アニバーサリー・ホワイト

神曲奏界ポリフォニカ アニバーサリー・ホワイト ポリフォニカシリーズ (GA文庫 た 1-4) (GA文庫 た 1-4)
神曲奏界ポリフォニカ アニバーサリー・ホワイト ポリフォニカシリーズ (GA文庫 た 1-4) (GA文庫 た 1-4)高殿円  きなこひろ

ソフトバンククリエイティブ 2007-09-12
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おすすめ平均 star
star契約=結婚!?
star重要な短編集

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ストーリー・・・代わりの前書き

最近ポリフォニカシリーズで「どーしても続きが読みたい!」と思うシリーズがこのホワイトシリーズだけになってしまいました。
で、読んでみましたが、やっぱり面白い。今回は短編集ですね。
精霊島にある学院が正月休みに突入したため、スノウやプリムローズは地元に帰っています。サブキャラのジョッシュとかも実家に帰っていますね。そこで起こる幾つかの事件と、今後の展開の伏線とも言える出来事が描かれます。

では

それぞれのお話を簡単に紹介&感想して行きたいと思います。

僕の時を刻む神曲

スノウプリムローズのいるグラナード家でのお話ですね。
学院では二人一緒に仲良く通っていて、あまり身分の差を感じないスノウとプリムローズですが、実家に帰ってくれば「メイド」と「お嬢様」の歴然たる身分の違いがありまして、スノウはまあ、標準的にこき使われているという次第です。なんだかとっても厳しい(優しい時ももちろんありますが)執事のルークなんかも登場してきまして、色々と騒がしいですね。
で、ここでは幾つかの話が平行して語られます。「スノウの持っている刀ってな〜に?」と「お嬢様が婚約!? 相手は誰だ!」と「執事のルークの恋心!?」の3本ですね。
主題は「執事のルークの恋心!?」なんですが、その他の二つのテーマは今後のポリ白に大きく影響してきそうなので、目が離せません。
ちなみにプリムローズの仄黒さは今回も健在でして、

「ねえ、スノウ。わたくしはやはり、飼うならかわいげのない、図体がでかいだけの犬よりも、もっと可愛らしいものがいいと思うのです。たとえば、桃まんみたいな」

・・・どーも怖いのですが、それと一緒に「まだ桃まん引っ張ってるんかい!」というツッコミを思わずいれたくなります。
ついでに言えば、「かわいげのない、図体がでかいだけの犬」・ブランカの阿呆っぷりも健在です。

「そのうち、大きな犬を飼いたいな」
「犬がなにを言っている!」
「——あ・な・た」
「やかましい!」

・・・なんだかねえ・・・。

セレブレーション・ホワイト

ポリ白シリーズのサブキャラとして重要な位置を占めるジョッシュの物語ですね。彼がタタラの家に帰る所からお話はスタートします。
彼は分家筋な訳ですが、彼がタタラの家督を継ぐ事を養父が決めたらしく、新年の集まり(七楽門という)連中が集結する集まりで彼を正式に紹介するというのですが・・・。いや〜なんというんですか、シリアス成分とコメディ成分の配合が絶妙というか、ラブ成分とヘイト成分のこね具合が絶妙というか、色んな方面から楽しませてくれます。
シリアス/コメディ路線で言えば、七楽門連中の権力争いに巻き込まれかかるジョッシュと、ある楽器を巡っての攻防が楽しい話ですし(これも今後のポリ白の伏線になってますね)、ラブ/ヘイト方面ではジョッシュを目の敵にする野郎が出てきたり、ジョッシュの幼なじみの娘が色々とあったり、そして皆さんご存知の落雷ストーカー娘リシュリーが突撃してくるという感じであります。
今後ジョッシュがどんな運命を辿って行くかはまだ闇の中ですが、一つだけジョッシュについて判明した事がありますね。それは——「被ストーキング体質」です。
哀れなのか、愛されていて羨ましいのか・・・判断に困る所ですね。

金平糖の恋

遂にといっては何ですが、「牛、主役に」なお話。
つまりミノティアスが主人公であるという恐るべきお話です。・・・凄いぞミノティ! 短編とは言え遂に主役だ! ・・・その割には牛と間違えられて食われそうになったりしてますが。
でもですねえ・・・実はこの短編集の中で一番美しい話なんですよ。ミノティの一つの出会い——相手はスミレさんという年配の方なんですが、ミノティとスミレさんの語らいがとても、とてもとても良いのです。
決め台詞は、

「うおおおおおおおおおっ、この軟弱ものめがっ。牛、一生の不覚なり!」

「ワシは諦めぬ。そして恐れぬ。次のプロムにこそ、華麗なるステップをふんで、ダンスを申し込むのじゃ!!」

自意識的にも牛なんだ・・・つーかやっぱ踊るんだ・・・とかそういうツッコミはこの際、脇に、おいといて。
とにかくミノティアスがここまで思い至るまでのスミレさんとの言葉のやり取りがとても良く、またこの短編の締めがとても余韻がふくよかで良いのです。必読。

総合

星4つは固い。
短編であり、色々な種まきが行われる訳ですが、簡単に言うと一番裏側に流れるテーマは「恋」ですかね。
色んな恋が語られますが、どれも甘酸っぱかったり、苦かったり、浮き立つ様な気持ちのものもあれば、じっくりと時を超えて熟成されるような恋もある・・・と。
見せ方が色々とあって実に美味しく頂かせてもらったという感じでしょうか。素敵なお話をどーもーって感じですね。
ところで作家の高殿円氏がご出産されたというのは本人のブログで知っていたので、まさかこの時期にポリ白の最新刊を読めるとは思っていませんでしたね。子供生みつつ仕事して・・・ってスゲー。作家には産休は無いんかいな・・・。
無理をして身体をこわすなどといった事がなきよう、くれぐれもご自愛を。
ところでイラストはきなこひろ氏ですが、巻頭カラーの漫画が実に良いですね。本編にもちょっと繋がりのある話ですが・・・ステキですのよ? オホホホホホ!(何故か高笑い)

感想リンク