ドラゴンキラーあります

ドラゴンキラーあります (C・NovelsFantasia う 2-1)
ドラゴンキラーあります (C・NovelsFantasia う 2-1)海原 育人

中央公論新社 2007-07
売り上げランキング : 99090

おすすめ平均 star
starこれは面白い
star退廃した世界観&ガンアクション好きなら決まり
starダイ・ハードな不運な男

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ストーリー

ココは兵士崩れ。殺して殺して殺されそうになって・・・というような経験の果てに現在は兵隊稼業を引退。それには一つの強烈な経験が原因になっていた。
それはドラゴンキラーと呼ばれる存在によるもの。
彼らは超人と呼べる身体能力を誇り、一人で「大隊」として扱われる程の能力を有し、実際に存在する竜と戦う怪物とも呼べる人間から生まれた化け物とも言える存在。
ココは一人のドラゴンキラーの暴走によって人生を狂わされた挙げ句、ならず者の集まる治安が最悪な街・バロールで暮らしながら、その日暮らしのような生活を送る何でも屋・・・というかならず者。得意なのは嘘と銃の早撃ちくらい。
そんな彼の元に一つのどうでもいいような仕事が舞い込んでくるのだが、その仕事がだんだんと大きくなって、彼の命やら国の動向やらを巻き込んだ話になって行く。
そしてその仕事には、彼が大嫌いな存在であるドラゴンキラーのリリィという人物や、アルマという少女が関わってくるのだが・・・というお話。

おやおや?

下品で卑猥で下劣で陋劣だけど、面白いじゃない?
主人公のココはラダーマンという親父が経営する酒場の上に間借りしているやくざみたいなヤツですが(そうですねえ・・・シリアスなオーフェン無謀編状態とでも言いましょうか)、死と混乱と退廃の街・バロールを体現しているような男です。

「貸しは作れ、借りはつくるな、責任は押し付けろ、手柄は分捕れ、だな兄さん」

「誰が死のうがどこでどんな不幸な目にあおうが、自分と関わりの無いところの話なら、そいつは問題が無いって話だ」

正直このセリフだけだと人非人の主人公って感じですが、なかなかどうして悪くありません。冷酷非情のようでいて、自分のルールには忠実。リスクとリターンを考えた挙げ句、時として大ばくちも打てば、ビビってチビりそうにもなる・・・人間的で悪くていいヤツですね。
特に気に入ったのはこの辺り。

やはり、女は尻だ。尻に限る。
胸と同じく脂肪の塊ではあるものの、断然色気が違う。狭いようでその実、雄大な広がりを見せる沃野とさえ言えるし、柔らかでいて張りのある肉は、手におさめればまさに至高。胸などよりよほど揉み甲斐がある。

彼は同時に胸の事をこき下ろしてますが・・・私は胸も好きですねえ・・・。どうでもいいけど。
勿論真面目というか、人間の本質を突くような事を言ったりもします。

「取られたものが大切であればあるだけ、取った奴のことが憎くなる。憎しみを捨てて穏やかに生きなさいなんて諭す馬鹿は、それが人間性を否定してるってことに気がついていない真性の阿呆だ。やられたらやり返すんだよ。政治だろうがマフィアだろうが、ガキの喧嘩だろうが、そうやって世界は回ってるじゃねえか」

これはリリィとの間で行われるやり取りなのですが、この後に続く言葉もなかなか上手くて妙に納得させられてしまいますね。

そして

話を彩るドラゴンキラー一行。
リリィはバロールの常識を何も知らない箱入りとも言えるドラゴンキラーで、凄まじい戦闘能力を持っていながら人を殺す事を躊躇うという中途半端な女性です。信じやすく、騙されやすい。ウブな娘です。
で、アルマという少女はリリィがなんとしても守りたいと思っている存在なのですが、この子ももちろん訳あって箱入りで純真な娘ですね。
で、活躍する事になるのはココとリリィの凸凹コンビな訳ですが、お互いの利害の一致の結果、手を組んで色々とヤバイものに手を出して行く訳ですが、その過程も面白ければ、二人のやり取りも面白い。

「無能自慢か。情けない男め」
「知るかよ馬鹿」
「何が馬鹿だ。貴様こそ能無しではないか」
「屁垂れ」
「根性無し」
一瞬の沈黙。
「トカゲ女」
ミドリムシ
俺たちはにらみ合い、その後、同時にため息をついた。

ダメ人間二人
しかし、こんな風に程度の低いのの知り合いをしていたかと思えば、

「そういうものか」
「そういうもんだ」

で話がまとまったりもします。・・・色々と問題は山積みですが、いいコンビですね。リリィは妙に可愛らしい所がありまして良いですよ。・・・妙に処女っぽくて

総合

星4つ・・・いや、サービスで星5つにしちゃおうかな。
人がばたばた死にますし、信頼とかより力がモノをいい、生命力の弱い奴、運の無い奴、頭の悪い奴が即座に死んでしまうような世界で、利害関係だけで成立しているような人達が繰り広げる物語ですが、しかし隅っこの方にちっぽけでも魅力的な人間性というようなものが匂っていまして、色々と楽しませてくれます。
C★NOVELS ファンタジアの出版予定を見ると、25日には「ドラゴンキラーいっぱいあります」という作品も準備されているみたいですし、楽しみですね。