言葉に出来る幸せ

私の友人の話なんですが

ルックスが良く、有能で、感情豊か、にこやかな雰囲気を持っており、会う人をリラックスさせる能力に長けていて、当然友人も多いという・・・どう分類しても「愛され系」の野郎がいるのですが、友人は一つだけ重大な欠点を持っています。
非常に口べたなんです。普段ほとんど自分から喋りません。
じゃあ何も考えてないのかというともちろんそんなことはなく、私などより遥かに頭の回転が良いヤツです。
友人はほとんどの事を「彼なりの感覚」で片づけてしまえるのですが、その理由を人に問われるといつも説明に困っています。

「どうしてお前は○○○○はこうすると巧く行くと思った訳?」

とか私が聞くと、

「・・・うーん、上手く説明出来ん・・・」

という返事しか返ってきません。

彼が私の友人になる前の話

最初の頃こそ私自身が彼にとってあまり近しい存在ではなかったため、適当にあしらわれているのかと思いました。
・・・が、周囲の人も彼に同じような事を聞いていて、やはり同じような返答が返ってきたという事でした。・・・そのために彼はある種ミステリアスな空気すら漂わせていました。その空気がある意味人を惹き付けていたのかもしれませんが*1
いずれにしても、どうやら私だけが「彼が何をどう感じているか分からない」と思っている訳ではないぞということが分かりました。

と言う訳で

彼との付き合いもなんだかんだ長くなったある時、一対一で長々と話す機会があったので*2、その時ゆっくりと話を聞いてみる事にしました。
やっぱり「どうして〜したの?」系の質問は「上手く説明出来ない」になってしまうので、こちらで考えて彼に変わって理由を呈示してみました。

「例えば〜〜〜という風に考えたから?」

「それでもなければ×××とかいう経験を積んでたとか」

「じゃあ△△ってことは?」

という具合です。そうすると・・・ある時、

「あ、それだ。その理由で完璧」

という返事が返ってきました。
その時初めて私は「コイツ、ただ単に猛烈に口べたなんだなあ・・・」と思い至りました。
実際その「私が彼の行動の理由を考えて、彼が当たり外れを答える」方式は彼にとっても心地よいものだったらしく*3、それ以来親密さも増しまして、結局もう10年を超える付き合いとなっています。

この友人の事を思い出す時

私は自分の考えている事を言葉にする能力がそこそこ(まあ自分が納得出来る程度には)あって良かったなあとか思います。
彼はその「口べた」のお陰で「人の話を聞くのは得意」ですが「自分の事を話すのが苦手」だったんですね。だから自分の悩み事とかを相談する事が上手く出来なかったようで、聞き出してみたら出るわ出るわ・・・私の当時の悩みなんかより遥かにシリアスな出来事とかに直面してました。まあその悩みを聞く担当が私になったのはなんか、不思議な巡り合わせでしたが。
まあ彼はその「口べた」のお陰でそれなりの得もしていた様ですが、それとは別に、脳内に巻き起こった気持ちを上手く説明出来ないというのはもどかしいだろうなあ・・・と時々思います。
そんな「口べた」な人達というのは・・・いつも痒い所に手が届かないような気持ちを抱いているのではないでしょうか。

ここから明らかな余談

ここまで書いて気がついた。
コイツ、遠目から行動だけ見てると「男版の長門有希」だ。だからモテるのか・・・!

*1:この友人は女にモテます!

*2:つまり酒を飲んだ。

*3:彼自身上手く説明出来ない事をもどかしく思っていた様です。