たま◇なま(2) 〜あなたは、死にますか?〜

たま◇なま ~あなたは、死にますか?~ (HJ文庫 (ふ03-01-02))
たま◇なま ~あなたは、死にますか?~ (HJ文庫 (ふ03-01-02))冬樹忍  魚

ホビージャパン 2007-09-29
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やっぱりタイトルの意味分かりませんが、話は面白かったな。・・・最近面白い本しか読んでいない様な気がする。おかしい。

ストーリー

氷見透(ひみとおる)は奇怪な生命体に魅入られていた。名を由宇(ゆう)という。
由宇は少女の姿こそしているが額には宝石が埋め込まれた姿をしており、実際には人間ではなかった。彼女の正体は鉱物生命体だ。人間より遥かに長い時間を生きてきた彼女は訳あって今は人間の姿で生きている。そして透は由宇に「支配されていた」。いつか自分の子を増やすための「つがい」として。
一緒に暮らし出した最初の頃こそ全く非人間的だった由宇だったが、人間として暮らす時間が長くなるにつて、人間としての心の動きを持ち始める。以前はただの「つがい」だったはずの透を、それ以外のものと見始めたようだ・・・。そんな中、由宇と同じ様な鉱物生命体が目的を持って透の前に姿をあらわす。名前は栗林浅黄。彼女が透に接触を図るのと同時に、由宇にも異変が起こっていた。どうも由宇の様子がおかしいのだ・・・。
誰も逃れる事の出来ない「死」を見据えたちょっと変わったライトノベルシリーズの2巻です。

主人公の透は

1巻の時と同じようにとても辛い過去を背負っていますが、それを克服しつつありますね。
しかし、やっぱりまだ引きずっている所は引きずっています。そういう意味では「克服」という言葉で簡単に括れるような変化ではないのですが・・・その辺りは丁寧に書き込まれていてかなり好感触でした。幾ら一つの出来事が終ったからといっても、そんな簡単には人間は変われない。いちばん暗くて寒い時間は通り過ぎたけど、まだ西の空をみると暗闇が見える、そんな感じでしょうか。
透は夢の中で、時として空想の中で自分の孤独や失ったものの大きさを思い出します。それは消えない過去。でも目覚めたら薄れて行ってしまう夢。夢で涙を流しても、現実ではもう涙は流れず、前を向いていられる。そんな変化。
絵で言えば「目の下の隈がやっと取れた」という感じ? うん、そんな感じ。

そして由宇

1巻の時と比べると急速に成長しているという感じですね。
夏なのにコタツに突然入りたいと言い出し、

「今一度、稼働の機会を」
「秘密ロボの発進許可みたいに言うな」

なんて間の抜けた会話を透との間に繰り広げるようになります。

「つまり、私が言いたいのはだ、『私』は、ヒトの身体を手に入れる事によって『不完全』な存在となり、それ故に『完全への道』が開かれ、それが即ち人間のっやぁっ」

「つまり、私が言いたいのはだな、ここにこうしている私は、恐らく人間として幸せふでっ、おい、お前、さてはさっきからわざとっ、
ちょ……痛い! おい、今、何を…… いや! 抓るの嫌っ! やめ……」

・・・。コタツ中に透が脇腹をつっついたようです。
まあこんな塩梅でして。急速に少女らしさを増しているというか、その結果として別の意味でも危険な感じが増しているというか・・・。

しかし

一つの出来事をきっかけに由宇はある問いを繰り返すようになります。いえ、ある『疑問』を胸に抱え持ち始めたというか、不安、畏れ、そう言ったものに取り憑かれるようになります。それは「死」そのもの。

「私が死んだら、お前は……どうする?」
「お前が死んだら、私は、どうしたらいい……?」
「私は……こんなに、苦しいのに……」
「お前は、苦しくない…………お前は、私の苦しさが分からない…………
お前は、私が苦しくても、何とも思わないんだ…………」

こう、なんと言いますか、三点リーダーの長さが由宇の抱えた悩みの大きさをそのまま現しているようです。
で、結果的に由宇は「ある仰天行動」を取るようになるのですが・・・それは本編でご確認を。

総合

星4つ。うん、楽しいね。
もの凄く過激な出来事が起こる訳ではないのだけど、それでも上手く纏まっているなあというストーリー。
キャラクターの心情描写も個人的な好みに入っているし、読むといかにも「幼女と禁断のナントカ」って感じの勘違い系トークが中々だし*1、ロリーな人のハートをキャッチ出来る可能性がアップしましたね。
ついでに言えば主人公が「ヒーロー」としての資格を失っていない所がまた良い。もちろん周りの手助けはあるけど、それでも逃げない主人公に好感をもちましたね。
イラストは魚氏によるものですが・・・うーん、好みじゃない・・・んだけど本の内容を考えれば、この位のイラストの方がシリアスになりきらないで、いいのかなあ・・・。

*1:中出し、ではない。注意。