鳥籠荘の今日も眠たい住人たち(3)
鳥籠荘の今日も眠たい住人たち 3 (3) (電撃文庫 か 10-13) | |
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ストーリー・・・代わりの引用
繁華街の場末、ヨーロピアンからアジアンテイストからニューヨークスタイルまで無秩序無国籍な建物が窮屈そうに立ち並ぶごみごみとした界隈の一角にアンティーク調の時代がかった趣を漂わせて佇む、七階建ての西洋建築、ホテル・ウィリアムチャイルドバード。建物の正面に鳥籠のように切り立つ飾り格子の印象から通称<鳥籠荘>とも呼ばれるこのホテルの住人は近隣で悪名高い”変人”揃い。通常の社会に溶け込んで生活を営むには少しばかり難がありの、一癖も二癖もある連中ばかり。建物自体に意思があるかのようにおかしな連中を呼び寄せるのだ。
主人公の衛藤キズナは、そんな<鳥籠荘>に住居を構える「変人の自覚のない変人(?)」少女。彼女を中心に鳥籠荘の不思議な日常を描き出した作品です。
今回は・・・
中々素敵なラブロマンスが2本。それとミステリーが1本。どれも味付けに少々のホラー風味で作品が出来上がってます。
着ぐるみ父ちゃんの正体を探れ
例のネコ着ぐるみ父ちゃん&娘の華乃子の家にクラスメイトの少年・加持梢太(かじしょうた)が一人やってくるというお話。
その訪問の理由がまたイカしていて「ある時助けれられた事を切っ掛けに、自分のママがネコ着ぐるみ父ちゃんを好きになってしまったらしいので、御礼と『相手がどんなヤツか』を兼ねて調べに訪れる」というのだった。
「大きくて真っ白でふかふかの背中が男らしくて、寡黙だけれど頼もしい、それはもう素敵な殿方だったわ」
・・・なんだかメチャクチャな理由ですね。
まあ梢太少年も自分の母ちゃんの恋愛の協力をしようというのだから、苦労性だという事ですがね。
しかし少年と侮るなかれ、中々の名言を残してくれます。
失敗作だろうがなんだろうが手料理は黙って食べるのが男の器というやつだろうと、梢太は中身が爆発してほとんどフライの衣だけになったクリームコロッケと千切りレタスと(またキャベツと間違えて買ったのか……)、水加減を失敗しておかゆみたいになったご飯と豆腐の味噌汁を残さずに平らげた。さすがに味噌汁は失敗のしようがないと思うのだがひどく薄くて味がしなかった。これはあれだ、塩分を控えめにしようという母さんの心遣いなのだと思うことにした。
梢太の母さんは料理が壊滅的らしいのですが、少なくとも作る気があるので立派だ。男なら、頑張って作られた痕跡のある料理は如何なる産業廃棄物でも黙って食え。見所のある少年だ、と言う事で俺評価+10くらい。
さらには、
「すごいなあ、山田って」
「べ、別に」
「すごいって。もしかして山田、オムライスとかも作れる?」
「え? 作れるけど……」
「ほんとに? すげえー。すげえー」
・・・人の作った料理批判もいいですが、それが許されるのは金取られる場合だけですな。家庭料理に文句行ったらアカン。特に自分で料理が出来ない男の場合はゼッタイ文句言ったらアカン。
この発言は見事に相手を褒めているので俺評価さらに+10位。
・・・ところでネコ父ちゃんの正体は結局判明しない訳ですが、一体なんなんですかね?
キズナと有生のぎくしゃくとした関係
前巻で色々な出来事があった事と、微妙な所を目撃とかしちゃったりした有生とキズナの関係が妙に変な感じになっているというお話。
「……風邪ひかれたら、何?」
「別に」
・・・良いですねえ・・・意地っ張り同士の衝突というか、根性 vs 天然というか、中々いい雰囲気で話を作ってくれています。
「なんでって、」
浅井の声色がわずかに揺らぐ。
ニ秒くらい中途半端な時間があって、
「……さあ、なんだろ。なんで?」
逆に訊かれた。
困った男ですねコイツ。
殺人事件もおこっちゃうぞ鳥籠荘
今回はちょっとしたミステリではなくて本当に殺人事件が起きてしまいます。
浅井有生がその容疑者扱いされてしまった事からなんとなく放っておけない衛藤キズナは自分で捜査を開始してしまうのですが、真実は意外な所からやって来ます。
結果として頑張った分だけちょっとだけ? いいことがあったような・・・無かったようなお話でした。