BLACK BLOOD BROTHERS (S)(4)

BLACK BLOOD BROTHERS S 4―ブラック・ブラッド・ブラザーズ短編集 (4) (富士見ファンタジア文庫 96-12)
BLACK BLOOD BROTHERS S 4―ブラック・ブラッド・ブラザーズ短編集 (4) (富士見ファンタジア文庫 96-12)あざの 耕平

富士見書房 2007-07
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おすすめ平均 star
starBBBショートの意義
star本編に繋がる重要な過去が明らかに!?

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ストーリー

BLACK BLOOD BROTHERSの本編5〜6巻の間の空白の1年間を埋める短編集です。
ある意味ものごっつい1年間でして、本編ヒロイン(だと思われる)の葛城ミミコの赤裸々な実体を暴く作品群と言えるでしょう。とにかくカンパニーを陣内ショウゴの思惑によって突然クビになった彼女が過ごす特区サバイバル短編集・・・というかドロップアウト18歳乙女短編集。なーに、風呂なんて一週間程入らなくてもアヒルは死なんよ。アヒルだからな! という感じの作品となっています。

話の展開:まさに泥沼

かつてここまで堕ちたヒロインがいたであろうか。・・・ちょっと思い出すと一人の人物が思い出される。
魔術師オーフェン・無謀編に出てくるコンスタンス・マギー女史(コギー)その人である。しかし流石にアソコまで無能ではないので、葛城ミミコは優秀なコギーと言えるかも知れませんが、比較対象がコギーで成立する辺りが本編の泥沼っぷりを現してます。
その辺りの泥沼っぷりは短編のタイトルでもはっきりと分かります。

『失業者葛城ミミコの苦悩』
『ホームレス葛城ミミコの放浪』
『社長葛城ミミコの野望』
『容疑者少女Aの逃亡』
『本家『クイーンM』の挑戦』
『調停者葛城ミミコの復活』

非常に出入りの激しいスコアとなっているのが分かるかと思います・・・というか笑いが止まりません。特徴的な台詞を幾つか抜き出してみると・・・。

  • 吸血鬼をムラムラさせる女・葛城ミミコ

「……正直いうと、私もときどきムラムラするわ」
「…………」
「…………」
「…………」
「……えへ」

笑っている場合ではない。

  • 人間最下層・葛城ミミコ

「もちろん聞いてますよ。大変でしたのね、ミミコさん。資格も貯金も学歴もないのに、いきなり無職で住所不定なんて。お若いのに気の毒だわ。波瀾万丈ね」

コレだけ見るとシンプル人間のクズ。

  • 特区の暗部・葛城ミミコ

「ぬうう……噂通りだ。情け無用の『クイーンM』。特区の闇社会は、とんでもない怪物を迎え入れてしまった……」

悪の親玉化。

  • 特区の逃亡者・葛城ミミコ

「……ここも、潮時ね」

妙に逃亡慣れしてしまった18歳乙女。

  • 特区のホームレス・葛城ミミコ

「まってミミコさん。あなたまさか、またあの橋の下で夜を過ごす気じゃ——」

橋の下だって慣れれば平気な私、少女A。

今までは短編の内容にもつっこんだ形で感想を書いていたのですが、今回は基本的にやりません。それはこの短編集が「葛城ミミコの失墜から堕落、そしてヨゴレた欲望の噴出、そして復活」という道筋を辿っているためですね。
本編からの登場キャラクターも少なく、基本的に大物は出てきません。ジローとコタロウは出てきますが・・・。そういう意味では短編集というよりは一つの話と考えても外伝の長編という捉え方をしても良いかも知れません。
ただ、短編種に付いている例の昔話だけはちゃんとした話になっていますね。

暗き森の奥で

時は1943年、第二次大戦まっただ中のドイツにて、イブ、ジローそしてカーサの旅路を描いた作品です。
この短編は正直ファンならば絶対に見逃せません。カーサの心が徐々に膨らんでいて、危険水域に達しつつあるというその前兆が初めて現れる話だからです。さらに加えてある強力な力をもった「魔具」が出てきます。香港に関連していると思いたくなる恐るべき魔具ですね。
さらに本編でも重要な役回りをしている「あの人」が外伝に初登場していると思われますね・・・本当にその人なのかどうか外見では分からない人なので、あくまで多分ですが。

総合

星4つにしましたが・・・濃いファンなら5つ星ついてもおかしく無いですね。
堕ちて行くうら若き乙女の姿のなんと美しい事よ! という事を考えながら読んでいるとアッという間ですね。葛城ミミコファンなら読まねばなるまいという一冊です。頑張って力を溜て、賢者イブと勝負出来るようになって欲しい物です。
というかこの一年があったから6、7巻での彼女の活躍があるのかな・・・と思わなくもないですが、いやはや、つまりルンペンからのスタートですからねー。
所で、今回出色の出来なのが草河遊也氏の描きあげたイラストですね。
氏のイラストは時々キャラクターが人間離れした顔になることが多くて(特に目つき)そんなに好きという訳では無いんですけど、それでもとにかく白黒ページにある一枚目のイラスト「テトリス廃人葛城ミミコ」が見事ですし、その後に続くイラスト内の登場人物の崩れっぷり(ミミコを始めとする女性陣)が素晴らしいです。必見。