BLACK BLOOD BROTHERS(8)

BLACK BLOOD BROTHERS 8 (8) (富士見ファンタジア文庫 96-13)
BLACK BLOOD BROTHERS 8 (8) (富士見ファンタジア文庫 96-13)あざの 耕平

富士見書房 2007-10
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ストーリー

葛城ミミコは機上で一時のまどろみにいた。
特区で一時的な撤退を余儀なくされたオーダー・コフィン・カンパニーはシンガポールに拠点を移す事となったのだ。しかし、彼女が眠りについている最中も、世界は「吸血鬼の再登場」という激流に飲み込まれ、そして同時に「ある映像に映っていた少女」にも世界が多大なる関心を示してたいのだ。
——『特区インパクト』
今回の九龍の血統による特区の陥落を世界はそのように呼んだ。九龍の時と同じように、しかし決定的に違う変化を持たせて。
九龍の時は『九龍ショック』、特区の時は『特区インパクト』。そう、映像の少女、葛城ミミコの存在が世界の反応を全く違う物にしていたのだ——!
そして今だ囚われのコタロウ、そして強大な血の力に苦しむジロー、それぞれの戦いの序章が描かれる最新刊です。

ああ!

なんという希望、なんという絶望、まさしく大決戦・・・いや大血戦の様相を呈し始めた最新刊です。
ミミコは・・・シンガポールに飛んだ訳ですが、自分が知らないうちに超が付く重要人物になってしまった事に戸惑います。もちろん周りのサポートもあるのですが、彼女が自分を取り戻すのは少し時間がかかります。
しかも自分の無力さにへこむ彼女に「ひょっとしたら自分でも役に立てるかも・・・」と思わせる「すごーく複雑だけど悪くない提案」があったりします。彼女はその提案に苦しむのですが・・・。救いの手は意外な所から現れたりします。

「好きな人とひとつになるなんて、それは……あ、愛の究極の形というか……理想像じゃありませんか? あたしはそういうのには疎いと自覚してますけど、でもやっぱり、そう思います」
「若い人はそう思うでしょうね。確かに、好きな人と一緒になりたいというのは、恋愛の基本的な心理ではあるのです。でも、決定的な違いは、人と人はひとつにはなれないということよ。なれないからこそ、なろうとするの。それが人の恋愛。辿り着けないゴールを目指して、走り続けることが」

人の命って・・・なんて無駄な抵抗! なんて無駄な反逆! なんて無駄な反体制! でもそれが素晴らしい。ここには間違いなくロックの源流の精神がありますね。
そしてまた、こういう展開を見るとき、ああ、人って一人で生きていないなあ・・・としみじみ思います。結果としてそれはままならない現実を生み出す事もありますが、それがまた同時に信じられないような祝福と奇跡をもたらす事もあります。
それは「捨てたもんじゃない」「戦う価値がある」と思わせる「何か」ですね

そして

ジローはまさに血だるまという感じでしょうか。コタロウはお気楽ですが・・・。
語れば語るほどネタバレになりますので書きたいような・・・書きたくないような、変な気分ですが、ジローを最後の最後で支えるもの・・・それが一体なんなのか、とくとご覧あれ! という感じでしょうか。
コタロウだってお気楽とは書きましたが、ただのお気楽極楽ではありません。流石は賢者イヴ、でしょうか。必要な時に必要な事をちゃんとやってくれます。
彼らは彼らで頑張った分だけのご褒美がちゃんとありますのでご安心を。

さらに

前作で生死不明になっている人がいたりしますが、その人達が一体どうなったのかがちゃんと書かれます。
・・・「ある人物」のその後なんて・・・もうなんというか・・・作者のあざの耕平にはもう・・・なんと言えばいいのかさっぱり分かりませんが・・・もう凄いとしか言いようがありませんね・・・。

「ああ、そうくるのかああああ!!! そんなのってありなのかあ!!!」

という感じです。いや読書中、本当に口から出ちゃってたりして・・・。

総合

星5つ以外に何をどうしろと?
この話は最初の1ページから始まって、最後の1ページまで、一瞬たりとも目を離せる瞬間が無いと言っても良いでしょう。
人と、吸血鬼、そして「結ぶ者」。登場人物一人一人の力が少しづつより合わさって大きな流れになって行くのが目に見えるような一作となっています。

「いつかそれは、母なる海へ。」

・・・もちろん、まだ小さな流れです。でも間違いなく流れ始めました。
しかし海へは至れるという保証はありません。でももう戻るつもりはない。
母なる海を求めて彼らは確かに流れ出した。そしてそれに助力するように集まってくる沢山の雫、雫、雫。その様はまさに素晴らしいの一言と言って良いと思います。
ところで全然関係ないですが、私、この話が完結するまで絶対に死なないように注意しようと決めました
草河遊也氏のイラストは今回も見事な安定感で魅せてくれます。本編に登場してくるサユカと「アレ」が一緒に描かれた一枚は必見ですね。

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