カラクリ荘の異人たち 〜もしくは賽河原町奇談〜

カラクリ荘の異人たち~もしくは賽河原町奇談~ (GA文庫 し 3-1) (GA文庫 し 3-1)
カラクリ荘の異人たち~もしくは賽河原町奇談~ (GA文庫 し 3-1) (GA文庫 し 3-1)ミギー

ソフトバンククリエイティブ 2007-07-12
売り上げランキング : 6940

おすすめ平均 star
star作者が好きな分野を(趣味で)徹底リサーチしていることが伝わる快作

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

これは良かったねぇ。

ストーリー

心の持ち様がちょっと人と違う少年・阿川太一、高校生。
彼は普通の人と比べて彼は色々なものを「感じない」少年だ。怖いはずのものが怖くない、不気味なはずのものが不気味でない、危険を感じるべき時に感じられない、そんな心の何処かが抜け落ちてしまっている少年。それは彼の生い立ちに原因があるのだが・・・しかしそれなりに過ごしていた。
ある時、彼は住み慣れた家を出る事になる。父の再婚相手とどうしても円満な関係が築けなかったからだ。これは「心の動かない」息子を心配しての父の配慮の結果だった。
その父が紹介した転居先が「空栗荘」。賽河原町にあるアパートだったのだが、そこを訪れた太一を待っていたのは、普通の町並みの「裏側」にある不思議な世界と不思議な住人達だった。

雰囲気が

実に好み。
妖怪変化の類いとか、幽霊やら魂やらが普通にポンポン出てくる感じは・・・類似作品を上げるとなると昔なら朝日ソノラマの「とねりこ荘奇譚 (ソノラマ文庫)」、最近ならMF文庫の「神様のおきにいり (MF文庫J)」とかその辺りになるんだろうけど、こちらのほうがシリアスで、ヒヤッとする感じ。うーん、例えば・・・。

夜中に道を一人で歩いていると、すぐ後ろを誰かが歩いている足音がする。誰かがいるのは間違いないけど「振り返っても誰もいない事が振り返る前から何故か分かってしまっている」ような。

車を運転している時、前の車のリアウィンドウに小さな男の子が張りつくようにしてこちらの車をみているけど、直感的に「あ、あの子もう死んでる子だ」と気がついてしまうような。

小さな頃、さっきまで友達と遊んでいたはずなのに、気がついた時には誰もいないような。それどころか「元々誰もいなかった」ような。

そういう違和感とか、ふとした瞬間に覗き込んでしまった異界の空気を上手く書いている作品だなと思いましたね。
「そういうものだ」と本能的に分かっているので怖いわけではないし、危険も無いけど、そっちに行ってはいけない、話しかけてはいけない、見てはいけない、そんな空気
コメディっぽい所ももちろんあるのだけど「向こう側」とは「決して相容れない関係である」という厳然たる事実が横たわっている作品と言えばいいのかな。

そういう世界の案内人として

主人公のキャラクター設定はうってつけですね。
恐怖とか、危険を本能的に感じなくなってしまっている。返事をしてはいけない時に簡単に返事をしてしまう。普通は曲がらない曲がり角を平気で曲がってしまう。そして向こう側を覗き込んでしまう。そこには「いないはずの何か」がいて、気の良いものも悪いものもいる。
読者は主人公について行くような形で「こちら側」の理屈は通用しない世界を巡って行く事に鳴ります。普通に可愛らしい付喪神アカネという名前:可愛い!)が出てきたり、あるいは悪霊が出てきたり、ちょっと心温まるような話があったかと思えば、加減を間違って命を失いそうになったりと、結構忙しい話です。
主人公は向こう側の世界を覗きながら少しづつ成長して行きます。もちろん「こちら側」とも縁が切れてしまっている訳ではないので、同級生で微妙に空気の読めない行動的な娘・和泉采菜(いずみさいな)とも色々あったりします。ちょっとだけ、恋の匂いがしますかね?

登場キャラも多い

ラクリ荘の住人も多いですが、それ以上に人間以外が多い。つまり妖怪の類いですが・・・。
しかし魅力的なキャラクターが多いので、個人的にはほとんど混乱する事なく読めてしまいました。でも、人によったら訳が分からなくなるのかな?
私はこの作品とは相性がかなり良いと思いますので全く気になりませんでしたが・・・他の人がどんな感想を持ったのか、この文章を書き終わったら調べてみようと思います。

総合

星4つ。実際には4.5位?
作品の雰囲気を上手く伝えられていない上の文章に正直失望してますが、まあこれが限界でしょう。
ストーリー展開はそんなにドラマチックとは言い難いので2巻が出るのが待ち遠しい! とかそんな感じではないですが、出たら間違いなく買うでしょうね。今回それほど活躍しなかったカラクリ荘の住人達の他の顔を見てみたいし、主人公と采菜の微妙な関係の行方も見てみたいですね。
イラストはミギー氏です。作品の雰囲気を上手く伝えている味のある絵だと思いますね。好み。

感想リンク

ラノベ365日  booklines.net  Alles ist im Wandel  灰色未成年  まいじゃー推進委員会!
巡回先ではなんだか全体的に好評みたいですね。