桜ishー推定魔法少女(2)加速連鎖は恋心
桜ish(チェリッシュ)―推定魔法少女〈2〉加速連鎖は恋心 (角川スニーカー文庫)
- 作者: 一肇,三杜シノヴ,デジターボ
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2007/11/01
- メディア: 文庫
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ストーリー
佐倉恭一(さくらきょういち)はネガティブ指向の地味でアホ毛付きの中学生。地味/暗い/口べたと三拍子そろっている少年です。しかしその佐倉少年、何を間違ったか世界を巻き込む変な争いに巻き込まれます。
変な争い・・・と言われるのには理由がありまして、恋する者が発生させるという恋粉(スヴニール)という物質を奪いにくる「永中科儀社」という犯罪結社から恋粉——つまり「恋」そのもの——を守るため、何故か彼は魔法少女に変身して彼らと戦うはめになってしまったのだった。
しかも魔法少女に変身するのは彼だけではなく、同級生の少年の理知的美男子・吉住怜(よしずみれい)、口が悪く引きこもり気味の少年・森井透(もりいとおる)の三人がそれぞれ、チェリー、バイオレット、マリーゴールドと言う名前の美少女魔法使いとなって戦うはめになってしまったのだった・・・。
恥ずかしい事態に困惑する彼ら。しかし唯一の救いは変身中は人格/外見ともに変身してしまうという所だろうか。
とにかく、
「心に翼!瞳に勇気!愛は全ての悪を断つ!」
という感じで変身前・嫌々、変身後・ノリノリという変な魔法少女物語の2巻です。
キャラクターは
1巻もそうでしたが、それぞれ個性的で良い感じですね。
主人公(魔法少女に変身する3人)は実は全員地味なタイプなんですが、それぞれ個性派でしてそこは楽しく読めます。キャラクターの性格描写が中々よろしいというのがまずありますね。例えば・・・、
「お願いだから、もう放っておいてよ」(佐倉)
という地味少年ではありますが、意外に一心不乱、一意専心、恋する相手の水野ひなたの事となると全力で行動出来る所が良いですね。
さらに加えて
魔法少女変身後もモーレツ個性派ばかり・・・というか特にチェリーとマリーゴールドが派手な性格をしていますね。
「とりあえずあたしは、恋天使(ラブエル)。今日も今日とて愛の化身。華やかな衣装をまとい、魔道数式を駆使して、セカイを護るために戦うのだ!」(チェリー)
見ているだけでポジティブシンキング。
「おーっほっほっほ! 驚きなさい。ひれ伏しなさい。そして、あがめなさい! ようやくあたくしの真の力に目覚めたという訳ですわ。いままで散々あなた方の引き立て役みたいな役どころで、あたくしなりにストレスは溜まっているのですわっ」(マリーゴールド)
・・・うーん、タカピー。
などなどです。
今回は
魔法少女になっていないのに佐倉少年の性格そのままに身体だけチェリーになってしまう事態なども発生。
そういうのが好きな人のニーズにもばっちりお応えするシチュエーションが用意されています。チェリーは、ナイスすぎるバディですよ。しかも佐倉少年がこう、なんとも大人しい性格をしているせいか、似合いすぎるという・・・。
冷静沈着な吉住怜少年をして、
「……こいつは佐倉だ。身体が女になろうが佐倉だ。佐倉」
となるような似合いっぷりでありまして、森井透少年に至っては、
「ちょっとだけ……な?」
……は?
「ちょっとでいいから! すこしでいいから!」
何がちょっとだ、何が少しだ。
個人的に良かったセリフピックアップ
「本当の馬鹿は、実は自分こそが馬鹿だと気がつかないで、世の中を馬鹿にする。他人を馬鹿にする。すべてを馬鹿にする」
・・・自分が馬鹿だと思ってない人、要注意。
でも残念な事に、現実には何歳になっても多いんだよね、こういう人。若い人はこういうみっともない大人にだけはならないように注意しましょう。
しかし
この話の最大の欠点に感じるのが「物語内で発生している状況の説明が弱い」所じゃないかなと。
オリジナルの用語が出てくるのは良いのですが、それも含めて「脳内映像化に必要な描写」が結構欠落していると感じ。なんというんですか、「まず絵ありき」のアニメ作品かなにかをノベライズしたかのような違和感というか、描写不足をしばしば感じます。
メディアミックスの予定でも既にたっているのかな? いやそれとも既にメディアミックスされているのかなとか、そんな感じ。
普通の学校生活を書いている場面ではそれは余り感じませんが(まあ普通にあるもの中心ですしね)、魔法少女バトルのシーンになると途端にイメージがしにくくなります。これは続編で何とかして欲しいなあと感じました。
総合
星3つ。
キャラクター描写やその他の作りは楽しいんだけど、バトルシーンで想像力が炸裂しにくかったなあ・・・それで星が一つ減っています。
まあその辺りは私の想像力が欠如していると言われればそれまでなんで、なんと言いますか、えー、各自読んで判断して頂きたい所ですね。
しかし主人公の佐倉少年の恋はどうなってしまうのかなあ? なんだかライトノベルで「SAKURA」という響きの名前を持つキャラはなかなか恋が成就しないという呪いでもかかっているんではないかい? とか思ったりして・・・。まあ某草壁桜少年は良いとして、某お稲荷さまの佐倉とか、ラノベじゃないけど某黒桜とか・・・。
三杜シノヴ氏のイラストは華やかでとてもいいです。カラーイラストも良いですが、本編内部の見開きイラストも良かったですね。