レジンキャストミルク(7)

レジンキャストミルク 7 (7) (電撃文庫 ふ 7-13)
レジンキャストミルク 7 (7) (電撃文庫 ふ 7-13)藤原 祐

メディアワークス 2007-06
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ストーリー

さて、佐伯ネアの全開運転はありましたが、衝撃の事実(城島晶にとって)がご開帳され、速水殊子の能力が限定されてしまったというなんだか不利不利な展開の6巻から続く(当たり前ですが)の7巻ですね。
とにかくやっとの事で攻勢にでる晶とその仲間たち、という感じの7巻ですが・・・それと同時に大事な事件が起こる話となってます。あまり細かく語っても仕方がないでしょう。

前半が

コメディパートなのがちょっと予定調和的でしたが・・・。
毎度の事とは言え、その前半と後半の落差が良い感じに効いているんですが、うーん。ちょっと慣れちゃったかな!? つまらないとかではなくて、作品構成に慣れてしまったという感じですか。
それでもそのコメディパートがまたまた面白いのでするする読めてしまいますね。

「地面に触れていない部分は汚れていません」
「……はい?」
「ですから地面に触れていない部分は汚くないです。なのでそこは食べられます」
「どうやって!?」
「這いつくばって食え」私はにこやかに笑いました。
「あんた鬼? 鬼なの!?」

ひめひめと硝子の会話ですが、笑わせてくれます。

ようやく

攻撃ですね・・・といっても地味なものなんですが、それでも攻撃は攻撃です。
しかし最初の切っ掛け作りがあまりにも消極的なので、ちょっと空いた口が最初閉じない状態になりましたが、まあ良いでしょう。しかしその掲示板、何人くらいの人が常駐してるんだ・・・!?
なんか会員制で、挙げ句管理者がいないという話になってたけど、スパムだらけになっているのでは・・・?

今回の話は

誰が主役の話っていえばそらやっぱり殊子と蜜の二人なんでしょうね。
やっぱりというか予定通りというか・・・そうならざるを得ないとしか言いようが無いですが・・・この二人については特に何かを言うつもりは全くないですね。ただ、美しくて悲しかったとだけ、書いておきます。
まあ予感はあったので特に驚きとかは無かったのですが、良くも悪くも最初から最後まで期待を裏切らない作者だなあ・・・なんて思ったりして。
そういえば今回さらに雑魚指数を上げた<完全に蚊帳の外>某キャラや、なんだか薄っぺらさが増した<秘密が無いと刺激も無いよ>無限回廊辺りがちょっと物寂しい感じです。彼らは完全にオマケ状態ですね、特にいきなりヘロヘロな印象が強まった無限回廊がなんだが空回り気味です。逆恨みかあ・・・。

ところで

この話って「何か」にずーっとイライラさせられていた所があるんですけど、今回あとがきを読んでその理由が分かりました。「何か」の正体は「作者の躊躇い」ですかね。

「どっぷり感情移入しながら書いているという事」=「自分で自分の事を切り裂いている作業」=「当然躊躇う」

なので、どうしたって吹っ切りにくいのは確かでしょうね。作品全体から醸し出される「煮え切らなさ」のようなモノは、そのまま作者の「煮え切らなさ」だったんでしょうね。
・・・そういう事を考えながら見ていると、1〜6巻までの主人公たちの動きの悪さに感じる「妙なイライラ」に全て説明がついたような気分で、一気にすっきりしてしまいました。つまり、愛着故に諦めきれなかったんでしょうねえ・・・作者が。
それをこの話でついに思い切って「手術した」のか? と言われれば実はそうでも無くて、

切り落として別のものへと思いを繋げる事にした

という感じでしょうか。次にどうやって繋がっていき、どういう実を結ぶのか、興味がありますね。

総合

星4つ。
なにやら分かりにくい感想になりました。
クライマックスも近く、次が最終巻になる予定だそうです。なんとなく読了後の感想としては「あと1冊で本当に完結するかなあ?」なんですけど、きっとするんでしょうね。
種明かしは6巻で済んでいます。この話においてはもはや「虚」も「実」もどちらも正当性を主張出来る状況になく、ただの勝ち残りゲームとなりました。生き残るのはどちらでしょうか。
実はこの話、「絶対に守らなければいけない最終防衛ライン」が何人ものキャラクターの中で語られる事によってゆらぎ続け、作品全体で見た時はっきりとしない話だと思います
そういう意味ではこの7巻で大きくそのラインが揺らぎました。どこまで揺らぎ続けるんでしょうか。最後のひとりになるまで? しかしそれでは作品として崩壊しているといえるでしょうし・・・難しいですね。
いずれにしても、勝利条件のはっきりしない戦いの最後に見えるのはなんでしょうか。何をもって勝利とか敗北とか、ゲームの終了とするつもりでしょうか。作者が最終巻で出す答えを期待したいと思います。
相打ちとかにして<なにもかもなかった事>とかにしたら大笑いしますけど。それはないか・・・夢オチみたいなもんですしね。