですが、本編の見せ場の多いキャラは本編で語られない部分を補うように、そして新キャラや登場回数の足りないキャラはちゃんと新規で書き綴って、そのどちらもが破綻の無いレベルでちゃんと描かれているように思いました。上手いと思いましたね。

富家幸太

本作の主人公ですが、不幸体質という特性で見事に自分と周囲に色々なトラブルを起こしてくれて、その反発と言って良いのか分かりませんが、実にストレートに恋に邁進してしまう所はつい、こう「頑張らんかい!」と応援したくなりますね。
頭も容姿も悪いとは言えないのに(むしろ良いと思われる)、基本的に度重なる不幸から自分の幸運を信じられなくなっているネクラな野郎ですが、しかしそれでも今回の恋を切っ掛けにちゃんと成長していってくれます。
物語後半では畳み掛けるように大転回! 青春的いじましさと至らなさの乱舞! ああバカだな・・・しかしだからこその大噴火が相変わらず素晴らしい! いやあ、いい少年だ。

「いいんだ、緑でいいんだっ! 俺の事はいいんだあ! いいから——ご……っ」

本編を読んでいないと「緑ってなんだよ!?」とさっぱり分からないと思いますが、これは名言です。間違いない。青春だからこそ口走れる意味不明感と疾走感。素晴らしい。なんとまあ馬鹿で、それでいて愛おしいではないか。

狩野さくら

とにかく純真で元気、夢見がちで信じがち。しかし幸太の正反対のように頭(成績)が実に悪いという天然系少女です。人の悪意とかを全く信じないのではないかという少女でとにかく全身から若者オーラ出まくりですが、その副作用というか、成績の悪さ以上に大きな欠点があります。姉(兄?)の狩野すみれをして頭を抱える欠点です。

「……私からおまえにさくらの面倒を押し付けておいてなんなんだが……」
すみれらしくもなく、歯切れが悪く口ごもるのだ。
「……エロい妹で、申し訳ない。自覚がないんだ、あれは本当に。……おまえなら、妙な勘違いをするようなバカじゃねえってわかっているが……一応、姉として謝っておく」
「いや、別に……謝ってもらうようなことじゃ……っていうか、会長から見ても、エ、エロいんですね」
「ああ、エロい」

どんな評価を下されているんだ狩野さくら。むねむねがたわんたわんで見たり見えたりすると男共の脳みそはブブブと震えるらしい。それでも着ちゃう切れ込みの深いVネックにミニスカート。フェロモン全開
・・・でもエロを上回る可愛らしさがあるんですね。そこが良いんだな。

「幸太くんがわからないなら、私が教えてあげる! 幸太くんは、不幸体質なんかじゃないっ! 違う、絶対に、違うっ!」

こんな嬉しい事言われたら・・・そりゃ恋にも落ちますよね。

ちなみに

幸太とさくらの会話はことあるごとに何故か「少年少女がしてはイケナイ事」をしているかの様な感じになります。・・・微妙に似たもの同士。

狩野すみれ&北村祐作

とらドラ!」本編でもイラスト付きで出てきたりするすみれに、本編に欠かせない存在の北村ですが、この二人が実にいい味を出しています。
すみれは本編だと本当に豪放磊落なオヤジか兄貴か・・・って感じですけど、妹のために色々と駆け回ったり気を使ったり、あれやこれやと気を回したりといった細かい心遣いがいじらしい少女ですね。
北村は・・・あー、「とらドラ!」本編に輪をかけて馬鹿ですね。というか最悪な類いの馬鹿です。

「……北村先輩。脱がないで下さい」
「いやしかし、ちょうど部活終わりの時間でシャワーは混んでるし、俺は汗臭いし……前に会長に、臭くて叱られた事があってな」
「ここ、便所ですよ!? 便所でパンイチになる人がどこにいるんですか!?」
そう怒鳴った瞬間、きょとん、と眼鏡の奥で目を丸くした北村祐作の下半身から最後の一枚までがつるりと下ろされ、
「すまん、俺は便所で全裸になれるような男なんだ」

・・・なんか本編の大河が可哀想になってきた。間違いなく、変なフィルター通して北村を見てるね。まあそれ以外にもこの二人の組み合わせは見所満載なんで必見です。

この短編集ですが

始まりから終わりまで笑いながら読み通せます。面白いですね。「わたしたちの田村くん」が好きな人はこの本は購入した方が吉ですね。全く違うキャラクターたちが出てきますが、青春感は近いんではないでしょうか。おすすめ。
ラストシーンは結構グッと来ましたね。こんな所でこんな風に伏線が伸びてくるとは、やるな、たらスパ。

オマケ(笑)の「とらドラ!」短編

スピンオフ内での時間で言えば、幸太くんが入院(そんな事までしとるんかい)の時期の竜児と大河の話ですね。
まさに恐るべきは高まりまくった不幸体質でしょうか。被害者には微妙な同情を禁じ得ません。

総合

星4つ。
・・・しかし実の所特にケチの付けどころは無いです。
じゃあなんで4つ星なんだよ!? というと「まああくまで外伝で短編集だから」って事が1%位と、残り99%が「チクショー! なんだかとってもチクショー!」というぐるぐるとした何かです。もっと簡単に言うと幸せトルネード被害者への妬みで星一つ減。
そんな理由で星の数下げるなよ!という声も聞こえそうですが・・・だって、だってさッ! 俺の青春には桜色のトルネードは来なかったんだッ!
ちなみにヤス氏のイラストですが、本編内のさくらとヤギのイラストが好きです。何故かと言えば・・・ヤギが微妙に恐いからという事にするのはどうかな? うん、パンチラのせいではない。・・・しかしその笑顔でその素晴らしき布地・・・私なら致死量です。確実に。

感想リンク

今日もだらだら、読書日記。のうららさんも見事にツボったようですね。女性読者もやられるこの熱エネルギー! 本当、毎日焼き肉食ったりしてこその作品ですかね〜。ちなみにコウさんも私と同じタマシイの叫びを発しています。会った事もありませんが、ネット越しに我々の青春に苦い乾杯を。