アスラクライン(8)真夏の夜のナイトメア

ストーリー

前巻の展開で上級生達の修学旅行はムチャクチャになったものの、何とか敵の攻撃を阻止した夏目智春(なつめともはる)達は、ようやく夏休みに突入する事となったが、夏の予定は何も無し。
それどころか智春には補修が待っていたりしたのだったが、スポーツ元気少女の大原杏が夏のバイトを紹介してきた。海の近くのペンションでのバイトだ。もちろん遊ぶ時間も十分に取れるという。
それに乗っかった悪友・樋口の陰謀が渦巻いたりはしていたものの、なんとなく平和な夏を送る智春だったが、姉を探すために別行動をとっていたアニア達がペンションに現れたりして俄然きな臭くなる夏の海。
「一巡目の世界」の遺跡を巡って熱いバトルが展開される第8巻。・・・意外に巻数伸びてますね・・・。

前半はもう・・・

なんというか智春の気概の無さとニブさにどーも腹がたった展開でしたね。
樋口はとにかくうざい。俺なら「余計なお世話だ馬鹿やろう!&貴様が腑抜けなだけだボケ」と樋口を殴り倒すような展開なんですが、それをしないのがなんともまあ・・・この話の主人公らしいというか、なんというか。
まあ樋口(その向こう側にいる佐伯も)は取りあえず置いておくとしても、嵩月奏(たかつきかなで)に対しての態度が煮え切らない感じが実にムカつく。いい加減腹を据えろと言いたくなるんですが・・・これって俺だけかなあ。憎からず思っている事は確かなんだし・・・。
でもやっぱりあれか、水無月操緒(疑似幽霊)に遠慮しているのが結構大きいのかなあ? その辺りは物語でも言及されますが、それでもいちいちはっきりしない態度がいい加減ムカつきます。
パッと思いつくだけで、操緒、嵩月、佐伯妹、杏の4人の少女を振り回しつづけている訳じゃないですか。そろそろ絞れと言いたい。

中盤から後半にかけては

本来の陰謀とか嵩月との距離がまた縮まったりとか変な勘違いをしたりとかで色々ある訳ですが、それでも遺跡絡みの話になって途端に冒険色が強くなります。遂に明かされる機巧魔神と悪魔の存在する理由。それは意外な人物の口から語られる事になります。
前巻でも「機巧魔神の力の代償がなんであるのか」という秘密が明かされますが、今回は「悪魔の力の代償がなんなのか」といった所が語られる事になります。
そしてその辺りが全て明らかになった後で、ついに智春が主体性を持って一時停止を止め、選択をすることになります。

「消滅した可能性を取り戻すことは二度とできない。選択するということは、選択しなかったすべての未来の質量を背負うということ……だと」

「決断しても逃げても誰かを傷つけるというのなら、僕は自分の意思でその痛みを背負うよ」

「ごめん、操緒——僕は今からおまえを傷つける」

彼は自分の意思で前に進むことを決めました。そしてそれをフォローする一人の少女。

『だいじょうぶ。操緒はずっとついてるよ』

心強い言葉ですが、摩耗することが止められる訳ではないという事を忘れる訳にはいかないでしょう。そして、もう一人の少女・嵩月もまた摩耗していくのだという事を。
そしてまた、物語からの退場者が出る事になります。

総合

うーん・・・。星の数に悩むなあ・・・3つかなあ。
後半は良いけど前半がだらだらし過ぎって印象が強いんだよね・・・。もうちょっと展開をスピーディにしてくれたら星4つは間違いないんだけど、なんだか「一度完成させたスープを水増しした結果、巻数が増えてる」って印象が強いんだよね。
毎回毎回巻のラストはそれなりに緊迫しているのに、次の巻になるとまた日常パートの緊張感のない所からスタートするって言うのがちょっとイヤ
必要不可欠とも言えないようなキャラクターも結構いるし、もうちょっとそれぞれ良く絞って配置したらもっと楽しめる話になるんではないかなあ。キャラが増えすぎて一人一人の印象が弱まってしまってもったいないという感じ。
メインストーリーは嵩月が大変な事になっているのがラストで判明しますので、いい加減先延ばしにできない問題が出てきたって感じですね。悪魔が何を求めているのかもはっきりした事ですし、いい加減智春は根性据えて「魔神相剋者」になる事を考えた方がいいと思います。問題はどちらが本妻でどちらが妾なのか分からない所ですが・・・え、そういう話じゃない?
和狸ナオ氏のイラストは実に良い感じですね。真面目に仕事してるなあ・・・って感じが好印象です。女の子達も可愛いしね。

感想リンク

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