ギャルゴ!!!!!ー地方都市伝説大全ー

ギャルゴ!!!!!―地方都市伝説大全 (MF文庫J)

ギャルゴ!!!!!―地方都市伝説大全 (MF文庫J)

ストーリー

田中春男(たなかはるお)は一見何の変哲も無い中学二年生である。しかし、彼は「ギャルゴ」というあだ名で呼ばれる「ある筋では有名な少年」なのだった。彼を可愛がってくれた祖母(故人)は有能な占い師だったのだが、彼の事をこう占っていた。

『春男ちゃんは多くの女性に愛される運命だと、占いがでています
人間以外の多くの女性に愛される運命です』

・・・人間以外!?
そう、それが彼のあだ名の理由でもある。人間以外——つまりギャルゲーをやっても自動的に登場キャラ(つまり人間以外)の好感度をあげてしまう特殊能力を持っているため「ギャルゲーゴッド」略してギャルゴ、な訳である。
ギャルゲ好きな少年達には尊敬され、同級生の少女たちには白い目で見られる青春だったのだが、彼の能力はギャルゲの登場キャラだけに収まらないのだった・・・!
そしてそれと平行して彼の住む町・真幌市で発生する謎の事件。まさに奇怪な事件。ある事をきっかけに春男は今は亡き祖母がその謎事件を解決するために奔走していた事を知るのですが・・・という感じののほほん空気なのにアクション風味の変な作品ですな。

お、おお!?

これは変な話ですね。でも面白いですね。
主人公はギャルゴと呼ばれるギャルゲーの天才ではありますが、別に周りが思っているほどギャルゲ好きではないという所が面白いし、妙に淡々としているとこがまたユーモアを生み出していて良いです。

いいかげん恋愛シミュレーションゲームの批評を承るのをやめようかと思う。ぼくは部活にも入らず、塾にも通わず、まして家で勉強もしないで、睡眠時間を削ってギャルゲーをプレイしている。こんなことしていていいのだろうかと、たまに夜も眠れないほど悩むことがある。

そうは言いつつも友達に頼まれればレビューを書くんだから、もう単に人が良いとしか言いようがないですな。この文面だけみると暗いイメージがありますが、実はそうでもなく、「あ〜、まいったな〜、うーん」位の感覚しか無いのが程よいです。

ところで

「人間以外」ですが、とんでもない人間以外がでてきます。その辺りが「地方都市伝説大全」たるゆえんです。
人間以外の女性をピックアップしてみましょう。

かま子(通称かまいたち:本名キャンディ:ドーベルマン:メス:3歳)

そっち系のグラビア写真集などが充実している本屋・タニザキの番犬かつ万引き防止犬なんですが、春男に種族を越えた愛を注ぐ犬です。
春男がグラビアを買うと嫉妬心から本をメチャクチャにしてしまいます。ちなみに頭も良く、春男もかま子の言っている事がなんとなく分かるらしい。忠犬ハチ公よろしく、学校にまで迎えに来てしまう健気な娘(?)。春男曰く、

かま子はぼくの家の前までくると、やっぱり悲しそうな顔をしてタニザキに帰っていく。
強引なキスは迫るが、決して男の家にはあがろうとしない、犬界の清純派。

なんだかな〜。

エリアス(身長20cm:八頭身:数語の単語を喋る機能のついたえっちいフィギュア:B12cm、W7cm、H10.8cm)

都市伝説で済ませてしまっていいのかどうか分からないけれども、突如意思と人格を持って動き出したフィギュア。
外見と関係があるのかどうかは不明なものの、とにかく積極的かつエロティックな行動を取る。春男がとにかく好きらしい。

エリアスは身を捩り、自分の手で豊満な乳房を持ちあげた。グラビアアイドルみたいなポージング。
「ケータイで撮ってもいいわよ」
誰が撮るか。

フィギュアの写真を撮るのが好きな人とかだったら鼻血で死んでしまうような状況ではなかろうかと思ったり思わなかったり。
ちなみに春男を誘惑するため「女豹のポーズ」などのエロティックなポーズの研究に余念がなく、勝負下着などもそろえているらしい。ついでに言えば主食は電池からの電気供給。アルカリ電池だと電力の供給過多で太るので、マンガン電池じゃないとマズいらしい。どんな人形だ。

小鳥遊ゆかり(通称コトリさん:天然)

本編のヒロインと言えるほのぼのキャラクター。美少女ではあるがどこか完全に抜けている。
今回は最初のエピソードである事件の被害者になってしまうのだけど、その結果として春男との距離が急接近してしまったりする。偏見を持たないいい娘ですな。

「ううん、私なんかじゃ主役は無理だよっ。でもでもね、セリフは結構多い役なんだよ。えへへっ、重要な脇役かな」
タスキのかかった胸のあたりをポンと叩いて、コトリさんは照れたような表情を見せた。でもでもねはコトリさんの口癖だ。女子と話しているのを何回か聞いたことがある。可愛い口癖。これを聞くたびにマイナスイオンが発生している気がする。

「とてもうれしいよ。でもでもね。そんなに春男くんが私の側にいてくれるのなら、その時は私と結婚しませんか?」

・・・どんな爆弾発言ですか。意味が分かっていっているのかどうかが既に怪しいというか・・・。
ルックス的にはロリ好きな人の好みに微妙にかすっているんじゃないかな〜とか思いますよ。

とにかく

こうした面々を中心に、外枠を都市伝説と言えそうな変な事件で固めて、それを春男達が解決して回るという基本スタイルです。アクションシーンとかも結構ある割には妙に緊張感の無い作風かつ、抜けているキャラクター群が味わい深い作品ですね。
春男くんはなんとな〜くという感じで意外に大活躍ですが、それを誇る訳でもなく、卑下する訳でもなく、強気にも弱気にもならず黙々と自分の役目を果たしていきます。うーん、家族にちゃんと(主に祖母ですが)愛されて育った少年という感じでしょうか。根性も想像以上に太いです。

総合

応援の意味も込めて星5つにしちゃおう!
十分楽しめてしまったし、あれやこれやと手を変え品を変え楽しませてくれる感じが良かったな。
作品内には都市伝説との戦いだけではなく、コメディあり、ラブあり、そして少年同士の真面目な友情物語などもありと意外に重厚な作りのような気がします。それぞれキャラクターもちゃんと立っていて、そこも良いですね。でもキャラクターで一番魅力があるのは主人公の春男かなあ・・・意外にもね。でもそれが楽しいのかも。
イラストは河原恵氏ですね。口絵カラー、本編内イラストともに良いと思います。やっぱり女の子(フィギュアのエリアス含む)の絵が多いですが、それぞれ構図なんかも凝っているし、動きもあったりして好きですな。