マイフェアSISTER―シワス、ゴハンの時間じゃぞ?

ストーリー

江戸川師走はかつては天才子役として名を馳せた少年だったが、今は業界から離れて一介の高校生として暮らしている。そこに異世界の争い事から疎開してきたお姫様・アネモネと知り合い、アネモネの世話役兼お兄さんのようなポジションを獲得するのだが・・・異世界の争いがこちらの世界まで伸びてきて、ちょっときな臭い感じが漂ってきます。
それとは別に、師走に突然激しいラブアタックをかけてくる少女・新宮鴇乃(しんぐうときの)が登場したり、兄を演劇の道に戻そうと「なんとなく暗躍する」妹・睦月がいたりと、何かと色々ある毎日。
そして状況を変える出来事は突然やって来て・・・という、シリーズ完結の作品です。

突然の

完結にちょっと驚いているんですが、幕引きとしては悪くなかったですね。
なんというか、想像以上に1巻で作った世界観が効いてきたのか、あるいは1巻の時にあった主人公・師走の葛藤を大きく削った・・・いや、師走が成長したのかも知れませんが、この2巻は全体の印象が良くなっていましたね。
という訳でなんとなく完結してしまう事が残念だったりします。・・・今更言うなって?

キャラクター

師走

個人的には1巻の師走は迷っている感じが前面に出ていすぎて好きになりきれなかったんですが、少し吹っ切れた師走はなかなか少年として魅力的ですね。アネモネを守ろうとする姿勢も好感がもてるし、空回りしつつも前進しようとする感じがあって、またいいです。

自分にしかできないこと。
あるんだろうか。そんなもの。

自問自答は相変わらずですが、それでも随分すっきりしてきています。

アネモネ

可愛らしさは1巻からさらに磨きがかかっている感じですね。
特に師走との間に信頼関係が出来ている感じが得に心地よくて、序盤の動物園に師走とアネモネが一緒に出かけるシーンはついほくほく顔になってしまいました。

「……のう、シワス」
「ん?」
「どうしたらシワスに伝えられるじゃろうな。アネモネがいま思うておること、シワスにも伝えられたら良いと思うのに。うまく言葉にできぬ……くやしいのう

素直で可愛いんですよね・・・。
まだまだ子供全開で手を繋ぎたがったりしますが、ハプニングで師走に生オシリを見られたりしちゃったりした際には殴ったりします。微妙なお年頃。

睦月

実は本編のスタートはこの妹のシーンから始まるんですけど、これが素晴らしい。実は自分の主演作を批評家に貶された睦月の反応が描かれるのですが・・・。

きしむ自意識。何度読んでも内容は同じだ。ちまたの批評家の意見など、いちいち腹をたてていては身がもたない。わかっている。だがダメだ。ガマンできない。
「がっでむ」
なにさまのつもりだ。
「あーいむべりーべりーあんぐりいい」
ぐわしとページを握って腹の底からひねり潰す。
「あんたこそなにさまのつもりなのよカモジジイ――――――――――――っ!」

作者の怒りの爆発のような感じがして心地よいです。素直でステキ。プライドが高くてステキ。星3つでごめんなさい。
ちなみにこの睦月、作品中でトンデモ発言とかする危険妹でもあります。

「兄貴の妹はあたしだけなんだからね。どこにいこうがなにしようが、独占していいのはあたしだけなんだからね。文句いったりたたいたり蹴ったりキスしたりしていいのはあたしだけなんだからね。そこんとこわかってんの?」

妹は通常、兄にキスしたりしません。

新宮鴇乃

今回の台風の目。
いきなり師走を見初めたかと思ったら、家に誘い込んで服を脱ぎだす超・積極派。色々と訳あり感が目立っている少女でありまして、一般的には「イタい」と言われてしまいそうな少女なんですが・・・色々と秘密持ちです。

「ダーリン、鴇乃のこと知りたいの?」

このセリフとともに服を脱ぎ始めるゴスロリ少女の誘惑に勝てる男は果たして現実にいるだろうか、いやいない。

とにかく異世界人と赤羽

なんでこーも東京ローカル(北区)な感じがバリバリなのか分かりませんが、謎のジャガイモ型異世界人のナンディ氏などが物語を彩ってくれます。
しかし愛嬌があるなあ・・・ナンディさん。カレー屋の親父のジャガイモ生物って、どんな超世界だ。つーかここのカレー喰いたいね。

結果

星4つ。キレイにまとめたなあという感じ。
師走やアネモネの成長物語としてもちゃんと機能しているし、異世界からやってくる敵との戦いや、新たなキャラクターを登場させての物語作りも良かったなあという感じがします。
この2巻読了後の感想としては、もう少し続け話を続けて欲しかったという感じなんですけど、でもこれはこれでアリなのかな〜とかも思いました。ちなみに物語のラストシーンは本編のメインストーリー終了後の4年後の描写ですね。・・・成長したアネモネの描写がちょっとドキドキです。
きゆづきさとこ氏のイラストは作風に合っていて良いですね。強いて言えばラストシーンの4年後のアネモネがちゃんとした絵になっていなかったのが唯一の不満かな。多分敢えてそうしたのかなとも思いますが・・・オマケページの後ろ姿は・・・4年後の姿なのかな?