人類は衰退しました
- 作者: 田中ロミオ,山崎透
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2007/05/24
- メディア: 文庫
- 購入: 37人 クリック: 621回
- この商品を含むブログ (569件) を見る
ストーリー
とにかく人類が衰退した未来。
人口も減り、技術も失われた未来世界。人類は緩やかに滅びの時を迎えつつありました。いまや地球は人間の物ではなく、妖精さんたちの住む世界で、元の人類は「旧人類」とでもいう位置となっていました。
主人公はそんな世界で最後の学校教育を収めた少女。卒業式で盛大に泣かされた挙げ句、故郷に「調停官」となって帰ってきます。「調停官」のお仕事は、妖精さん(身長約10センチ、三角帽子、ちっこい手足)と人間の間を取り持つ仕事なのですが、はて、帰ってきた故郷では「調停官」の仕事などただの閑職に成り下がってしまっていたのですが・・・。
なんとも
ゆるゆるな感じが全編を覆いつくしていまして・・・。
主人公の程々に適当な性格と、妖精さんたちの謎で適当な生態とでたらめっぷりに加えて意味不明っぷりがもの凄いです。
妖精さんたちの生態ですが・・・ほぼ謎に包まれていまして、大まかに主人公が体験した所によると・・・。
- ちっこい
- 昨日の事は今日は忘れる
- 数が集まると理由不明の高い技術力を発揮したりする
- ご飯は食べないらしいが、お菓子は好きらしい
- 場の「楽しい度」が上がると集まってくる傾向がある
- とにかく存在そのものがいい加減
- すぐ失禁する
- ビックリするとダンゴムシのように丸くなる
などなどです。
人間と話は出来ますが、とにかく適当、ただし適当なわりには数が集まるとスゴい物を作ったりして・・・生態そのものが完全に謎で意味不明です。
まあ
話や妖精はとにかくとして、やはり特筆すべきは独特の語り口ですね。
主人公の少女が職場で自分の上司(ちなみに自分の爺さん)との会話をちょっと抜き出しますがが・・・。
「わかりました、これも気楽な事務稼業の代価ということで、職場でも深窓の令嬢戦略を維持していきます」
「その戦略にはどういう意味があるんだね?」
「無口な人として認識されるので、あまり話しかけられなくなります」
「つまらん人生だ……」
その後、前任者の仕事の資料が無いかと聞いて、爺さんは答えます。
「なんか、死んだ」
万物は生滅流転しています。
ついでにどさくさまぎれにある事をやらかした時の主人公のモノローグ。
魔が差したのです。
差してしまったのです。ぶっすりと。
気がつけば、自室の私の机の上に三人の妖精さん。
全員、なぜか正座です。
そして全員恐怖に震えています。
「ぼく、たべたらだめですよ? おなかこわしますよ?」
「きいろいちごうとかてんかされてますゆえー」
・・・とにかく平仮名オンリートークの妖精さん達です。ゆるゆる。てれてれ。そんな感じでかなりゆるゆるな感じで話が進みます。
妖精さんの謎に迫る!
というタイトルがつきそうな展開なものの、緊張感はゼロ。
子供が川口探検隊シリーズのマネをしている感じですか。妖精さんはゴム動力でなんだかビックリする物を作ったりできますが・・・なんだゴム動力って。「こち亀」で数十年前に「ゴム動力の掃除機」というネタ以来でしたので、笑わせてもらいました。
まあとにかく何でもありなようでなんにも無い話で、次の展開を楽しむというよりは、この異様なまでのゆるゆる感と、田中ロミオ氏が紡ぎだす独特のイメージと言葉遊びを楽しむ本ですね。なんだか絵が飛び出す本みたいなオマケ要素がある絵本という感じの遊び心がいっぱいです。
総合
星4つ。
初田中ロミオ氏ですが「あー、なるほど、固定ファンがつくのは頷けるな」という感じでした。なんですか、このゴムの伸びきったパンツの様なユルユル感。読んだ事の無い人は、それを楽しむだけのために読む価値がありそうです。
星が一つ減っているのは、後半になって氏独特の語り口に慣れてしまうとちょっと意外性という楽しみが減少して、ちょっと失速した感があったからですかね。それでも最後までするすると読ませてしまう辺りは上手いです。このリズム感は才能かも知れませんね。
イラストレーターは山崎透氏ですが、作品の雰囲気に非常に合っていたように思えて、好感触でしたね。
感想リンク
灰色未成年 Alles ist im Wandel ライトノベル名言図書館 まいじゃー推進委員会! booklines.net ただ、それじゃ終われないでしょ! ウパ日記 ラノベ365日 MOMENTS 積読を重ねる日々
「ただ、それじゃ終われないでしょ!」さんの感想が何気に濃いんですが・・・アンテナ登録しました。なんとなく・・・同じ匂いがするので(ゴメンナサイ)。