黄昏色の詠使い(3) アマデウスの詩、謳え敗者の王

アマデウスの詩、謳え敗者の王 (富士見ファンタジア文庫 174-3 黄昏色の詠使い 3)
アマデウスの詩、謳え敗者の王 (富士見ファンタジア文庫 174-3 黄昏色の詠使い 3)細音 啓

富士見書房 2007-07
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おすすめ平均 star
starさすがとしか
starキャラクタの成長が楽しみ
star濃い敵登場。

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ストーリー

アカデミーの生徒たちが補講を行った分校近くにあった研究施設が丸ごと一つ壊滅させられた事件から少しの時間が経った。
研究施設の壊滅によって明らかになった謎の存在——人を石化させる灰色の詠名生物、そして謎の名詠式の触媒<孵石(エッグ)>。
これらの存在を危険視した<イ短調>と呼ばれる専門家達の集まりが動き出した。その集団にはあの虹色詠名士・カインツや、祓名民(ジルジエ)であるエイダの縁者であるクラウスも含まれていた。
そんな中、謎の灰色の詠名生物がネイト、クルーエル達が通うアカデミーを襲う可能性が指摘され、警戒態勢がしかれるトレミア・アカデミー。しかし、灰色の詠名を操る「敗者」と名乗る何者かは真っ向から侵攻を開始する。緊張感が漂ってきたシリーズ3巻です。

うーん・・・

キャラクター一人一人は悪くないし、設定もなかなかイカしてると思うんですけど、どーも尖ったところが見当たらなくなってきてしまっていて、ちょっとパワーダウンした感じがする。
大きな陰謀を物語に滑り込ませなくても少年少女の成長物語は書けそうな気がするんだけど、どうなんだろうか。
・・・全体で見た場合、クルーエルの成長は著しいのですけど、ネイトはどーも進歩とか成長とかがあんまり見られないし・・・いや、成長はしているけど、その過程にあるはずの努力とか頑張りが伝わってこないんだよね。ページの都合で結果だけ「ポン」っと置かれちゃったみたいな感じで。

あと

灰色詠名とか出て来て(2巻からかな?)いるので、これから先、詠名の色はどんだけ増えるのかな? とか思うとちょっと「何でもアリなのでは?」とか思えてしまったところもちょっと残念。5色+夜色詠名(完成しきってない)という限界がある感じが魅力だったのになあ・・・と思わなくもありません。今後これ以上色が増えたりしたらやんなっちゃうかも。

なんか悪く言ってますが

全体として話の作りは悪くなくて、するすると読めてしまいましたね。
既存のキャラクターそれぞれにちゃんと見所が用意されている事と、その割には一人一人の印象が薄まった感じもないように感じたので、その辺りは良かったかなあ・・・。
さらに加えて明らかになりつつある秘密にも今後目が離せない感じがありますね。・・・どうなってしまうんだろうか?
あと、ネイトとクルーエルの距離が微妙に縮まって来ているところはなかなか楽しいんですけどね(お姉さんの方がダイタンなのねえ・・・)。

総合

前作より星1つ減って3つ。
まあまあかな? 個人的にはもうちょっと少年少女の内面に迫ってもらって、彼らの中にある葛藤とかをクローズアップしてほしかったな。「なんでそういう行動を取ったの?」って感じたところが結構あった感じ。
優しさに満ちている世界感は刺激が無いと言えば無いのだけど、魅力と言えば魅力なので、その魅力を無くさない程度にアクションをいれつつ、優しさの在処を感じさせるような心理描写をもうちょっと強調して欲しいですね。・・・多分。
新キャラのサリナルヴァは悪くはなかったけどちょっと見せ場が今イチで、凄みを感じなかったのが残念。
・・・ところで、ネイトは夜色ですから、タイトルの「黄昏色」ってなんですかね。ネイトとクルーエルの合わせ技なのかなあ・・・?