アキカン! 3缶めっ

アキカン! 3缶めっ (3) (集英社スーパーダッシュ文庫 ら 1-4)
アキカン! 3缶めっ (3) (集英社スーパーダッシュ文庫 ら 1-4)藍上 陸

集英社 2007-10
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おすすめ平均 star
star4カンのための繋ぎと考えたら?
star一読者として求めたものとのギャップに苦しんだ。

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いきなりシリアス指数が上がっている3巻です。

ストーリー

この世界にはスチール缶とアルミ缶のどちらかを選ぶ謎の戦いがあるらしく、それは「アキカン・エレクト」と呼ばれている。
そしてその戦いに駆り出されるのはスチール缶のオーナー・大地カケル。そして彼と行動をともにすることになるメロンソーダのアキカンが少女化(ガーリッシュ)したメロンである。
カケルの幼馴染みの天空寺なじみもアキカンのオーナーであり、アルミ缶のエールも一緒に行動している。
しかし、平和は長く続かず、この3巻ではシリアス指数がうなぎ上りです。カケルとメロンは新たな刺客にその存在を狙われて・・・というお話。

いきなり来たなァ

単純にお笑い路線に突っ走っていた2巻といきなり空気が変わり、主人公の大地カケルの甘くない過去が最初からピックアップされる事になります。この辺りの下りはちっとも笑えませんし、作品の中に全く笑えない部分が存在するだけでこうも空気が重くなるのか! とちょっとビックリしてしまいました。

”大地。ナンデコンナトコニ、イルンダヨ”


あの、無機質な、血の通わないアクリルの瞳で。


————もうオレの自我は原型を保ってはいられなかった。まるで踏みつけられた眼球のようにぐちゃぐちゃに潰れ、ゼラチン状の汚らしいものを辺りに飛び散らせるばかりだった。機能を失った自我が見るものはただ一つ、絶望という名の闇のみだった。

本文のこの辺りから始まるカケルの暗部ですが、それが丁寧に語られた結果・・・大地カケルはおバカな学生の仮面を被っている傷負い人と疑えるようになり、幼なじみでカケルに想いをよせている(であろう)天空寺なじみはなにか空恐ろしい秘密を抱え持っている得体の知れない少女と疑えるようになります。

笑えるか?

まあ、相変わらずのテンポで進む物語は笑えなくもないんですが、物語のスタート直後から匂い始めるシリアスさが物語の裏側を語る関係で、どーも2巻のようには笑える作品として乗り切れません。まあ笑えるやりとりはあちこちにありまして、その辺りは2巻通りなんですけどね・・・。

なじみは慈しむように目を細めると、やわらかい声を風に乗せた。
「カケルちゃん、だいじょうぶだよ」優しく、微笑む。
「もう、あんなことは起きないよ。だから」
安心して? となじみは首を可愛く傾げて言った。

暗部の描写がなければそのまま信用できる会話なんですけどねえ・・・なんか怖かったなあ・・・。

大きな展開としては

「アキカン・エレクト」に参加する危険な人物&アキカンが存在し、カケル達に襲いかかると同時に彼らの命が危険に晒されてしまう事と、「アキカン・エレクト」を主導する男屋秀彦木崎愛鈴が場合によっては人を暗殺することすら計算に入れている不気味な存在である事がはっきりしてきます。
そして襲いくる危険に対してのカケルとメロンの意識の食い違いがはっきりしてきまして、ラスト付近ではその違いが噴出する事になります。

総合

面白いけど星4つかな。
前の2巻でもの凄く評価していた部分はやっぱりおバカで笑ってしまうという部分だったので、素直に笑えない要素の多かったこの3巻は個人的に評価が下がる事となりました。
でも面白いのは確かかな。続きが気になるのも事実ですので星4つは十分付けちゃうなという心境です。純粋に4巻が気になりますけど、このまま行くと痛々しい展開になりそうな気がしますねえ・・・どうなんでしょ。作者の人には4巻ではスッカーンとした爽快感を求めたい所です。
うーん、3巻のシリアス路線が良くないとか言う訳ではないんですけど、今のままだと持ち味を殺し合ってしまうような・・・いえ、不気味なのかな? 一種のサイコホラー性すら感じますし・・・いや、割り切って読めば良いんでしょうけどね。
イラストは鈴平ひろ氏ですが、好きですね。特に本編内のバニー・南海の出ている一枚は「よく映像化した!」と手放しで褒めてあげたい感じですね。・・・まあその、一種の精神的ブラクラでもありますけど。