マテリアルゴースト

マテリアルゴースト (富士見ファンタジア文庫)
マテリアルゴースト (富士見ファンタジア文庫)葵 せきな

富士見書房 2006-01-20
売り上げランキング : 6974

おすすめ平均 star
star主人公至上、最高の○○○な主人公
star皆さん、読んでみましょう。
starさらりと読めて、後味すっきり

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なんか完結したらしいという事で手にとってみました。

ストーリー

主人公の式見蛍(しきみけい)は普段から何となく「死にたい」と思っている少年。それは理由も何もある様な無いような衝動だったのだが、でも痛いのも苦しいのも御免だった。とにかく生きているのが面倒くさい。しかしそんな彼は交通事故で入院する事に。
そして目覚めると、彼は「普通の人には見えないもの」が見えるようになってしまっていた。それはつまり「幽霊」。しかも彼は幽霊を実体化(触ったりする能力)すら身につけてしまっていた。そんな矢先、記憶を失った一人の少女幽霊に取り憑かれて、彼の人生はあらぬ方向へ進み始めるのですが・・・というシリーズの第一巻。

読む人によってはここより下は『心の安寧を損なう酷評』になっている可能性が高くなっております。

ファンの人は要注意! この感想が地雷です!

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ううーん

他の感想系サイトの評判を見てから取りあえず読む事を決めたのだけど、主人公を気に入れるかどうかでかなり読書中の楽しさが変わってくるのではないでしょうかね。まあ地雷の可能性を考慮しつつ読み始めた訳ですが、結果としてやっぱり地雷でした。

「ただ、なんか、もうウザったいのだ。面倒くさいのだ。生きることが、生活することが、何かを感じることが……」

理由はハッキリしないけど、僕はもうなぜか生きることに「飽きて」しまっているのだから。

自分の思想が罰当たりなことは百も承知しているにも関わらず、しかしどうしようもなく、奥底から湧き出てくる衝動として、死にたいのだ。

主人公の「死にたい感」についてはかなりのページを割いて、結構ねっとりたっぷり説明してくれています(というかネタがネタだけにちゃんと説明しないと反感もスゴそう)。いずれにしても、その辺りを飲み込めるかどうかで作品の評価が180度変わるでしょうな。
ただ、個人的にこれらよりもっと気になった描写がありまして、

ふと、いつもの感覚に……まるで自分がモニタ越しに世界を観察しているかのような感覚に襲われた。

モニタ越しの世界の感覚。平和な世界を客観的に観測しているような心地よさを感じ、《死》っていうのがこういうことだったらいいな、なんて夢想する。

・・・引用箇所の括弧括りが少ないことから、とにかくキャラクターの一人語りの多い作品だと言うことも分かるかと思いますが、それ以上に読み進めていくに従って、この主人公がちゃんと実在する精神疾患離人症性障害になっていると思いました。いわゆる解離性障害の一つですね。もちろん医者じゃないからなんとも言えないけど・・・。正直この辺は実際に詳しい人の意見も聞きたい所ですが。
どうでもいいから、精神科行って診察をうけろ。話はそれからだ。
というコメントだけでこのキャラクターに対するコメントは十分だと思います。

何が言いたいかというと

幽霊見えるとかのうんぬんより先に、普通の病気の話だと思われるから。
うん、周りの人間も少しその辺り調べてやれよ。うんうん、コイツにへんな片思いとかしている場合じゃなくて、コイツを普通に学校なんて行かせている場合じゃなくて、即医者につれていけ。・・・作者もこの病気の実在を知っていて、さらにそれを参考にしているのは十中八九間違いないと思う。
マイナーだけど実在する精神病を主役キャラの性格として持ってきてしまうのは・・・モラル的にどうだろう?
なんだか・・・それは・・・マズいんと違うかな?
「じゃあ有名な精神疾患ならいいのかよ?」って話もありますが、それはまあ・・・昔から有名で、普通の人なら知っているであろう解離性同一性障害(適当に言えば多重人格)とかなら「あくまでネタ」として理解されやすいけど・・・。
どうやら話が進むと主人公がこうした気持ちになることに理由がつけられるみたいなんだけど、それにしてもなあ・・・この1巻の段階では何の説明も無いし・・・うーん、なんだか実際にこの病気になったことのある人にマジで怒られたりしないんだろうか?

もういいか

とにかく主人公のこの性格に話は尽きるので、これが受け入れられるかどうか、ですね。個人的には全くシャレにならないキャラ作りだと思う
他の部分はまあオマケだなあ・・・ラストあたりの展開はとにかくやっつけ仕事感が強くてちょっと「ハァ? 真の力覚醒系?」とか思ってしまいましたし。

総合

星1個でお願いします。
おお、すっごい久しぶりだ。
変態やおかしいキャラが出てきても全く不思議でないのがライトノベルという分野ではありますが、それにしても程度って物があるかなと。「これはマズいだろ感」を全力で感じてしまいました。
これがまだ、特徴をもの凄く濁したり、別の変態チックな特徴を混ぜ込んだり、完全に冗談めかしていたりして完全にギャグの一部として埋没しているならなんとでもなりましたが・・・ここまでストレートに特定の病気をモチーフにしたと思われるキャラクターを使ってしまっているのは・・・これはもう、単純にモラルの問題だと思います。
あとがきでも、編集部による解説でもそのあたり一切触れられてないし・・・。いいのかそれで?
イラストはてぃんくる氏ですが・・・典型的な男が描けないイラストレーターですかね。主人公の外観が性別不明でちょいキモチ悪いかなあ・・・。ギャルゲ風?

感想リンク

booklines.net  ラノベ365日  ライトノベルっていいね
比較的好意的な意見が多いのに驚きだったりして。ま、あくまでラノベだし、といえばまあその通りですが。