小笠原・父島に行って来ました2〜オタクだからこそ大丈夫〜

色々と悪口のような書き方を前のエントリでしていますが、これは裏を返すと違った見方ができます。今回はその辺りに焦点を当ててみます。

良いなあと思った所

小笠原は海も山も素晴らしく、昼と夜の寒暖の差も小さく、骨休めするには最適な土地だと思います。
「プライベートビーチ」なんて言葉がありますが、父島のビーチは基本的にどこでもプライベートビーチ状態です。とくに僻地に存在するジョンビーチ/ジニービーチなどはプライベートでない方が珍しいです。
いずれにしてもそれなりの広さを持つ浜(しかも素晴らしく綺麗!)でも人はちらほらしかいませんので、日にちと場所によっては素っ裸で泳いでも何ら問題がないのでは? と思える場所もある程です(やりません! やってません!)。
そういう基本的(?)な部分はともかく、それ以外で「独特だなあ・・・」と思った所をピックアップして幾つか書いてみます。

特定の層の人間が観光客に少ない

前のエントリで書いた、

「交通手段の選択肢が無い!」
「移動に必要な時間がスゴい!」
「日程がまたありえない!」
「値段も優しくない!」

などの条件によって特定の層の観光客の出現確率が非常に下がっています。ズバリ、学生と社会人

  • 学生

これについてはもう単純に「財布に優しくない」がその理由でしょう。よっぽどの動機でもない限り、沖縄や海外などのお手軽な旅行先を蹴ってまで小笠原に行く理由がありません。

  • 社会人

これは「お金があっても時間がない」のが理由でしょう。最低でも一週間の休暇が必要という事と、その貴重な休暇を大変な移動時間で浪費してまで小笠原に行くというのは選択肢に入れ難いでしょうね。こちらもよほどの動機が無い限り、他の観光地に流れるでしょう。
結果として残るのは会社を引退した世代と、小笠原に魅せられたリピーター中心という状況になります。
つまり分かりやすく言うとこうなります。

小笠原は自然の美しさに反比例して、ミーハー、または変な興奮/発情状態に陥っている連中が少ない

それなりに思い入れがあって来る人が多いようなので、集団でばか騒ぎしたりとか、自然環境とかに無神経な旅行者が少ないのは間違いありません。もちろん皆無という訳ではありませんが・・・。

現地の人が非常に濃い

小笠原が戦後日本に返還されたのが1960年代後半、1970年近いという事もあって、昔小笠原諸島で生活していた人の多くは内地(つまり本土)に残る人が少なくなかったようです。ですので現在小笠原諸島に暮らす人は、小笠原の魅力に取り憑かれて内地から移住して来た人が意外に多いようです。
また、小笠原諸島にしかいない生物(固有種)の存在や、自然遺産として価値の高い土地、また天体観測に適した自然環境などから研究者が小笠原諸島を訪れる事も多いらしいです(国立天文台もある)。小笠原を訪れた専門家の人達は現地において無料で講演会を開いたりする事も多いらしく、現地ガイドなどの知識水準をあげるのに一役買っているようです。
つまり簡単に言うと、

  • 好きで小笠原にいるため自発的に勉強してしまう人が多いと思われる。
  • 専門家から話を直接聞く機会にも恵まれている。

と言う事ですね。
これらは結果として、自然や生物や地学や戦跡といった辺りに非常に深い知識を持った人が出現しやすい環境を作っているようです。そしてそれを趣味の延長が仕事という感覚でやっている人が多いという印象ですね。
私の場合、現地ガイドさんとは数名の方とお話をする機会が得られました。お話ししたガイドさんはそれぞれ得意な分野に差こそあるようでしたが、ほぼ全員に言える特徴として「非常に観察力に優れている」という印象を受けました。
また、それを筋道立てて一定の法則/傾向などを見つける事が得意な人が多いようで、それぞれ「〜はこんな傾向があるみたい」「理由は今の所不明だけどどうも〜みたいだね」なんて事を聞かせてくれました。
現地で会ったガイドやインストラクターは大抵日焼けして筋肉質な良い身体をしていますがタマシイ的にオタクと言っても過言ではありません
「これは流石に分からねえだろ?」的な質問にも平気で答えてくれるガイドさんがいたりします。つまり、

小笠原のガイドさんは、向いている方向は違いますが根っこは我々と同じ目をした生き物です

・・・悪口ではないで念のため。

興味深い自然環境など

ウミガメが産卵に訪れ、数種類のイルカの生息地になっているためドルフィンスイムが出来、またクジラも訪れるためホエールウオッチングも可能な豊かな海(もちろん釣りもいいですね)は勿論魅力の一つですが、他にも非常に興味深い見所は多数存在します。

  • 独自の進化を遂げた植物や動物(固有種)と出会う事が出来る山
  • 固有種ではなくても楽しい生き物たち
  • 世界でも珍しい沈水カルスト地形である南島
  • 戦後ほとんど手を入れられる事無く残ったままになっている戦跡(塹壕や海に沈む軍艦など)
  • 海際の断崖絶壁や、他であまり見られない枕状溶岩などの景観
  • 大気が安定し、余計な光がないことから観測が容易な星

などなどです。
私の場合は旅行中、差こそありましたがこれらの魅力の多くに触れる幸運がありました。そのどれもが知的好奇心をくすぐられるシロモノです。もっとシンプルに言えば、子供っぽい冒険心をくすぐられる所です

知的好奇心をそそるネタに事欠かない

これはオタク者にとって幸せな事ではないでしょうか?

さて・・・

ここまで来ると結論は一つです。

結論:小笠原は濃い人に(も)優しい!

実はこうなります。

  • ミーハーな連中が少ない。

→ なんだかいちゃいちゃしているカップルとかみて「ギギギギギ・・・!」とか思う頻度が低いのでモテない人も精神的に幸せです。

  • ガイドが濃い

→ どうせなので今まで余計な事をしまくって溜め込んだ知識を引っ張りだして質問をしましょう。

  • 環境が興味深い

→ 知的好奇心を満たすためのネタに事欠きませんので、あなたの濃い部分にどこか引っかかると思います。
観光に行くというよりフィールドワークをしに行くみたいな感覚で訪れても楽しめるという事ですね。
理由はともかく、小笠原には何故か親切な人や人懐っこい人が多い(日焼けしているので一見怖いですが)ので、コミュニケーションが苦手な人でも、「親切な人達に親切に相対する」つもりで訪問すればなんら問題はありません。
もし訪れる事があるのであれば、積極的にガイドサービスの人や現地の人達に質問やコミュニケーションを行う事で、大きなプラスαが生まれる可能性があることを書いておきます。

とりあえず

大まかに書いてみています。
通信環境については特にメリットとして触れていませんが、実際に言ってみると困る程でもないという印象ですね。ネットするより楽しい事が沢山あります。
次のエントリでは、小笠原で体験できた遊びについての各論に入りたいと思います。