薔薇色にチェリースカ

薔薇色にチェリースカ (集英社スーパーダッシュ文庫 か 6-12)
薔薇色にチェリースカ (集英社スーパーダッシュ文庫 か 6-12)海原 零

集英社 2007-08
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おすすめ平均 star
star決然として向かう彼女の雄姿に……

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私はこの人の前作「銀盤カレイドスコープ」を全く読んでいません。その事を前提に以下の感想をお読みください。

ストーリー

綺羅崎ヒロはヨーロッパのエルゼンドラ共和国に存在するマシュテバリ学園に留学している日本人。本当なら格式ある学園でそれなりの学生生活を送る予定だったのが、ある弱みを学園の下衆な理事長に握られてから、その走狗として動く毎日を送っていた。
学園内には理事長と対立する「優生会」と呼ばれる組織が存在していて、圧倒的とも言える実権を握っていたのだが、理事長と優生会は目下の所完全に対立中で、結果ヒロも優生会から睨まれる存在に。
生徒達に大きな影響力を持つ優生会を敵にまわしている関係で、普段から有形無形の嫌がらせを日々受けていたヒロですが、そこに弱り目に祟り目か、ある事件を切っ掛けに「変な生き物」に取り憑かれてしまう事に。
その名は「チェリースカ」。人に化け、人語を解し、また話す、奇怪な蛇である。人間に化けたときのチェリースカは、絶世とも言える美少女なのだが・・・。
いずれにしても色々な勢力に板挟み状態になったまま、こんがらがった日常を送るヒロと、それに取り憑くチェリースカのお話です。

うーん

序盤のダンスシーンは描写に奥行きがあって美しいですね。
正直ダンスなんてサッパリ分からん私ですが、それでもなかなか読ませるなあ・・・って印象でした。前シリーズでもこのようなダンスの描写とかがあったのかな? それは分からないけど、きっと絢爛豪華だったんでしょうね。読ませます。
あと、なんと言うんでしょうか、なさそうでありそうな世界設定が絶妙なところでいい味を出してますね。チェリースカは喋る蛇って事で完全にファンタージーですが、それ以外は「まあ地上の何処かにあってもおかしくないかも・・・」という感じが妙に面白いです。

キーワードは「意地」

うん、とっても変。
出る奴出る奴、何をそんなにムキになってやりあっとんねん! という気分になりましたね。特に優生会側の学園主席<ハイネルオーブ>であるシシリー・アイスヒルとかが個人的にはかなり訳が分かりませんでした。
うーん、何か勘違い系とでもいうのかなんだか分かんないですけど・・・実力は十分に持っているのですが、組織の権力と自分の権力を同一視している危うさとでも言いましょうか・・・。というか、きっと彼女にも「そうあるための経緯」というのが存在するのでしょうけど、その辺りの描写が無かったのでかなり変な人って印象と受け取ってしまいました。
逆に彼女と正面衝突することになるヒロインの一人・乱流真希は、意地を張るだけの理由が結構ちゃんと書かれるのでストンとキャラクターが懐に落ちてきましたね。
ただ、その「意地」という奴を上手く使って作品に緊張感を作り出しているのもまた事実でして、特に大きな火種があったわけでもないのに争いの炎が燃える燃える! この辺り、盛り上げ方が上手な作者だなあ・・・と思いましたね。

ヒロインの

チェリースカに関して言えば、実に謎めいていて可愛い奴だという感じですね。
ヒロの生殺与奪権を握っていながらその実妙に情に厚い様な所があったりして、とにかく一番魅力的だったんではないでしょうか。
ヒロの身体に常に巻き付いているというそのスタイルも妙に可笑しいですが、知ってか知らずか、ヒロの○○○を敵だと思って噛み付く辺りのやり取りなんて・・・それなんてフェ(ry。
彼女も学園内に何やら恐れる敵がいるらしい事が分かってくるのですが、それが今後どうなっていくのかちょっと楽しみですね。

総合

星4つ・・・いや3つかな?
私はプライドとか意地の張り合いというのが今イチピンと来ない人なので、ちょっとのめり込めないというか、読んでいて微妙に「イヤな緊張感だなあ・・・」と思ったんですが、それでも物語に勢いがあって読ませてしまいますね。
いかにも「悪役」という配役を振られている存在がいるのがちょっと残念でしたね。しかしこの辺りは、今後キャラクターの描写が濃くなれば解消される可能性も大じゃないかって気もしますので、次の話(出ますよね?)に期待したいと思います。
イラストはネツマイカ氏ですね。少女漫画的な所が散見されまして、個人的には好みの絵柄ではないですが、全体的に絵に動きがあって良かったと思います。