夜想譚グリモアリス2 堕天使の旋律は飽くなき

ストーリー

妹との二人暮らしをする少年・桃原誓護(ももはらせいご)は妹の祈祝(いのり)と慎ましい生活を続けていた。彼が「目に入れても痛くない」と溺愛している妹が最近フルートを始めた。そのフルート教室で一つの事件が起こっている事を誓護は知る。
フルート教室の生徒の一人・織笠美赤(おりかさみあか)が教誨師グリモアリス)に裁かれるという事件に巻き込まれていたからだ。
教誨師グリモアリス)——彼らは異界から現れ、人に裁かれなかった罪人を裁く役目を負った者達だ。誓護は美赤が教誨師に裁かれようとしている現実に直面するが、彼の直感は美赤を「無実」だと感じていた。
超絶的な力を振るう教誨師を敵にまわして誓護は美赤の無実を証明出来るのか。再び現れたかつて協力関係にあった教誨師の一人・アコニットと再び手を組み、美赤の無実を証明するべく奔走する誓護。そしてその背後で蠢くアコニットの敵・鈴蘭。はたして物語の行方は?
「かくてアダムの死を禁ず」の続編です。

キャラクター:一巻よりさらにこなれてきたね

桃原誓護は前巻から言われているとおりサイアクのシスコンとして周囲に認知されている訳ですが、

「桃原くん、初等部にも、頻繁に出入りしてる……。朝は、妹さんを教室まで送るし、放課後は、お迎えに行くし……。普通じゃないよ」
人目もはばからず妹を溺愛する誓護の姿は、はたから見ると確かに奇妙だ。
「女の子……みんな言ってる。桃原くんはヤバイ。変態。シスコン。ペド野郎」

散々な言われ様ですな。しかしある程度まで本当の事だから仕方がないですな。まあ彼については一巻と基本的に変わらないですね。同じ意味で妹の祈祝も相変わらず引っ込み思案で大人しいですが、妙に頑固な所があるというのも同じといえば同じです。
結構変わったかな? と思ったのはアコニットその人(?)ですね。
ツンツンとひたすら態度がでかい所がなりをひそめ・・・無いんですが、無意識のデレ成分が増えておりまして見所が増えると同時に、結果としてかつての協力者であった誓護を信頼するようになりますし、彼のために力を尽くそうとします。・・・相変わらず素直ではありませんが。

話の展開:より過激に

教誨師グリモアリス)がアコニットだけではなく軋軋(ギシギシ)という下っ端役人的教誨師が出てくる事と、黒幕として動いている鈴蘭が表立って出てくる事が増えているため、アクションとか血だるま魔法戦闘といった所が増えてます。お陰で誓護も大変ですし、アコニットも大変です。
ミステリー成分は・・・私は十分だったんですけどミステリが好きな人からするとどうなんだろうなあ? その辺りはミステリ好きの人に効いてみたいですね。・・・まあ、”魔法的な何か”が出てきてしまっている段階でミステリとしては破綻しているって思う人の方が多いのかも知れませんけど。
というか登場人物が少ない事もあって、余り悩まなくとも犯人の想像がつく訳です。さらにどうやったかとかいう辺りも魔法絡みなのであまり突っ込んでもしょうがないかなという感じ。そうなると焦点が当たるのは、ホワイダニットでしょうね。つまり動機です。

総合

星4つ。面白い。
アコニットの過去に関わる何かが影響して、鈴蘭の破綻があるようだという事が分かってきますが、そのあたりが一体なんなのか、アコニットが誓護に、

「貴方……自分の前世に興味はない?」

とか聞いた理由も気になります。
次の話ではアコニット→誓護の恋(!?)も気になりますが、それより先に誓護のシスコンをさらに悪化させて欲しいと、そんな風に思った次第でございます。
イラストは松竜氏ですね。まあやっぱりというかなんというかアコニットが出てくる回数が多いですが、意外と満遍なくキャラクターが絵にされているので良いんではないですかね。うんうん、アコニットは可愛く描けてますよ。しかし実はちょっと(かなり?)性格的に壊れている鈴蘭の方が個人的には好みだったりして・・・。