神様が用意してくれた場所(2) 明日をほんの少し

前作とあまり変わらないストーリー紹介

池沢香絵は探偵事務所でバイトをする19歳。別に探偵になりたい訳ではないというのが探偵事務所の所長のお眼鏡にかなったという女性です。
という事で毎日お茶をいれたり、掃除をしたり、書類整理をしたりなどといった仕事をしていた訳ですが、ある依頼を切っ掛けに探偵の助手のような事をすることになって行きます。
そもそも香絵にはある一つの秘密がありました。昔から彼女の周りでは「ちゃんと説明できない奇妙な出来事」が起きていたのです。本人はそれを嫌って今の生活を始めたのですが、やっぱり探偵事務所でも変な事件に巻き込まれる・・・というか最近は「変な解決不可能事件担当」みたいになってくるし、ついでに言えば自分からも首を突っ込んでしまったりして・・・というお話。

今回は

記憶にまつわるお話と言っていいのかな?
前作は短編の集合体という感じではあったけど、今回は一つのお話が複数の視点で綴られるという感じですね。メインのストーリーは「香絵が銀色の携帯電話を拾った事で始まるストーリー」です。
その携帯電話の持ち主の青年とはすぐに連絡がつくのですが、そこからが謎な展開となって行きまして、青年は落とした携帯電話を香絵から受け取る事すらせず、謎めいた言葉を残したまま香絵の前から一度姿を消してしまいます。
この青年にまつわる話が今回の中心ですね。
しかし・・・。

うーん?

このメインストーリーがちょっとパッとしないんです。なんとも。
前作の「存在しない十字路」のような得体の知れなさが無い・・・とでも言えば良いんでしょうかね。ミステリとしてもホラーとしても、あるいは妖怪変化の類いのシロモノとしても微妙に味付けが薄いんです。ただ、そのかわり話全体を構成する一つ一つの短編は奇妙な話にまみれていて、前作通りですね。
なんだろう・・・下ごしらえは完全なのに、最後材料を一気に鍋に入れて完成させる段階で入れなければいけない調味料(例えば唐辛子沢山とか)を入れ忘れた様な、そんな変な印象を受けました。
前作でも出てきたしばわんこ・グミ(ニセグミ?)はイラストの可愛らしさも相まって、とっても可愛いんですけどね。もふもふしたい。

総合

星3つかな。
全編を貫く独特の雰囲気はとても味わい深いのだけど、もう少し濃いめの話を作って欲しかったかなあと思ったりします。
というか、単純に難しい料理に挑戦してチョイ失敗したって感じかなあ? テーマが「記憶(多分厳密には記憶の忘却)」なんですけど、それを作品として読者に「見せる」のが単純に難しかったというだけかも知れないですね。
作中の登場人物が忘れるはずの無い「何か」を「忘却」しているとしても、相当上手く表現してくれないと読者(俺ね)がそれを「この登場人物は〜を忘れている」という事が上手く納得出来ないのかな。
だってそういう目に普通の人はあった事がないから。そこがしっくり来ない原因かも。
・・・でもよくよく考えてみるとなんだか自分の読み方が悪い様な気がしてきた。つーか俺の頭が悪いだけかも知れん。兄弟とか義理の父とか母とか、なんか途中から混乱気味だったし・・・むう。
イラストはFuzzy氏ですね。ほんわりとした絵柄は健在です。

感想リンク

booklines.net  Alles ist im Wandel